日本政府が安重根を「犯罪者」と評価するのはかなり不当

韓国が中国と協議してハルビン安重根銅像を建てようとしている件について、まあ、はなっから誹謗しかしない嫌韓バカはともかく、“それぞれの国で評価が違うのは当然”“韓国から見たら英雄、日本から見たら犯罪者でいいだろ”的な評価が散見されるのが何だかなぁという感じです。
まあ、個人的な好悪は別にいいんですけど、国としての態度を考える場合は“韓国から見たら英雄、日本から見たら犯罪者”という見方は問題があります。

“それぞれの国で評価が違うのは当然”というは一般論としては、その通りですが、日本の場合は政府として以下の立場を表明しています。

村山談話 1995/8/15)
わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/07/dmu_0815.html

(小泉談話 2005/8/15)
また、我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明するとともに、先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します。悲惨な戦争の教訓を風化させず、二度と戦火を交えることなく世界の平和と繁栄に貢献していく決意です。

http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2005/08/15danwa.html

つまり、日本は政府として、植民地支配によって多大の損害と苦痛を与えたことを認めているわけです。一言で言えば植民地支配は間違っていたと認めているわけですね。この見解に立つと、植民地化に抵抗した安重根を日本政府が「犯罪者」と評価するのは、かなり不当な評価だと言えます。
日本政府自らが誤りだったと認めている植民地化に抵抗した安重根を日本政府が「犯罪者」と評価しているわけですから、普通に考えておかしな話です。
もちろん、言葉の上だけで考えるなら、日本政府の考えは“法的には「犯罪者」だが、植民地支配を正当化するものではない”という解釈もできます。しかし、従軍慰安婦問題に関する類似するやり取りにおいて「慰安婦制度は合法だった」と発言した稲田大臣は「合法であったという言い方をすると、人権侵害ではないというふうに誤解されると私は思うので、今であろうとも戦時中であろうとも、女性の人権に対する重大な侵害であることには変わりがない」*1と述べていることを踏まえれば、日本政府が安重根を「犯罪者」と評価することは植民地支配を正当化していると解釈されてもやむを得ないところでしょう。
誰しもが腹の中で思っていることでしょうが、安倍政権は植民地支配を正当化したいと考えている歴史修正主義政権ですので、“法的には「犯罪者」だが、植民地支配を正当化するものではない”などと自ら訂正したりは絶対にしないでしょうね。

要点

伊藤博文自身がテロ行為を行っていた過去があるわけですが、今回の場合、日本政府のスポークスマンである菅官房長官がこれまでの日本政府の公式表明に反する評価を垂れ流しているという点がやはり重要だと思います。日本政府はこれまで何度も植民地支配を反省してきたはずだけど、それは嘘だったの?これまでの発言と矛盾する官房長官発言は政治・外交の一貫性を損なうんじゃないの?という指摘がもっとあるべきだと思います。
安倍政権が日本の植民地支配や侵略を正当化しようとしている、という評価については現状既に当たり前すぎて皆麻痺しているのかも知れませんけど、過去の日本政府公式見解から外れる発言を堂々とやって何の指摘も受けない状況はさすがに気味が悪いので記事にしました。

*1:ttp://www.cao.go.jp/minister/1212_t_inada/kaiken/2013/0524kaiken.html