90年前から進歩のない排外主義

以下は、1921年内務省警保局長から各都道府県(当時は、庁府県)長官に出された注意です。

「JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A06030000200、新聞紙取締ニ関スル例規(国立公文書館)」

 大正十年十一月十二日
                  警保局長
 庁府県*1長官宛

近時朝鮮人に関する新聞紙の記事中往々僅少なる一部不逞の徒の言動を誇大に報道し又何等拠る所なきに拘らず朝鮮人を以て犯罪嫌疑者なる如く伝え若くは特別注意に値せざる市井の一瑣事も朝鮮人に関するの故を以て特に之を掲載する等の嫌あるもの有之候処右は瞑々の中に彼等の心裡に悪影響を及ぼすこと少からず又時に外交上不利の影響を及ぼす場合も有之現に殊更に或種の浮説新聞紙法に照し処分せらるることも有之際にて場合に依り事の選択報道に就きては特に慎重の態度をとり事の真相を誤らざる様管下各社に対し厳重御注意相成度

「一部不逞の徒の言動を誇大に報道」「何等拠る所なきに拘らず朝鮮人を以て犯罪嫌疑者なる如く伝え」「特別注意に値せざる市井の一瑣事も朝鮮人に関するの故を以て特に之を掲載」などは、現在でも産経新聞などが得意とするところです。

一方でこの注意も、内務省が「彼等の心裡に悪影響を及ぼす」「外交上不利の影響を及ぼす」などの懸念から出したもので、決して人権重視や反マイノリティ差別と言った認識で出したわけでないことは、当時の日本政府の人権意識を物語っています。

*1:「庁」は北海道庁樺太庁を指す。