世界的には犠牲者数10〜30万というのが一般的

ブリタニカでは南京事件について、以下のように表示されています。

Nanjing Massacre, conventional Nanking Massacre, also called Rape of Nanjing, (December 1937–January 1938), mass killing and ravaging of Chinese citizens and capitulated soldiers by soldiers of the Japanese Imperial Army after its seizure of Nanjing, China, on Dec. 13, 1937, during the Sino-Japanese War that preceded World War II. The number of Chinese killed in the massacre has been subject to much debate, with most estimates ranging from 100,000 to more than 300,000.

http://www.britannica.com/EBchecked/topic/402618/Nanjing-Massacre

犠牲者数についての論争があることを示しつつ、ほとんどは10万人から30万人以上と評価されていることを記載しています。
否定論はもちろん、”いわゆる”小虐殺説も相手にされていません。

世界における南京事件認識は東京裁判を基礎においているわけですから最小でも10万人になるのは当たり前ですね。30万人以上という上限*1は南京軍事法廷での認定及びそれを受けた南京大虐殺記念館などの公式数字です。

連合国による極東国際軍事裁判の認定数字と、被害当事国で公式に史料収集と研究を行っている大規模な記念館を持つ中国の公式数字が、国際的に犠牲者数として通用するのは当然の帰結です。
日本でも南京事件の犠牲者数についての研究がなされ4万〜20万以上といった数字も出されていますが、日本国内に限定された研究に過ぎず低レベルな否定論も紛れ込みトータルで見れば研究の質も必ずしも高いとは言えません。
日本政府自身が、過去の旧日本軍・政府による戦争犯罪の調査に積極的に行ったことすらなく、自らが加害者である戦争犯罪の事実について国民に伝えるための記念館なども公的なものは皆無と言っていいでしょう。
つまり、日本政府が胸を張って言える南京事件に関する詳細な調査結果など存在しないわけで*2、そのような状況下で河村発言が「「30万人説」広めただけ」などと泣き言を言っても内向きに傷を嘗めあってるに過ぎません。

木語:「30万人説」広めただけ=金子秀敏
 <moku−go>

 名古屋市河村たかし市長が物議をかもした。1937年の南京事件の被害者について「30万人とされるような大虐殺はなかったのではないか」と発言した。
 「30万ではない」説は日本国内では多数派だろう。ただし、では何人かとなると、20万説からゼロまで割れている。
 中国は30万が定説だ。根拠は東京裁判や南京軍事法廷だと主張している。共産党中央と中国政府が認定した数字だ。河村氏はそれが正しくないと思うなら、党中央と中国政府に言うのが筋だろう。南京市の役人に「党中央の歴史認識は間違っている」とねじ込んでみてもらちは明かない。相手を間違えている。帰国した代表団は、なぜ席を蹴って抗議しなかった!とネットでたたかれているという。
 タイミングも間違えている。ネットで2月23日付米国メディアCNNの書きぶりを検索してみたらいい。
 出だしが「日本の市長が、多くの記録によって立証された、70年以上前に中国で起きた虐殺事件を軽く見て怒りを呼んでいる」。次の段が「南京に侵入した日本軍のレイプ、殺人、略奪で殺された市民は30万人と見積もられる」。
 次が「事件は最近クリスチャン・ベール主演の映画『ザ・フラワーズ・オブ・ウォー(戦争の花)』で描かれた」。ここが問題だ。この映画の中国語タイトルは「金陵十三釵(チンリンシーサンチャイ)」。金陵とは南京、釵はかんざし。女性たちが米国人牧師のいる教会に逃げ込んだ。日本軍が女性を差し出すよう迫る。女学生を救うために売春婦たちが進んで犠牲になるという戦争美談だ。
 中国映画としては史上最高の約70億円をかけ、張芸謀(チャンイーモウ)監督がメガホンをとった。昨年12月13日、わざわざ「南京大虐殺記念日」を選んで、北京で封切りのセレモニーが行われた。同じ日に、南京の記念館では反日運動団体が5000人集会を開いた。危ういことに映画の売り込みと反日運動が連動している。
 大ヒットしている。映画館を出てくる中国人は興奮して「尖閣諸島を奪回せよ」と叫んでいるという。30万人が正しいかどうか、中国人が冷静に語りあえる時ではない。
 米国のCNNが30万人説を振りまくのはなぜか。米国も中国も東京裁判では同じ対日戦勝国である。日本の戦争犯罪がなかったとする歴史認識は持ち合わせていない。
 結局、河村発言でなにがどうなったのか。CNNが張芸謀映画を宣伝し、30万人説がいよいよ世界に広まった。この結果について河村氏は責任を感じているだろうか。(専門編集委員

http://mainichi.jp/select/opinion/kaneko/news/20120301ddm003070059000c.html

「30万人が正しいかどうか、中国人が冷静に語りあえる時ではない。」等と言っていますが、1970年代以降数十年の間、南京事件を事実と認めるかどうか、日本人が冷静に語りあえる時は未だに来ていないことをまず恥じるべきでしょう。
この件に関しては、特にメディア人の責任は重いと言うべきです。

  • 参考:CNN報道

Fury over Japanese politician's Nanjing Massacre denialBy Paul Armstrong, CNN

February 23, 2012 -- Updated 1418 GMT (2218 HKT)

Hong Kong (CNN) -- The mayor of a Japanese city has sparked outrage after playing down a well-documented massacre of civilians in China's former capital more than 70 years ago.

An estimated 300,000 people died when Japanese troops invaded the city of Nanjing in China's Jiangsu province in 1937, unleashing a campaign of rape, murder and looting that became known as the Nanjing Massacre. The event was recently portrayed in a movie starring Christian Bale called "The Flowers of War."
(略)

http://edition.cnn.com/2012/02/23/world/asia/china-nanjing-row/index.html

*1:「以上」なので上限と呼ぶのもおかしいのですが。

*2:民間の研究者が地道に調査研究を積み上げているのは事実ですが、メディアから黙殺ないし否定、酷い場合はバッシングすらされる有様です