産経新聞はなぜ嘘をつくのか?・(2013年8月3日「緯度経度」)

安定したデマ・誤報率を誇る古森義久氏の登場です。
産経新聞ではデマ・誤報を多発させても、自民党に媚を売っていれば首にはならず禄を食むことが出来ます。取材はしたくないけど記者になりたい、考えるのは苦手だけど記者になりたい、という学生は産経新聞に就職を希望した方がいいかもしれません。日本社会のモラルと引き換えに安定した収入にありつけることでしょう。仕事の内容は、オレオレ詐欺出し子みたいに上の方針にしたがうだけで何も考える必要のない簡単なお仕事です。

【緯度経度】
慰安婦像 沈黙は後退 ワシントン・古森義久
2013.8.3 10:57
 米国グレンデール市での慰安婦像の設置は日本の将来に禍根を残す出来事である。だがその過程では、米国を舞台とする慰安婦問題論議で地元の日本人社会の反対が初めて全米に知られることとなった。草の根で初めて表明された強い反対は、近くの市での同種の動きにすでに影響を及ぼし始めたようだ。
 グレンデールでは7月9日の市議会の公聴会で、証人27人のうち20人までが像の設置に明確な反対を述べた。大多数は同市内外に住む日本人男女だった。傍聴まで含むと同公聴会への参加は総数100人ほどだったが、うち7割が日本側で、反対の意を議事の合間にも明示したという。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130803/plc13080310570010-n1.htm

海外在住の人には、こういった極右によるあからさまな動員に参加するのも良い副収入になるかもしれません。「14歳の少女が自由意志で売春婦になっただけで、その少女を買っただけの日本軍に責任はない」と言った馬鹿げた主張が米国で受け入れられるかどうかは、すぐに帰国する予定の人や日本人社会内だけで生活する人には関係ありません。
欧米の、特に知識人層の間で、14歳の少女相手に買春する行為*1が容認されると本気で考えてるとすれば病的ですが、日本国内では少女売春事件に対して「売った方も罪に問え」という声が多数あるくらい性犯罪に対する理解が類人猿レベルにも到達していない日本人にはわからないでしょう。

 韓国や中国の意を体する勢力が超大国を利用して日本を攻めるという構図の米国での慰安婦問題は、河野談話の出た翌年の1994年ごろから始まった。米国の司法、行政、立法からメディア、学界までに働きかけた韓中ロビーは2007年、下院での日本非難決議を採択させた。最近は州や市のレベルでの決議や像設置を狙っている。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130803/plc13080310570010-n1.htm

慰安婦問題に関して言えば、日本側に抗弁の余地はありません。しかし日本が充分に謝罪し反省していれば、2007年の対日非難決議(下院決議121号)*2などは出なかったでしょう。実際、2006年にも同様の対日非難決議案(下院決議案759号)*3が提出されましたが、決議に至っていません。安倍氏産経新聞などの極右勢力が、慰安婦問題を否定し、開き直り、あまつさえ被害者に対する侮辱・二次強姦に加わり、あるいは煽った結果、2007年の下院では賛同者が増え決議に至ったのです。

 20年もの対日糾弾工作に対し、米国の公式の場で日本側が反論や反撃したことはまず皆無だった。グレンデール市での証言がその記録を破ったことになる。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130803/plc13080310570010-n1.htm

いくらやぶ蛇だったからといって、「The Facts」(2007年6月14日)や「Yes, We remember the facts.」(2012年11月4日)と言った日本右翼のプロパガンダや、2012年5月6日のパリセイズパーク市庁舎への日本右翼議員による恫喝を無かったことにするのはどうかと思いますね。

 この公聴会のすべてを傍聴した現地在住の今森貞夫氏が報告する。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130803/plc13080310570010-n1.htm

ここで先に指摘しておきますと、「現地在住の今森貞夫氏」もこの後出てくる「目良浩一氏(元ハーバード大学助教授)」も普通の民間人ではありません。「日本再生研究会(南カリフォルニア) 」*4と称する事実上の極右団体の理事長が目良浩一氏であり、今森貞夫氏はその会員であり、彼らは「マッカーサーの呪いから目覚めよ日本人」という極右プロパガンダ本を出版している活動家です。同書は桜井よしこ氏推薦ですので、日本の極右排外主義団体である国家基本問題研究所とのつながりもあるでしょう。

 「日本人証人たちは韓国側の慰安婦を性的奴隷と決め、日本の謝罪も賠償もすんでいないとする主張に対し、商業的な売春であり、国家間の清算がすんでいることを中心に反論しました。外国政府間の案件に米国の地方都市が関与することの不当性も強調しました」
 在米26年、経営コンサルタントの今森氏によると、証言した日本人はみな地元の米国社会のメンバーであり、大多数が永住権を持つ。ただし米国生まれの日系米人はいない。日本の政府はもちろん大企業の駐在員も留学生もおらず、文字どおり米国社会に根を下ろした日本人たちなのだという。
 公聴会後の市議の表決では慰安婦像設置が決まったが、日本人の証言は米メディアで幅広く報じられた。
 「反対派の証人は、慰安婦たちが志願した売春婦であり、性的奴隷ではなかったと述べた」(NBCテレビ)
 「証人の一人は日本軍が女性を強制連行したことはなく、米国の市が日韓問題にかかわるべきでないと主張した」(ロサンゼルス・タイムズ)
 「日本人の女性証人からは碑の設置は戦時の憎しみをあおりたて、子供たちに悪影響を残すだけだとの意見が出た」(NPRラジオ)
とくに地元の日系社会で読まれている「羅府新報」英語版は日本側の証人たちの名前をあげて、主張を詳しく紹介した。だが各メディアがみな報じたのは証人たちのリーダー格の目良浩一氏(元ハーバード大学助教授)の発言だった。「韓国側の慰安婦についての主張は捏造(ねつぞう)だ」とする同氏の証言はニュースの一部として幅広く報道された。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130803/plc13080310570010-n1.htm

いずれ劣らぬ慰安婦問題否認論で日本の恥をさらす言論です。「証人たちのリーダー格の目良浩一氏...の証言はニュースの一部として幅広く報道された」というのは例えば、ここを指しているのでしょう。もちろん好意的な報道ではありません。

 グレンデールでの動きは近くのブエナパーク市で2週間後に開かれた同種の公聴会にも余波を広げた。同市でも韓国系勢力慰安婦碑の設置を目指しているが、こちらの公聴会ではグレンデールでの激しい反対意見が提起され、審議にあたる市会議員5人のうち3人が設置反対に傾いてしまったというのだ。
 やはり米国での発言は欠かせない。黙っていれば、後退があるだけなのだ。
(ワシントン駐在客員特派員)

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130803/plc13080310570010-n1.htm

やっていることは集団で押しかけて圧力をかけるといったことに過ぎません。日本の極右団体から資金が出ていることも想像に難くありませんし、国家基本問題研究所のような公益法人格を取得している極右団体を経由して日本国の税金から資金が流れていることもあり得る話でしょう。機密費あたりを使えばまず足がつくことはありませんし、当分の間自民党政権が続くでしょうから不適切な機密費の流用があっても暴かれることはないでしょう。
古森氏が「ブエナパーク市での勝利」とばかりに勝ち誇って語っているのは、この件でしょうね。
“And Buena Park, Calif., is reconsidering plans to build a comfort women memorial after a spate of emails opposing the proposal.”

ちなみにこのNPRの記事は以下の文章で締めくくっています。

Japan and South Korea clash on many details about the history of comfort women. They're also at odds over Japan's responsibility to the victims. Japan did issue an apology 20 years ago, but many of its leaders have since tried to take it back.
Thomas Berger, a professor of international relations at Boston University, says some in Japan long to promote a positive image, even if that means revising the past.
There is a belief among many conservatives in Japan that history has been used as a tool against Japan, that Japan suffers not from too much patriotism, but too little, Berger says.
But the victims say they need that history to be accepted — and taught. There are only 58 "halmonies" like Ok-seon Lee left. And like Lee, many are still traveling and speaking out.
Why didn't I die? Why am I alive? I lived for this long, and that's why I can at least say something about this, Lee says. "But think of what sorrows the other women must have died with. We need to speak for them, too."
But Ok-seon Lee can't do this forever. She hopes monuments like the one in Glendale will be around to tell this story when she and the other women can't.

http://www.npr.org/2013/07/29/206655160/statue-brings-friction-over-wwii-comfort-women-to-california

*1:売春に至った経緯に関係なく、非難に値します。まして人身売買の被害者であり、かつ日本兵用として日本軍に管理されていれば、最大級に非難されて当然です。そしてそれを反省するどころか開き直るようでは、過去の問題として済まされないのも当然です。

*2:http://ameblo.jp/scopedog/entry-10031011920.html

*3:http://ameblo.jp/scopedog/entry-10031010639.html

*4:https://sites.google.com/a/japansrebirth-sc.org/www/