「歴史を鑑」あるいは「他国を鑑」にすべきこと

産経新聞がはしゃいでいます。

北京春秋 「歴史を鑑」 自国では
2012.5.9 03:03 [中国]
 中国共産党の機関紙、人民日報甘粛支社の林治波・支社長が最近、ネット上で話題となった。自身のミニブログで「1960年から62年に中国で数千万人が餓死したことは嘘だ。誰も見たことがない」と書いたことが物議を醸したのだ。
 毛沢東が主導した大躍進政策の失敗で、同時期に各地で3千万人以上が餓死したことは国際社会でも周知されている事実。元国営新華社通信記者、楊継縄氏の著書「墓碑」などノンフィクション作品も多くある。
 中国で最も権威的な宣伝機関の大幹部が突然この事実を否定したことは、「新しい政治運動開始の兆しでは」といった臆測が飛び交った。林氏のミニブログには数日間で1万人を超えるユーザーが抗議。当時の惨禍を裏付ける史料が大量に送られ「多くの餓死者をこの目で見た」といった書き込みが殺到した。これを受け、林氏は「大躍進についての研究が足りなかった。私の不当な言論で多くの方につらい記憶をよみがえらせたことは、申し訳なく思っている」と自身の勉強不足を認めあっさりと謝罪した。
 中国共産党指導者たちは日本の政治家に対して「歴史を鑑(かがみ)に」との言葉を好んで使うが、自身の政策失敗がもたらした教訓については、どうやら下の幹部たちに教えていないようだ。(矢板明夫)

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120509/chn12050903040000-n1.htm

林治波氏の元の発言は削除したのか見当たりませんでした。ただ5月1日に謝罪した発言は残っています。

人民日报林治波:
道歉:我对大跃进那段历史缺乏研究,掌握情况不够。这几天接到网友许多信息,告知当年悲惨的情况,得以了解更多事实,内心深受震撼!我的个人不当言论引发很多国人的痛苦回忆,伤害了很多人的感情,为此深感歉疚,向大家真诚道歉!感谢各位网友指正我的错误,并愿意和大家一起努力防止历史悲剧重演。

http://t.people.com.cn/170140/9505772

(試訳*1
陳謝:私は大躍進の歴史に対する研究が足りず、(当時の)状況をよく理解できていませんでした。この数日、ネット上からたくさんの情報や当時の悲惨な状況について教えてもらい、多くの事実を知って調べて、私は激しく動揺しました!私個人の不適当な発言が、多くの国民に苦しかった記憶を思い起こさせ、多くの人々の感情を傷つけたことについて、大変申し訳なく思い、心から謝罪します!また、ネットで私の誤りを指摘し正してくれたことに感謝すると共に、このような悲劇の歴史を繰り返さないように皆と一緒に努力したいと思います。

歴史に無知な人による不適当な発言に対し、ネット民からの指摘で当人が潔く自らの不勉強を認めたという、基本的に評価すべき対応です。
南京大虐殺を否定し指摘されても言い逃れに終始するどこぞの市長と、その尻馬に乗って否定論を流布する某知事や某議員、某メディアとは、好対照と言えます。

南京事件否定論者にとって歴史も他国も鑑にするつもりなど毛頭ないのでしょうね。

中国共産党指導者たちは日本の政治家に対して「歴史を鑑(かがみ)に」との言葉を好んで使うが、自身の政策失敗がもたらした教訓については、どうやら下の幹部たちに教えていないようだ。」との矢板明夫記者の言葉には、羨望の色が鮮やかに現れています。

*1:意訳なので誤訳があれば指摘頂ければと思います。