「「SOSは発信されていない」という新事実」って・・・、その経緯は去年のうちに韓国で報道されてるのに、それすら知らんのね・・・。

こんなブログがありまして。

■「SOSは発信されていない」という新事実

自民党の会合での「国連安全保障理事会に諮るべき」の意見に、韓国国防省は困惑」2019年1月8日

人道的に北朝鮮漁船を救助していたと言う事ですが、仮にそれが真実だったなら、日本の海上保安庁がSOSをキャッチしていないのに、どのような方法で遭難に気がつき現場に急行したなどのストーリーも動画に入れ込むべきです。

http://www.globalnewsasia.com/article.php?id=5431&&country=1&&p=2

「火器管制レーダー照射事案に関する韓国国防部の映像公開について」

海上保安庁は、北朝鮮の漁船から救助の信号を受けていない。都合が悪い現場を押さえられて、レーダーを照射して海自機を追い払おうとしたのであれば、辻褄が合う。証拠となるレーダー波の情報を出せと韓国は言っているが、この際、韓国が嘘をついているという決定的な証拠を出せばよい」との意見も出されました。

https://blogos.com/article/349637/

レーダー照射関連のニュースをかなり見ていたつもりなんですが、海上保安庁からの情報は初めて見ました。みなさん知ってました? 私の調べた方が足りなかったんですかね?

なんと海保がですよ。「漁船から救助の信号を受けていない」と言ってるのです。なんてことないような話なんですが、この情報のせいで重大な疑惑が生じてしまうのです。

だって、国際周波数でSOSが発信されていないとすると、韓国側の警察艦と駆逐艦は、どうやって出動できたのでしょうか? そして北朝鮮船は、なぜ普通に救難信号を出さなかったのでしょうか?

日本政府は、韓国側がどうやって北朝鮮船の救難信号を受けたのか、説明を求めるべきだと思います。

http://d.hatena.ne.jp/tenten99/20190108/1546957219

tenten99氏が引用している記事では、一つは*1佐藤正久外務副大臣が国防部会・安全保障調査会合同会議に参加した議員の発言として「海上保安庁は、北朝鮮の漁船から救助の信号を受けていない。」と記載しています。もう一つ*2はグローバルニュースアジアが「韓国に詳しい専門家」の発言として「日本の海上保安庁がSOSをキャッチしていないのに、どのような方法で遭難に気がつき現場に急行したなどのストーリーも動画に入れ込むべきです」と記載しています。

で、韓国海洋警察や韓国海軍が救助した北朝鮮漁船の情報が伝えられた経緯ですが、例えば2018年12月29日の東亜日報で報じられています。

광개토대왕함 사건은 일본의 기획도발?

이정훈 기자 입력 2018-12-29 14:52수정 2018-12-29 14:59
(略)
북한 어선은 티가 난다. 색깔이 죄다 벗겨진 ‘고철 배’이기 때문이다. 겨울철 동해는 북서풍의 영향으로 황천(荒天)이 되는 경우가 많다. 2018년 12월 20일 대화퇴 어장에서 돌아가던 한국 어선이 북한 어선으로 보이는 배가 조난된 것을 발견하고, ‘누구나 들을 수 있는’ 주파수로 한국 해경을 불러 그 사실을 알렸다.
(略)

http://news.donga.com/East/MainNews/3/all/20181229/93486073/1

2018年12月20日大和堆漁場から帰る途上の韓国漁船が漂流中の北朝鮮漁船を発見し、韓国海洋警察に通報した、という経緯が書かれてます。「海上保安庁は、北朝鮮の漁船から救助の信号を受けていない。」なんて当たり前の話です。通報したのは韓国の漁船ですから。

この程度の経緯も知らないというのは、日本メディアがこういったことをほとんど報じていないからとも言えますが、一般人はともかく、外務副大臣たる佐藤氏や「韓国に詳しい専門家」氏が知らないのはどうなんですかね。




感知したのがSTIR-180の電波であることを日本側が明言しない限り、当事者政府以外の者は結局心象に頼る以外に判断の根拠が無いんだよね。

こういうことを言っている人がいました。

P-1へのレーダー照射問題。個人的見解とまとめ

Posted by HARUKAZE on 2019年1月6日
(略)
次に、本当にレーダー照射があったかどうか。

今回、韓国海軍が使用したと思われる広開土大王級駆逐艦のレーダーはシグナール、現タレス社のSTIR-180です。
STIRシリーズのレーダーは同社のWM-20シリーズ火器管制装置からの派生型ですが、日本では「しらね型護衛艦」でWM-20シリーズを採用した実績があります。
自国で同系統のレーダーを使っていたということは電波情報も持っているということで、レーダー警戒受信機にも当然反映されているのではないでしょうか。

このことから自衛隊側は受信したレーダー波が火器管制レーダーであったことに、十分な自信を持っていると考えられます。

http://harukaze.tokyo/2019/01/06/p1radar/

この理屈で言うと、STIR-180を照射したかどうかを一番良く知っているのが韓国海軍である以上、韓国駆逐艦がSTIR-180を照射していないことに十分な自信を持っているとも言えます。
結局のところ、これは心象の問題になってしまうわけです。

“韓国は嘘つきだ”といった百田尚樹的な先入観を持っていれば、日本側の主張が正しく、韓国側の主張が間違っているという心象を抱きやすいでしょう。

そういった先入観を廃して考えるという作業が本来必要なのですが、そういう論調は極めて少ないですね。

で、先入観を廃して考える場合、個人的に第一に考えるべきは“双方の主張が矛盾なく成立する余地はないか”という点だと思っています。

今回の場合、その余地がまだ残っています。

すなわち、(1)韓国駆逐艦は捜索目的でMW-08を作動させた、(2)日本哨戒機はそのMW-08の照射を感知した、というものです。
この場合、韓国側の主張である“MW-08は使用したがSTIRは使用していない”にも、日本側の主張である“火器管制レーダーの照射を受けた”にも矛盾しません。
なぜなら、MW-08も火器管制レーダーの一種だからです。

日本側は防衛大臣記者会見で記者から質問されているにもかかわらず、その点については回答しませんでした。

防衛大臣記者会見

日時平成30年12月25日(11:42~12:00)

Q:韓国側は射撃管制用のレーダーと、火器管制用のレーダーを使い分けて、いわゆるMW-08のレーダーとSTIRのレーダーを使い分けていると説明していると思うのですが、そのSTIRの方は使っていないという説明だと思うのですが、日本側が探知をして発表に至ったのは、STIRを感知したということでしょうか。

A:その中身を逐一、詳細に申し上げるわけにもいかないと思いますが、防衛省側はおっしゃったようなことも含めて、海自側は分析をしております。

http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2018/12/25a.html

韓国ではこの点記者からかなりしつこく質問されています。そして韓国国防部としては、日本側が問題視している火器管制レーダーとはSTIR-180のことだと理解していると答えています。

일시 및 장소 : 2019-01-03 10:30, 국방부
발 표 자 : 최현수 국방부 대변인<질문> 그런데 지금 일본 측에서 자꾸 FC, 그러니까 ‘사격통제레이더를 돌렸다.’고 얘기하면서 저희들한테 문제제기를 하는데, 이게 지금 일본이 얘기하는 게 명확하게, 우리가 운용한 STIR레이더가 맞습니까? 아니면 일본 측이 MW08까지도 문제를 제기하고 있는 겁니까? <답변> 이것에 대해서는 제가 파악한 것은 STIR레이더를 의미하는 것으로 알고 있습니다. <질문> 아니, 그런데 실무협의에서 충분히 설명이 오갔을 테고, 일본도 그러면 그 부분에 대해서 명확히 알고 있습니까? <답변> 네, 그런 것으로 알고 있습니다, 저는. 이 사안에 대해서는.

http://ebrief.korea.kr/briefing/briefingDetailPopup.do?brpId=51539&gubun=G

もちろん、記者がこのように質問したのは、日本側は公式に“STIRの照射を受けた”とは明言していないからです。

そのため後日、日本哨戒機が受信した周波数情報が開示されて、実はMW-08の電波だったと判明したとしても、日本政府としては“日本政府としてSTIRだと明言したことは一度もない。MW-08は火器管制レーダーの一種であり、政府の説明は間違っていない”と言い逃れる余地があります。

そういう状況で、“日本側が探知したのはSTIRに違いなく、韓国側が嘘をついている”と決め付けるのは早計だろう、というのが私の個人的な見解ですね。



「刑法改正20回」は「異常事態」か?

北朝鮮・中国問題研究家なる宮田敦司氏がこんなことを書いていました。

金正恩体制崩壊へのカウントダウン 治安悪化で刑法改正20回の異常事態

1/2(水) 5:59配信 デイリー新潮
(略)

若者の凶悪犯罪の増加

 北朝鮮では若年層の犯罪が増加して社会問題化している。北朝鮮にも刑法があるのだが、その刑法は2000年以降、細かなものを含めると20回も改正されている。これは異常事態だ。これだけ頻繁に改正されているということは、北朝鮮の治安が、法律が追いつかないほど急速に悪化していることを意味するからだ。
 頻繁な改正の背景には、青少年で構成された犯罪組織による強盗、窃盗、強姦などの急増がある。これは、社会への不満が若者の間で高まっていることを意味する。
(略)
取材・文/宮田敦司(北朝鮮・中国問題研究家)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190102-00554077-shincho-kr

では、2000年以降の日本での刑法改正の状況を見てみましょう。

(※以下の冒頭数字は2000年以降の改正回数連番で引用者による)
1.改正 平成13年 7月 4日号外法律第97号〔第一一次改正〕
2.改正 平成13年12月 5日号外法律第138号〔第一二次改正〕
3.改正 平成13年12月12日号外法律第153号〔保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律附則三八条による改正〕
4.改正 平成15年 7月18日法律第122号〔第一三次改正〕
5.改正 平成15年 8月 1日号外法律第138号〔仲裁法附則一三条による改正〕
6.改正 平成16年 6月18日号外法律第115号〔国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律附則三条による改正〕
7.改正 平成16年12月 8日号外法律第156号〔刑法等の一部を改正する法律一条による改正〕
8.改正 平成17年 5月25日号外法律第50号〔刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律附則一七条による改正〕
9.改正 平成17年 6月22日号外法律第66号〔刑法等の一部を改正する法律一条による改正〕
10.改正 平成18年 5月 8日号外法律第36号〔刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律一条による改正〕
11.改正 平成19年 5月23日法律第54号〔第一四次改正〕
12.改正 平成22年 4月27日号外法律第26号〔刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律一条による改正〕
13.改正 平成23年 6月24日号外法律第74号〔情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律一条による改正〕
14.改正 平成25年 6月19日号外法律第49号〔刑法等の一部を改正する法律一条による改正〕
15.改正 平成25年11月27日号外法律第86号〔自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律附則二・七条による改正〕
16.改正 平成28年 6月 3日号外法律第54号〔刑事訴訟法等の一部を改正する法律三条による改正〕
17.改正 平成29年 6月21日法律第67号〔組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律三条による改正〕
18.改正 平成29年 6月23日号外法律第72号〔第一五次改正〕
19.改正 平成30年 7月13日号外法律第72号〔民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律附則一三条による改正〕

http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/viewEnkaku.do?i=0GpZz3wYxdHSJPKiChaaMQ%3D%3D

日本の刑法は2000年以降「細かなものを含めると」19回改正されていることがわかります。刑法改正20回は「異常事態だ」が、19回は異常ではないというのはさすがに無理のある主張です*1
宮田氏は2000年以降19回に及ぶ日本の刑法改正の状況も知らずに北朝鮮の「刑法改正20回」を「異常事態」と断じて、その原因を「青少年で構成された犯罪組織による強盗、窃盗、強姦などの急増」と決め付け「社会への不満が若者の間で高まっていることを意味する」と述べていますが、根拠としては極めて薄弱という他ありません。



*1:ちなみに「細かなもの」を除いても、日本の刑法改正は第11次から第15次の5回行われています。1907年制定の刑法が1995年までの約90年間に第10次改正までだったのを踏まえれば、2000年以降の改正ペースはかなり速いと言えます。

「反日世論を喚起し、支持率を高める」論という幻想

重村智計氏がなかなか残念な論者になり果てています。まあ、今に始まったことではありませんが。
文在寅大統領の“陰謀”に乗せられるな(1/7(月) 12:00配信 日経ビジネスオンライン)

反日世論を喚起し、支持率を高める」?

韓国の政権が支持率を高めるために反日世論を喚起するというのは、日本メディアが好んで用いる説ですが、少なくとも近年においてそれを実証するような事例は見当たりません。
ですが、そのドグマにとらわれ続けている日本の論者は少なくなく、重村氏もその一人ですね。

反日世論を喚起し、支持率を高める

 韓国国防省報道官は1月2日、声明で「自衛隊機が威嚇的な低空飛行をした」と述べ、日本に謝罪を求めた。「威嚇的」の表現は、友好国には使わない。この言葉には「悪意」と「挑発の陰謀」が込められている。「高位級の人物」との表現で、安倍晋三首相を批判したのも失礼で、安倍首相を怒らせようとの意図がアリアリだ。日本が怒れば、反日世論が盛り上がり、大統領の支持率アップにつながるとの“陰謀”を考えている。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190107-41193189-business-kr

重村氏は「日本が怒れば、反日世論が盛り上がり、大統領の支持率アップにつながるとの“陰謀”」を幻想しているようですが、具体的な根拠は何もありません。
安倍首相が積極的に公表するよう防衛省に圧力をかけたというのは日本側の報道によるもので、それに対する批判があってもそれ自体が「失礼」とかではないでしょう。重村氏にとっては、安倍首相は批判してはいけないアンタッチャブルな存在なのかもしれませんが。

ところで、韓国ではギャラップやリアルメーターなどは政権支持率を週単位で調査して公表していますが、慰安婦問題や徴用工裁判あるいは観艦式での旭日旗問題や今回のFCR照射問題でのいわゆる“反日”的な政府対応で支持率が上がったなどという観測は全く見られません。
支持率への影響で言うならむしろ日本側にも受け入れやすい対応の方が韓国世論の支持を得やすい傾向にあるでしょうが、いずれにせよ、世論調査での支持率に対日政策の影響を挙げているような事例自体がほぼ皆無ですから、「日本が怒れば、反日世論が盛り上がり、大統領の支持率アップにつながる」などという言説自体が都市伝説に近いものだと言っていいでしょう。

 ところが、朝鮮日報によると韓国のネット世論は冷静で、70%以上が「韓国政府の主張は信用できない」と書き込んだ。日本政府は、文大統領の“陰謀”に乗せられてはいけない。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190107-41193189-business-kr

これの根拠がよくわかりませんでしたが、ひょっとして朝鮮日報に書き込まれたコメントのことを言ってるんですかね?

 報道官声明は、「争点をすり替える意図」が明白だ。「自衛隊機へのレーダー照射問題」を「日本の謝罪問題」に、すり替える“陰謀”だ。いつもの手口である。「レーダー照射は、自衛隊機を狙ったものではない」というが、それなら誰を狙ったのか説明がない
 何かを隠そうとしている。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190107-41193189-business-kr

「「レーダー照射は、自衛隊機を狙ったものではない」というが、それなら誰を狙ったのか説明がない」って、いや韓国側は最初っから遭難した北朝鮮漁船の捜索のためレーダー照射したって言ってるじゃないですか。何回言えば理解できるんですかね。


韓国ではレーダー照射に大統領の許可が必要って、どこ情報?

●責任問題を隠そうとしている

 事件が起きたのは、昨年12月20日の午後3時過ぎだった。昼日中の明るい時間帯で、海上も穏やかで相手を認識できる状態にあったのに、自衛隊機に攻撃を意味するレーダーを照射した。考えうる可能性は(1)自衛隊機に見られると困る行動をしていた(2)韓国軍はすでに自衛隊を敵軍と考えている(3)兵士が勝手に行なった――である。
 韓国大統領はクーデターを警戒し、各師団や部隊の司令官の指揮と行動を厳しく規制し監視している。大統領が許可してもいないのに勝手にレーダーを照射することは、絶対に許されない。だが、誰かがレーダー照射を命じたから、事件は起きたのだ。その責任問題を懸命に隠そうとしている。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190107-41193189-business-kr

韓国側は最初から何度も説明していますが、照射したのはMW-08でそれは海上捜索のためでありSTIR-180は照射していないというものです。「自衛隊機に攻撃を意味するレーダーを照射した」というのは重村氏の勝手な解釈で、現時点では確定した事実ではありません。
重村氏による「考えうる可能性」というのも頭のおかしなものです。
たとえば「(1)自衛隊機に見られると困る行動をしていた」とか、いや仮にそうだとして、その場合韓国駆逐艦が火器管制レーダーを日本哨戒機に照射することで韓国側に何かメリットがあるんですか?火器管制レーダーを照射したところで、日本哨戒機が目撃した内容を忘れてくれるわけでも何でもありませんよね?
“見られたら困ることをしていたから火器管制レーダーを照射した”と主張している論者は他にもいますけど、理由と行動がまるで合致しないトンデモとしか言いようがないんですよね。
「(2)韓国軍はすでに自衛隊を敵軍と考えている」とかも馬鹿げた主張で、それが事実ならFCRだけではなく撃墜してくるんじゃないですかね。むしろ、友好国なのに、FCRが照射されたと大騒ぎする日本側の方が韓国軍を敵軍と考えていそうです。韓国側はMW-08の照射は認めていて、即座に日本哨戒機を狙ったものではないと釈明しているにもかかわらず、日本側は意図的だと決め付けて大騒ぎしているわけですから(それも照射されたのがMW-08なのかSTIRなのかも曖昧にしたまま)。
STIRについて「(3)兵士が勝手に行なった」という可能性自体は無いとは言えないでしょうが、とにかく日本側が照射されたのがMW-08なのかSTIRなのかを明確にしないと何とも言えない話です。

そして可能性(4)として、“日本側がMW-08をSTIRと誤認した”とか“日本側はMW-08の照射を問題視している”とかがあっていいはずなのに、そこには思いが至らない、その辺が昨今の日本メディアの体たらくを示しています。“わが政府、わが軍は嘘つかない”とか認識が素朴すぎるにもほどがあります。

「大統領が許可してもいないのに勝手にレーダーを照射することは、絶対に許されない」とかも意味不明です。STIRの使用許可って大統領権限なんですか?
「誰かがレーダー照射を命じたから、事件は起きたのだ」ていうのも、いやあなた直前に「考えうる可能性」として「(3)兵士が勝手に行なった」というものを挙げてるじゃないですか、と。

どの国の海軍も海難救助の協力くらいはすると思うが・・・

 韓国海軍艦艇の作戦活動に、北朝鮮の漁船を救助する「任務」はない。偶然に発見した場合は救助するが、救助のために「作戦活動」をすることはない。自衛隊機が撮影した映像では、海洋警察の救助艇が作業を終える状態にある。海軍艦艇の救助行動は見られない。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190107-41193189-business-kr

元々、漂流している北朝鮮漁船を発見した韓国漁船韓国海洋警察に通報し、現場付近にいた韓国海駆逐艦が捜索に協力したってだけの内容がどうして理解できないのか不思議。
で、どこの国の海軍であっても、そりゃ遭難者の救助に協力するのは当たり前で、別に韓国海軍が北朝鮮漁船の救助に協力してもいぶかしむ理由なんか無いでしょう。それとも日本の海上自衛隊北朝鮮漁船が遭難して漂流しているのを発見しても見捨てるんですか?

 韓国国防省は、当初は「北朝鮮漁船救助」と公式に述べ、「海が荒れていた」と嘘の説明をしたが、2日の声明では「作戦活動」「遭難漁船」と言葉を変え、「北朝鮮」の表現を消した。まずいのだろう。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190107-41193189-business-kr

1月3日の記者会見でも、記者の質問に対して北朝鮮漁船を救助していたことを認めているので、別にそれが「まずい」とかいうことは無いと思います。また、朝日記事によれば事件翌日の12月21日時点で韓国側は「作戦活動」との文言が使われています*1。したがって重村氏の主張は邪推の域を出ていません。

いや、それは「韓国の主張通り」ではないだろう

 百歩譲って韓国の主張通りなら、韓国艦艇は自衛隊機の位置と距離を測るためにレーダーを作動させた。このとき、間違えて「火器管制レーダー」を使ったのかもしれない。それなら「誤作動」と、なぜ言わないのか。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190107-41193189-business-kr

「百歩譲って韓国の主張通りなら」とか言いながら、「韓国艦艇は自衛隊機の位置と距離を測るためにレーダーを作動させた」と主張するのは明らかにミスリーディングです。というかほぼ捏造ですね、これ。「韓国の主張通りなら」北朝鮮漁船救助のため捜索目的でMW-08レーダーを作動させ、自衛隊機はそれを感知しただけということにしかならないわけですから。

「韓国国防省の発表に韓国民の多くが疑問を抱いている事実」?

 日本政府には、韓国国防省の発表に韓国民の多くが疑問を抱いている事実を、よく理解してほしい。「日本は正直だ」との韓国民の意識を、裏切ってはならない。文在寅政権と韓国民を「離間」する戦略を取るべきだ。事実確認と再発防止の要求に徹し、批判や非難は避けるべきだ。ただし、曖昧な合意をしてはいけない。喧嘩する必要はないが、言うべきことははっきり言うべきだ。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190107-41193189-business-kr

韓国メディアは日本メディアと違って自国政府の公式発表を疑いもせず、そのまま垂れ流すようなことはしないようですが、それを「韓国国防省の発表に韓国民の多くが疑問を抱いている事実」と断言するのは我田引水にもほどがありますね。
「「日本は正直だ」との韓国民の意識」というのも、日本人や日本社会に対する韓国民の好感や信頼をそのまま日本政府にも当てはめるのも意味不明です。

韓国駆逐艦北朝鮮漁船相手に「瀬取り」したとか疑う知能に驚く

 このため、韓国海軍艦艇による自衛隊機への「火器管制レーダー照射」も、北朝鮮の「瀬取りに協力する行動」ではなかったか、との疑惑を生んでいる。北朝鮮の密輸行為に協力しているのを自衛隊機にみつけられたと思い、レーダー照射をしたとの観測だ。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190107-41193189-business-kr

バカバカしいことこの上ないんですが、火器管制レーダーに照射された相手の記憶を消去する機能があるとでも思ってるんですかね?

 国連制裁の解除や緩和が2019年中に実現しないと、北朝鮮経済は一層苦しくなる。経済を好転させるには、米朝首脳会談日朝首脳会談が必要だ。日本への言及はなかったが、批判的表現もなく、水面下で接触が継続していることを示唆した。中国政府高官によると、習近平国家主席日朝首脳会談の実現を、金委員長に強く求めている。米中貿易戦争を戦うには、日本の経済協力が必要で、日本を取り込もうとしている。拉致問題解決で、安倍首相に恩義を売る戦略だ。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190107-41193189-business-kr

北朝鮮が経済を好転させるのに米朝首脳会談が必要だというのはわかりますが、日朝首脳会談は別に必須でもないでしょう。日本に対する「批判的表現」が無かったことを都合よく解釈しているようですが、「日本への言及はなかった」というのをそのまま受け止めた方がいいんじゃないですかね。すなわち、米朝関係が改善すれば、日本は米国に追随するのだから言及する必要が無かった、と。そりゃ水面下での接触くらいはするでしょうけど。

中国に対する観測もよくもまあ、こう日本中心に世界が回っているみたいな認識ができるものかと呆れます。
中国側が米中貿易戦争で有利になるように貿易面での日米離間を図るのは当然の戦略ではあるでしょうが、そのために拉致問題を仲介するなんて面倒を中国が負担する理由がありません。

重村氏ってここまで駄目な人だったかなぁ・・・。



続きを読む

第73回国連総会で採択された死刑執行停止を求める国連決議に反対した国について

アムネスティが2018年12月27日付で「死刑執行停止を求める国連決議  圧倒的多数で採択」という記事を出していました。ざっと日本語で検索してみましたが、日本のメディアは総じてこの件を無視しているようです。報道しない自由を満喫しているようですね。
まあ、安倍政権が次から次へと死刑執行している状況で、この決議について報じても政府に睨まれるだけでメリットが無いという“高度に経営的な判断”なんでしょう、きっと。

国連総会決議は2018年12月17日付で、投票権を持つ193ヵ国中、賛成121、反対35、棄権32、投票不参加5という結果でした。

気になる反対国ですが、わが日本はもちろん反対でした。仲良く反対票を投じたのは、米国、中国、インド、北朝鮮サウジアラビア等々、なるほど日本と価値観の近い国々ですね。

反対国を全て列挙すると、アフガニスタンバハマバーレーンバングラディシュ、ベリーズボツワナブルネイ、中国、北朝鮮、エジプト、エチオピアグレナダ、インド、イラン、イラク、ジャマイカ、日本、クウェートモルディブナウルパプアニューギニアカタール、セントクリストファー・ネイビス、セントルシアセントビンセント・グレナディーンサウジアラビアシンガポールスーダン、シリア、トリニダード・トバゴ、米国、イエメン、ジンバブエ の以上35か国。

まあ、国数で言えば少数派ですが、人口で比べれば多数派なんじゃないですかね、中国やインドのおかげで。


参照:Moratorium on the use of the death penalty : resolution / adopted by the General Assembly
関連:General Assembly Endorses Landmark Global Compact on Refugees, Adopting 53 Third Committee Resolutions, 6 Decisions Covering Range of Human Rights
関連:Resolutions of the 73rd session



当日の気象・海象は1トン未満の木船を捜索する障害になる程度には悪かった

防衛省が公開した映像です。

f:id:scopedog:20181230153219p:plain
【気象・海象】(P-1哨戒機が機上で観測)
天気:晴れ
風:北西の風15kt(7m/s)
風浪階級:1m(さざ波がある程度)
うねり:南へ1m

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/28z.html
http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/12/30/160000

これに対して読売新聞などはこのように評しています。

天候は良好な状態だった。

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20181228-OYT1T50078.html

確かに天気は晴れていますし、海面も穏やかなように見えますが、それはあくまでも機上から見た場合です。
前回、私はこう書きました。

さて、防衛表公表の気象情報である「風浪階級:1m(さざ波がある程度)」との記載は、風浪階級1を間違って「1m」と記載したのか、それとも波の高さ1mを誤って「(さざ波がある程度)」と表記したのか、どちらなんでしょうかね。

http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/12/30/160000

その意味が理解できなかったのか、こういう反応がありました。

日本がまちがっておりました。海上保安庁の基準では”やや波があり”です。こうですか?わかりません><
jacobyのコメント2018/12/30 19:24

http://b.hatena.ne.jp/entry/4662445908091577249/comment/jacoby

こういう情弱のためにもう少し説明しましょう。
「風浪階級1を間違って「1m」と記載したのか、それとも波の高さ1mを誤って「(さざ波がある程度)」と表記したのか、どちらなんでしょうかね」と書いたものの、その後調べた内容も踏まえると、実際の波の高さは1mで、「(さざ波がある程度)」という防衛省によるキャプションは誤りか、又は虚偽だと考えられます。

判断基準は以下の記載。

風:北西の風15kt(7m/s)

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/28z.html

ここで風力階級表というのを参照します。

f:id:scopedog:20190102000553p:plain

https://www.i-kahaku.jp/friend/kagaku/0306/kaze/index.html

風速は15kt(7m/s)ですから、風力階級4に相当し、海上の状況は「白波がかなり多くなる」という状況で、その時の有義波高は1m程度*1とのことです。
つまり、風力階級表を見る限り、海上の波の高さは1m程度であり、白波がかなり多くなる程度の状態だったことがわかります。決して「(さざ波がある程度)」という穏やかな状態じゃありません。上空100m以上から撮った映像だけ見て、白波が“見えない”から穏やかだった、ということにはならないわけです。
それに、そもそも映像にはちゃんと白波が映っていますし。

f:id:scopedog:20190102000441p:plain
4分56秒時点

当時、天候は晴れていても海上は穏やかとは言えない状態だったと言えます。
韓国海洋警察と海軍は、1mの波があり白波が立つような状態の海上で、全長10mもない1トン未満の小型木船を捜索していたわけです。MW-08レーダーを使う十分な理由がある気象条件と言って何の疑問もありません。

12月21日時点でハンギョレが韓国軍関係者情報として以下のように報じています。

日本「韓国軍が自衛隊哨戒機に射撃統制用レーダー照射」抗議

登録:2018-12-21 22:03 修正:2018-12-22 09:32
(略)
 当時の状況は20日、独島北東方向100キロメートル地点の公海上北朝鮮の船舶が漂流しているという情報により、韓国の海洋警察と共に海軍の駆逐艦が出動し捜索作業を10時間近く実施している過程で発生したという。韓国軍関係者は「当時、波が高く気象条件が良くなく、駆逐艦のすべてのレーダーを総動員していた」として「この過程で射撃統制レーダーについた探索レーダーが360度回転し撃った信号が日本海自衛隊のP1哨戒機に探知されたものと理解する」と話した。
(略)

http://japan.hani.co.kr/arti/PRINT/32409.html

「当時、波が高く気象条件が良くなく、駆逐艦のすべてのレーダーを総動員していた」

少なくとも、漂流している全長10mにも満たない1トン未満の小型木船を捜索する上で、「波が高く気象条件が良くなく」という表現は間違いではありません。
遠方にある1トン未満の小型木船は1mの波で簡単に隠れますし、白波は目視での捜索を難しくしたでしょう。

また現場の海はとても穏やかで波の高さは1m程度、冬の日本海とは思えないほど波が小さく静かな海況です。韓国側の波が高かったという説明は首を傾げざるを得ません。

https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20181228-00109402/

このように評している論者もいますが、白波が立つような状態を「現場の海はとても穏やか」「波が小さく静かな海況」というのはちょっとどうかと思います。

ただ、この論者のような誤解を生じさせた原因は、防衛省が公開した映像に「風浪階級:1m(さざ波がある程度)」と書かれていたことにあります。波高1mならば、(やや波がある状態)であって、(さざ波がある程度)ではないからです。
もちろん(やや波がある状態)であっても、駆逐艦自身には何の問題もありませんが、1トン未満の小型木船を捜索する上では障害になります。防衛省公開映像における「風浪階級:1m(さざ波がある程度)」という虚偽キャプションは、そういう理解を妨げる非常に有害な虚偽であり、正直、防衛省による意図的な虚偽記載ではないかと思われるほどです。

海上保安庁など海難救助を専門に行っている人たちは、あの防衛省公開映像における気象・海象情報をどう理解したのか、その辺を知りたいところです。
まあ、一色みたいなネトウヨに聞いても意味ないかも知れませんが。



続きを読む

防衛省公開映像に映っている漁船は遭難した漁船とは別物

以前、以下のように記載しました。

映像に映っている漁船は1トン未満にして大きすぎない?

遭難した漁船については、こう報じられています。

日本哨戒機接近し撮影用光学カメラ稼働 ビーム放射はせず=韓国軍

12/23(日) 17:14配信
 一方、韓国の艦艇が救助した北朝鮮漁船は1トン未満の木船で、韓国政府は21日、乗組員3人と遺体1体を北朝鮮側に引き渡した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181223-00000027-yonh-kr

f:id:scopedog:20181230034716p:plain
防衛省公開映像
映像には韓国海警察庁所属5001号(삼봉호; 三峰号)と漁船が映っていますが、三峰号は全長145m *1ですので、漁船は少なくとも10m以上はありそうです。
「1トン未満の木船」で10m以上というのは少し大きすぎる気がします。

http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/12/30/070000

同じ防衛省公開の映像を見た別の人も漁船のサイズを「全長10数m〜20mくらい」と判断しています。

現場の海上には、「971 広開土大王(クァンゲト・デワン(광개토 대왕))」駆逐艦の他、約1000mの距離に海洋警察庁の5000トン級警備救難艦「5001 参峰号(サンボンギョ(삼봉호))」とその搭載艇(推定)2隻、そして漁船1隻が写っている。

漁船は、北朝鮮の木造のイカ釣り漁船とよく似ている。
「5001 サンボンギョ」の搭載艇(左下)と比較すると、漁船は全長10数m〜20mくらい。

https://pelicanmemo.hatenablog.com/entry/2018/12/30/193000

しかしながら、やはり「1トン未満の木船」で全長10m以上というのは大きすぎます。
警察用船舶の資料ですが、軽合金製またはFRP製の全長10mの船舶の総トン数は4.9トンです*2。同じ全長だと木造船の方が重くなります。もちろん全幅など排水量を左右する条件は全長だけではありませんが、それでも「1トン未満の木船」が10m以上の全長であると言う可能性は極めて低いでしょう。

ちなみに2011年に脱北してきた5トン規模の北朝鮮木造船がこれです。

f:id:scopedog:20190101200433j:plain

http://japanese.donga.com/List/3/all/27/412402/1

背後に映っている人の大きさから見て全長は10mもなさそうですが、これで5トンです。

また、ヤマハ発動機のサイトにある1.1トンの和船だと全長7.5m、全幅2m程度です。

f:id:scopedog:20190101200650p:plain

https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/lineup/j-boat/w20-25/

木造船だともう少し小さくなるくらいでしょうか。
とすると防衛省公開の映像に映っている漁船は少なくとも、報道で報じられた「1トン未満の木船」である「韓国の艦艇が救助した北朝鮮漁船」とは別の船ということになりそうですね。

ちなみに

こうした「1トン未満の木船」は日本海沿岸に漂着していることで日本では知られています。


こんな感じの船か、これよりもう少し小さいくらいでしょうか。
漂着漁船には船員の遺体が載っていることもありますが、今回韓国側に救助された北朝鮮漁船も、もし救助されなかったら遺体を載せた状態で日本に漂着したかもしれません。
漁船員の人命のかかった事件であったことを認識している日本人は多分ほとんどいないのでしょうけどね。