韓国検疫法に関する件

検疫法改正案が2月26日に韓国国会本会議を通過しました。
こちらのプレスリリース(韓国語)によると入国禁止の法的根拠が明確になったとのこと。

改正後の条文はこれ(ちなみに2021年3月施行の改正も別途されている由)。

제24조(출입국의 금지 또는 정지 요청) 보건복지부장관은 공중보건상 큰 위해를 끼칠 염려가 있다고 인정되는 다음 각 호에 해당하는 사람에 대하여는 법무부장관에게 출국 또는 입국의 금지 또는 정지를 요청할 수 있다. 다만, 입국의 금지 또는 정지의 요청은 외국인의 경우에만 해당한다. <개정 2010. 1. 18., 2016. 2. 3., 2020. 3. 4.>
1. 검역감염병 환자등
2. 검역감염병 접촉자
3. 검역감염병 위험요인에 노출된 사람
4. 검역관리지역등에서 입국하거나 이 지역을 경유하여 입국하는 사람

第24条(出入国の禁止または停止要求)保健福祉部長官は、公衆衛生上の大きな危害を及ぼすおそれがあると認められる次の各号に該当する者に対しては、法務部長官に出国または入国の禁止または停止を要請することができる。ただし、入国の禁止または停止の要求は、外国人の場合にのみ該当する。 <改正2010. 1. 18.、2016年2月3日、2020. 3. 4.>

1.検疫感染症の患者等
2.検疫感染症接触
3.検疫感染症の危険因子にさらされた人
4.検疫管理地域などで入国したり、この地域を経由して入国する人

http://www.law.go.kr/%EB%B2%95%EB%A0%B9/%EA%B2%80%EC%97%AD%EB%B2%95

改正前の条文がこれ。

제24조(출입국의 금지 또는 정지 요청) 보건복지부장관은 공중위생상 큰 위해를 끼칠 염려가 있다고 인정되는 검역감염병 환자등 또는 검역감염병 의심자에 대하여는 법무부장관에게 출국 또는 입국의 금지 또는 정지를 요청할 수 있다. 다만, 입국의 금지 또는 정지의 요청은 외국인의 경우에만 해당한다. <개정 2010. 1. 18., 2016. 2. 3.>

第24条(出入国の禁止または停止要求) 保健福祉部長官は、公衆衛生上の大きな危害を及ぼすおそれがあると認められる検疫感染症の患者等または検疫感染症の疑い者に対して法務部長官に出国または入国の禁止または停止を要求することができる。ただし、入国の禁止または停止の要求は、外国人の場合にのみ該当する。 <改正2010. 1. 18.、2016年2月3日>

保健福祉部長官が法務部長菅に対して入国禁止・停止の要請をできること自体は変わっていませんが、対象者が明確になり、患者と疑い者のみが対象者だったのが、疑い者を接触者・危険因子に曝露された者・流行地域から入国しようとする者と明確化している点が変わっています。

改正前から保健福祉部長官が法務部長菅に対して入国禁止・停止を要請できるようになっていましたので、入管法等にもこれに対応する条文があります。

출입국관리법

出入国管理法

(抜粋)

제11조(입국의 금지 등) ① 법무부장관은 다음 각 호의 어느 하나에 해당하는 외국인에 대하여는 입국을 금지할 수 있다. <개정 2015. 1. 6.>

第11条(入国の禁止など) ①法務部長官は、次の各号のいずれかに該当する外国人に対しては入国を禁止することができる。 <改正2015 1. 6>

1. 감염병환자, 마약류중독자, 그 밖에 공중위생상 위해를 끼칠 염려가 있다고 인정되는 사람

1.感染症の患者は、麻薬中毒者、他の公衆衛生上の危害を及ぼすおそれがあると認められる者

3. 대한민국의 이익이나 공공의 안전을 해치는 행동을 할 염려가 있다고 인정할 만한 상당한 이유가 있는 사람

3.大韓民国の利益や公共の安全を害する行動をするおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある人

8. 제1호부터 제7호까지의 규정에 준하는 사람으로서 법무부장관이 그 입국이 적당하지 아니하다고 인정하는 사람

8.第1号から第7号までの規定に準ずる者として法務部長官がその入国が適当でないと認める者

② 법무부장관은 입국하려는 외국인의 본국(本國)이 제1항 각 호 외의 사유로 국민의 입국을 거부할 때에는 그와 동일한 사유로 그 외국인의 입국을 거부할 수 있다.

②法務部長官は、入国しようとする外国人の本国(本國)が第1項各号以外の事由により、国民の入国を拒否するときは、その同じ理由で、その外国人の入国を拒否することができる。

http://www.law.go.kr/%EB%B2%95%EB%A0%B9/%EC%B6%9C%EC%9E%85%EA%B5%AD%EA%B4%80%EB%A6%AC%EB%B2%95

この中の第11条第1項第1号が、検疫法第24条に対応するもので、今回の法改正は「公衆衛生上の危害を及ぼすおそれがあると認められる者」の要件を明確化したものと言えますね。


日本の検疫法には韓国検疫法24条に相当する部分がありません。日本の入国禁止措置は入管法第5条第1項第14号によるものですが、要件は曖昧です。

出入国管理及び難民認定法(抜粋)

第五条 次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。
一 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)に定める一類感染症、二類感染症新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症(同法第七条の規定に基づき、政令で定めるところにより、同法第十九条又は第二十条の規定を準用するものに限る。)の患者(同法第八条(同法第七条において準用する場合を含む。)の規定により一類感染症、二類感染症新型インフルエンザ等感染症又は指定感染症の患者とみなされる者を含む。)又は新感染症の所見がある者
十四 前各号に掲げる者を除くほか、法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=326CO0000000319

韓国入管法第11条第1項第1号(感染症の患者等の入国禁止)と似たような条文は日本入管法にもあり、それが第5条第1項第1号ですが、これは感染症の所見がある者の入国を禁止できるだけで、韓国のように「2.検疫感染症接触者」「3.検疫感染症の危険因子にさらされた人」「4.検疫管理地域などで入国したり、この地域を経由して入国する人」には適用できません。

ちなみに韓国が今回のCOVID-19に関連して入国禁止措置をとったのは2月4日で対象は中国湖北省発行のパスポート所持者と14日以内に湖北省を訪問した外国人*1となっています。日本も同じ入国禁止対象としていましたが、その措置は2月1日からです*2

その後、日本政府は入管法第5条第1項第14号の曖昧な要件のまま入国禁止対象を次々と拡大させ、4月3日からはアジア10カ国、大洋州2カ国、北米2カ国、中南米6カ国、欧州44カ国、中東4カ国、アフリカ5カ国の計73か国にまで膨らみましたが、韓国政府は韓国入管法第11条第1項第1号の要件での入国禁止対象を中国湖北省のみに限定し続けました。

韓国政府は4月1日になって海外からの入国者全てに14日間の隔離を義務付けましたが、入国禁止にはしていません*3