離婚後共同親権が容認されている韓国でも多くの場合、離婚後単独親権を選択している。

前回、韓国では民法上、離婚後共同親権が容認されていると書きましたが、どの程度の離婚で共同親権が選択されているかがわからなかったので、もう少し調べてみました。
韓国統計庁で色々調べましたが、離婚後共同親権の具体的な件数については見つけられず、代わりに以下の記事を見つけました。韓国の弁護士によるコラムです。

친권과 양육권 지정 형태의 다양성 모색 (1)-공동친권, 공동양육권-[박 변호사에게 듣는 가사소송(7)]

(略)
법원은 대부분의 사건에서 부모 중 일방을 단독 친권자 및 양육자로 지정하고 있다. 그런데 많은 경우에서는 아니지만 법원은 친권과 양육권을 공동으로 지정하기도 하였고, 최근에 아이를 방치하거나 학대하는 경우가 늘어나면서 공동 친권이나 양육권에 대한 사회적 관심이 높아지고 있는 추세다(다음 편에서는 공동 친권과 양육권에 관한 판례에 대해 알아 보고자 한다).

機械翻訳
裁判所は、ほとんどのケースでは、親の一方を単独親権者と養育者として指定している。ところが、多くの場合では、ありませんが、裁判所は親権と養育権を共同で指定することもしたし、最近の子供を放置したり虐待する場合が増え、共同親権や養育権に対する社会的関心が高まっている傾向にある(次の方では、共同親権と養育権にに関する判例について調べてみようする)。

http://thinklaw.co.kr/ab-lawyer_column_v-12

これによると、2016年時点でも裁判所が離婚後共同親権を指定している事例はあまりないとのことです(最近の傾向として共同親権に関する社会的関心が高まっているともありますが)。
欧米のように、離婚後も別居親と子が気軽に交流するケースは韓国では珍しいとも冒頭で述べています。韓国では裁判所が養育費の支払いと面会交流の実施をよく守るように職権で色々働きかけているが、親の中には子どもを自分の所有物であるかのように支配し、親権や養育権を相手親から子どもを遮断する権利であるかのように認識している者もいる、と指摘しています。

그런데 부모들 중 의외로 상당수가 아이를 마치 자신의 소유물인양 인식하고 아이를 지배하려고 하며, 상대방 배우자로부터 친권이나 양육권을 아이를 차단시킬 수 있는 ‘권리’를 갖는 것으로 인식하기도 한다. 그래서 면접교섭도 자신이 시혜를 베풀어 상대방 배우자에게 허락해 주는 것으로 인식하기도 한다.

http://thinklaw.co.kr/ab-lawyer_column_v-12

この辺は日本と全く同じですね。違うのは韓国では同居親が子どもを抱え込んで別居親を排除する行為を弁護士が堂々と批判するという点です。
また、単親世帯の父子・母子割合も日本とは大きく違っています。
韓国女性家族部が2012年と2015年に調査している「ひとり親家族の実態調査」では標本とされた2552世帯の家族形態の割合を示しています。

2015年調査(世帯数は韓国統計庁サイト*1から取得)

形態 世帯数 割合
母子 1208 47.3%
母子+その他 454 17.8%
父子 505 19.8%
父子+その他 386 15.1%
http://m.blog.daum.net/hellopolicy/6985430?categoryId=705974

母子(その他含む)世帯の割合が65.1%であるのに対し、父子(その他含む)世帯の割合は34.9%で、母子世帯の方が多いのは確かですが、その比率は2対1です。
これに対して日本の場合、平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告によると*2、母子世帯120万に対して父子世帯は20万に過ぎず、その比率は6対1となります。

面会交流の実施状況

韓国統計庁サイトに福祉関連の統計として「ひとり親家族の実態調査」が掲載されています。
そこには「子供と非養育親との交流程度」の統計表もあり、それによると2015年調査の結果は以下の通りです。

程度               全体 母子 母子+その他 父子 父子+その他
定期的に会っている         11.9% 14.3% 16.1% 13.3% 9.7%
特別なことがあるたびに会っている  27.1% 17.6% 19.6% 28.9% 28.2%
手紙、メール、電話だけしている   7.2% 8.2% 6.4% 8.5% 6.4%
両家の親族等を通じて状況を聞くのみ 4.9% 6.6% 3.6% 2.5% 6.8%
連絡していない           22.7% 20.1% 23.1% 24.0% 21.8%
所在不明で連絡できない       26.3% 33.1% 31.2% 22.8% 27.2%

月1回以上の面会交流の頻度が全体の50%を超えるオーストラリア*3に比べれば低いのですが、それでも「定期的に会っている」または「特別なことがあるたびに会っている」の頻度は約40%となっています。母子世帯と父子世帯を比べると、父子世帯の方が高い傾向にありますが、「定期的に会っている」頻度となると母子世帯の方が高くなっています。

日本の場合、面会交流の実施状況によると、「現在も面会交流を行っている」頻度は母子世帯で30%程度、父子世帯で45%程度で、全体では約30%程度*4となります。
日本での面会交流の実施率は韓国に比べて10ポイントほど低いと言えます。ただし、日本の場合「面会交流を行ったことがある」頻度も加えるなら、日本の方が高くなります。
日本の統計では「現在も面会交流を行っている」「面会交流を行ったことがある」といっても、その頻度は「月2回以上」「月1回以上2回未満」「2~3ヶ月に1回以上」「4~6ヶ月に1回以上」「長期休暇中」「別途協議」「その他」「不詳」と分類されています。
韓国統計上の「定期的に会っている」に該当しそうなのは「月2回以上」「月1回以上2回未満」「2~3ヶ月に1回以上」「4~6ヶ月に1回以上」くらいでしょうか。「特別なことがあるたびに会っている」に相当するのは「長期休暇中」「別途協議」でしょうが、「その他」「不詳」がよくわかりません。「その他」「不詳」の世帯も少なくはなく、「現在も面会交流を行っている」「面会交流を行ったことがある」母子世帯888世帯中218世帯、同父子世帯190世帯中40世帯といずれも20%以上です。日本の統計での「その他」が韓国での「手紙、メール、電話だけしている」に相当するのかもしれません。

韓国も離婚後単独親権となることが多いのになぜ面会交流実施頻度は日本よりも高いのか

離婚後も親子は交流するべきだという社会的な意識の高さもあるでしょうが、やはり民法上に面会交流が権利である旨が明記されているのは大きいでしょうね。

제837조의2(면접교섭권) ① 자(子)를 직접 양육하지 아니하는 부모의 일방과 자(子)는 상호 면접교섭할 수 있는 권리를 가진다.
②가정법원은 자의 복리를 위하여 필요한 때에는 당사자의 청구 또는 직권에 의하여 면접교섭을 제한하거나 배제할 수 있다.

第837条の2(面会) ①者(子)を直接養育しない親の一方と、子は相互面接交渉することができる権利を有する。
家庭裁判所は、子の福祉のために必要なときは、当事者の請求又は職権により面接交渉を制限したり、排除することができる。

http://www.law.go.kr/법령/민법/(11300,20120210)

また、それは法律上の条文だけではなく、運用においても面会交流妨害をした場合は養育権を失うことがあるようです。

이혼 시 양육권자로 지정되었다 하더라도 고의로 면접교섭권을 침해하거나 자녀 앞에서 전 배우자의 인격을 모독하는 행위를 했다면 상대방이 ‘양육권자 변경청구’를 하여 양육권자가 바뀔 수도 있기 때문에 주의해야 한다. 또 배우자가 양육권 행사를 부당하게 방해했다면 과태료 천만 원 이하나 감치 30일 이하를 명할 수 있다는 것을 기억해 두는 것도 좋다.

離婚の際養育権者に指定されても、意図的に面会を侵害したり、子供の前元配偶者の人格を冒涜する行為をした場合、相手が「養育権者変更請求」をして養育権者が変わる可能性があるので注意しなければならない。また、配偶者が親権行使を不当に妨害した場合、過料千万ウォン以下や囲む30日以下を命ずることができることを覚えておくのもいい。

https://www.mk.co.kr/news/culture/view/2015/06/533621/

日本でも面会交流妨害を理由に親権者変更された事例がありますが監護権までは変更されていないようですので、韓国に比べれば日本は監護親による非監護親との面会交流妨害に非常に寛容であるといえるでしょう。韓国の場合は過料や監置の可能性もあるとのことで日本に比べて非常に厳しくなっています。

韓国の場合、離婚後共同親権制度が直接に離婚後親子関係を保護しているというよりは、離婚しても親子関係は維持されるべきという社会的意識が離婚後共同親権を許容し、面会交流の権利性を明記させ、結果として離婚後の親子交流を保護していると言えるかも知れません。