植民地に大学を作った事例いくつか

【正論】分別ある人が黙る国はよくない 比較文化史家、東京大学名誉教授・平川祐弘
まあ、産経正論にしては穏やかな内容だと思いました。

ただ気になる点があります。

 平川「植民地支配は二級市民を作り差別するから悪ですが、日本のように植民地に国立大学を造った国は珍しくありませんか」

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130617/kor13061703070001-n1.htm

と言っている点です。
この手の話題は、歴史修正主義者が日本の植民地支配を正当化する際に用いますので単純に聞き流すわけにもいきません。

はっきり言えば、植民地に大学を設立した事例は少なくありません*1
英領インドでは、1857年にボンベイ大学、カルカッタ大学、マドラス大学が設置されています。ボンベイ大学とカルカッタ大学の設立はロンドン大学の提案により1854年には設置が認められ、1857年1月24日にはカルカッタ大学法が施行されています。マドラス大学は少し遅れて1857年9月に設置法が成立しています。大学設置の請願は1840年頃からありました。
その他、マイソール大学(1916年)、オスマニア大学(1918年)、アーンドラ大学(1926年)、アンナマライ大学(1929年)、トラヴァンコール大学(1937年)などが設立されています。
1801年にイギリスに併合されたアイルランドでも、1845年にはベルファスト、ゴールウェイ、コークに王立大学が設置されていますし、イギリスの保護国だったエジプトでも1908年にはカイロ大学が設立されています。
フランスが仏領インドシナインドシナ大学を設置したのは1906年、アルジェリアにアルジェ大学を設置したのは1909年*2、アメリカがフィリピンにフィリピン大学を作ったのが1908年です。

日本が植民地朝鮮に京城帝国大学を作ったのは1924年、植民地台湾に台北帝国大学を作ったのは1928年です。

大学に関して言えば、欧米の帝国主義国家がやっていたことを20年ほど遅れて日本が追随したと評するのが妥当でしょう。

*1:以前にも取り上げましたが。http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20090128/1233149996

*2:元となった4つの学科については1879年に設立。