慰安婦推定数20万人は別におかしくありません

下院決議などに記載されている慰安婦問題に関する一般的な理解は歴史学的にまず妥当なものですが、嫌韓バカらは差別するために否定できそうなロジックを無理やり組み立てる知性に背を向けた人たちなので救いようがありません。
割と良く見られる20万人という慰安婦数は後述するように一般的な推定値であって別におかしくありません。

kujirax 韓国人は世界中で20万人だと主張しているのはニュージャージーやニューヨークの決議案を見ても明らか。これが6万人なら日本でも味方が増えそう。いい加減な数字は全体の信ぴょう性を減らしてしまう。2013/04/11

unaken 問題は、この妄言をロビー活動を通してアメリカや欧州に拡げようとしている点。アウシュビッツと同じ残虐行為と吹聴してるからタチが悪い。このネタで日本製品の排除と韓国製品の導入を促しているという噂も聞く。2013/04/11

yohata 米国陸軍の調査報告なんてあったんだな。一応ブクマ。そしてハテサさんが一切口をつぐんでいるってことは、あいつら事実自体はどうでもいいてコトなんでしょうか?2013/04/11

tanaka_yuuma 売春婦をダシにして日本から金を吸い取ろうとしたダニ国家。戦争で自滅してほしい。2013/04/11

http://b.hatena.ne.jp/entry/alfalfalfa.com/archives/6444491.html

kujirax氏の歓心を買うために推定値を下方修正する必要などありませんし、unaken氏の聞いた出所不明の怪しい噂話など聞く価値もありませんし、90年代から明らかになっている米軍資料すら知らないyohata氏の誹謗中傷を相手にする必要もありませんし、ヘイトを撒き散らすダニのようなtanaka_yuuma氏をいちいち駆除してもきりがありませんし、まあ、こういう否定するために否定しているような人たちはどうしようもありません。

一般的な推定値

私も何度か言及し、多少なりともまじめに調べようと思えば容易に知ることができる内容ですが、慰安婦数の推定の方法と値を再掲しておきます。

 一体どれほどの女性たちが日本軍の慰安所に集められたのか、朝鮮人慰安婦の比率はどの程度であったのか、どれほどの人々が戦場から帰らなかったのかというような点については、今日でも確実な答をえるような調査ができていません。

 まず慰安婦の総数を知りうるような総括的な資料は存在していません。総数についてのさまざまな意見はすべて研究者の推算です。

 推算の仕方は、日本軍の兵員総数をとり、慰安婦一人あたり兵員数のパラメーターで、これを除して、慰安婦数を推計するやり方があります。この場合に交代率、帰還による入れ替りの度合いが考慮に入れられます。

  • 研究者たちの推算
研究者名 発表年 兵総数 パラメーター 交代率 慰安婦
秦郁彦  1993  300万人 兵50人に1人  1.5   9万人 
吉見義明 1995  300万人 兵100人に1人 1.5   4万5000人
(同)  -    -    兵30人に1人  2    20万人  
蘇智良  1999  300万人 兵30人に1人  3.5   36万人  
(同)  -    -    -       4    41万人  
秦郁彦   1999  250万人 兵150人に1人 1.5   2万人  
http://www.awf.or.jp/1/facts-07.html
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20120521/1337621423

これはマクロ的な視点での推定値ですから精密なものではありませんが、正確ではあると言えます。

マクロ的な推定で別の方法としては馬場正博氏の方法があり、それを用いると以下のようになります*1

[1]アジア太平洋戦争に参加した日本兵年数(人年)
 開戦時50万人、終戦時500万人として時間比例で増加したとすると、
 (50+500)×8年÷2=2000万(人年)

[2]兵士の慰安所利用回数(回/年)
 兵士の月給を20円、給与の3分の1を慰安所利用に使用、慰安所利用料1.5円/回、とすると、
 12月×20円×(1/3)÷1.5=53回/年

[3]アジア太平洋戦争期間中の日本兵慰安所利用総回数
 [1]×[2]=2000万×53=10.6億(回)

[4]慰安婦1人当たりの接客回数(回/年)
 慰安婦の1日接客数を10人、稼動日を300日/年、慰安婦の就労年を2年とすると、
 10×300×2=6000回/人

[5]アジア太平洋戦争期間中の日本兵相手に接客した慰安婦
 [3]÷[4]=10.6億÷6000=17万6000人

この場合の慰安婦数推定値は17.6万人で他の研究者の推定値とも近い値となります。
参考:推定方法としては問題ないが・・・ - 誰かの妄想・はてな版前回の補足・推定方法の使い方 - 誰かの妄想・はてな版

日本政府にその気があれば・・・

少なくとも1937年から1945年までの日本内地及び植民地朝鮮・台湾から移送された慰安婦の延人数を外務省の渡航記録から調べることができたのですが、これらの記録は台湾から華南方面への渡航記録など一部しか公開されていません。記録があって未公開なのか、記録が存在するが埋もれて見つからないのか、記録そのものが破棄されてしまったのか、それすらもわかりません。
この記録が完全な形で残っていれば慰安婦の人数はかなり正確にわかるはずですが、今もなお、役所の深い闇に隠されたままです。

中国や南方占領地において前線部隊が開設した慰安所などで現地女性に売春を強いた場合は渡航記録などの外務省関連文書に残りません。その場合でも、楼主が慰安所を管理監督していた副官部や主計部などに報告した内容や軍医による性病検査の記録などは軍内部に公文書として存在したはずですが、これも完全には残されていません。

もっとも、それらが完全な形で残って公開されたとしても従軍慰安婦の犠牲者数が完全にわかるわけではありません。

統計に残らない犠牲者

華北占領地で見られたような高度分散配置下で部隊が勝手に現地女性を拉致監禁強姦したケースなどは、公文書に明確に残ることはあり得ません。少数部隊で憲兵もいないような占領地では警備地域内の村落から女性を武力で無理やり、あるいは村長らを脅迫して部隊用の慰安婦にした事例、部隊長などの幹部専用の妾にされた事例などは統計上の数字として残りえません。
また、看護婦として派遣された女性が事実上の慰安婦となることを強要された場合なども正規の慰安所ではないため公式記録には残りません。

さらには移動中の部隊が途中の村落で強姦を行った際の犠牲者や、短期間の駐留中に繰り返し強姦された犠牲者などは、被害者証言から推定するしかありません。
強姦の被害者は慰安婦とは別に見るべきという考えもあるでしょうが、それらの区別はそう容易ではありませんし、現実問題としてそのような区別にあまり意味はないでしょう。
従軍慰安婦問題を否認しているような人たちで、日本兵による強姦の犠牲者に対して親身になっているような人を少なくとも私は一度も見たことがありません。


*1:ただし、馬場氏は元となる数値のうち、慰安所利用回数を年4回と著しく過小評価しているため、方法は変えずに慰安所利用回数を訂正して計算しました。