実施部隊
第16師団(中島今朝吾中将)歩兵第19旅団(草場辰巳少将)歩兵第20連隊(大野宣明大佐)*1
第3大隊(青木国雄少佐)第12中隊(井上昌次中尉)及び第3機関銃中隊(近藤亦男大尉)
但し、大野大佐は1937年11月18日に病気の為一時帰国し、第3大隊の青木少佐*2が第20連隊連隊長代理となり、第3機関銃中隊の近藤亦男大尉が第3大隊の大隊長代理を務めた。しかし、11月25日には近藤大尉が戦死し、森王琢大尉*3 *4が第3大隊の代理を務めることになる。
事件発生場所
南京郊外・馬群鎮
南京東方・中山門から東方へ約5km。紫金山南東部。現在の南京棲霞区馬群村附近。
事件発生日時
1937年12月14日午前8時半〜午後2時までの間
犠牲者数
中国軍捕虜 200〜300人
事件概要
1937年12月14日、歩兵第20連隊は第3大隊を城外東方の紫金山東側一帯の掃討にあてた。このうち、第12中隊が馬群附近で捕えた中国軍捕虜200〜300名を殺害するために第3機関銃中隊から一個分隊が派遣され、捕虜全員を機関銃で虐殺した。
このうち1名は、第12中隊の将校による試し斬りで殺害されている。
第3機関銃中隊の記録
「歩兵第20連隊第3大隊第3機関銃中隊 M・N(牧原信夫・下記参照)の日記」
十二月十四日
午前七時起床。午前八時半一分隊は十二中隊に協力、馬群方面の掃討に出る。敵も食うに物なくふらふら続いて投降して来たそうだ。直ちに自動車にて出発す。しかし到着した時には、小銃中隊だけで三百十名位の敵の武装解除を終わり、待っていたとの事。早速行って、全部銃殺して皈(かえ)って来た。
(下里「続隠された聯隊史」P126-127)
牧原信夫日記
http://www.geocities.jp/yu77799/nankin/bagun.html
(歩兵第二十連隊第三機関銃中隊・上等兵)
十二月十四日
午前七時起床す。午前八時半、一分隊は十二中隊に協力、馬群の掃討に行く。残敵が食うに食が無い為ふらふらと出て来たそうで直ちに自動車にて出発す。
而し到着した時には小銃中隊にて三百十名位の敵の武装解除をやり待って居たとの事、早速行って全部銃殺して帰って来た。昨夜は此地の小行李を夜襲し、小行李も六名戦死して居た。
(『南京戦史資料集』 P511)
第12中隊の記録
「福知山歩兵第20連隊所属 A・J少尉の陣中日誌」
十二月十三日
将校斥候として中山門附近の敵情偵察に赴く 帰途地雷にかかる。貴重なる生命を犠牲にせしこと申訳なし 五時二十分なり 何の悪日ぞ、而し此の日 南京へナダレを打って入城せし日なり、恨みは深し南京。十三日の日又なく、自分は微傷だにせぬが尚恨めし(以下地雷爆発による戦死者四名、戦傷者三名 火葬残置兵五名の氏名が記されているが、省略)。
四遺骨と共に夜を共にす(このあと、現場見取図とメモあり、省略)。十二月十四日
野戦銃(重)砲の掩護にゆく
投降者二百余名 死刑に処す
一匹 余自ら一刀両断、
手ごたえ小気味よし 血を吸うた業物の切れ味格別なり 白旗を翻えすもの次第に多く続々投降す、其の数二千以上、一万(下里「隠された聯隊史」P92)
考察
明確に殺害したとの記録は第12中隊関連で見つけられているが、他の第9〜第11中隊については詳細不明。しかし、第3機関銃中隊の記録に、同日第9中隊の一個分隊が約1800人の捕虜を連れていた事が記載されている。第9中隊は、前日の12月13日から紫金山掃討を行っている。「A・J少尉の陣中日誌」にある「其の数二千以上、一万」とはおそらくは、12月13日〜14日の2日間で第3大隊が得た捕虜の数であろう。
そして、これらの多くが虐殺されたもののと思われる。
参照:
下里正樹「隠された聯隊史」青木書店、1987/11/30
下里正樹「続隠された聯隊史」青木書店、1988/7/15
「馬群」の捕虜殺害
*1:http://www.geocities.jp/kk_nanking/sougou/sosikizu/D016.htm#20i
*2:1938年5月の徐州作戦時に戦死。http://www.heiwakinen.jp/shiryokan/heiwa/12onketsu/O_12_525_1.pdf
*3:戦後、南京事件を否定する人物ですが、森王氏が指揮する部隊が捕虜の大量殺戮を行っていたことを踏まえると、虐殺事件の責任者という利害関係者の一人であって、森王氏の否定論をそのまま信じるのには躊躇せざるを得ません。http://blogs.yahoo.co.jp/sanganehp/14294402.html、http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20070929/p2 でも指摘されていますね。
*4:ちなみに森王氏の率いた第3大隊は、南京攻略直前の11月29日に占領した常州でも4000人以上の住民を殺害しています。http://www.oct.zaq.ne.jp/poppo456/in/b_honda.htm