1992年8月14日放送NHK「調査報告 アジアからの訴え〜問われる日本の戦後処理〜」の一部のテキスト化

(514) 92.08.14 調査報告 アジアからの訴え〜問われる日本の戦後処理〜
アーカイブにはなってないようなので、古いVHSのビデオを整理していて出てきた動画から一部紹介しておきます。

(冒頭)
アジア各地の人々が日本を訴えています。戦争中
日本によって犠牲になった人々の補償を求める訴えです。
今年既に五件の訴訟が起こされ、補償要求運動も相次いでいます。

東条英機演説)
インドネシア人も華僑も印度人もその他大東亜の諸地域にある各住民は悉く一大家族であります。


NHKの調査によって確認されたアジア各地からの日本に対する訴訟や補償要求運動です。

サハリン
残留韓国・朝鮮人補償訴訟

中国
民間賠償1800億ドル要求
花岡事件犠牲者補償要求
731部隊犠牲者遺族補償要求
三池炭鉱元労働者補償要求

韓国
元軍人・軍属・従軍慰安婦補償訴訟
光州千人訴訟
長崎被爆者補償訴訟
浮島丸犠牲者補償要求
3・1独立運動犠牲者補償要求
日本鋼管元徴用者補償訴訟
三菱重工元徴用者未払い賃金要求
日本製鉄元徴用者未払い賃金要求

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在日韓国人元軍属補償訴訟
韓国人元BC級戦犯補償訴訟

台湾
元日本軍兵士補償要求
貯金及び未払い賃金返還要求
従軍慰安婦の調査

香港
軍票に対する補償要求

マレーシア
泰緬鉄道元労働者の賃金支払い要求
虐殺された遺族の補償要求

インドネシア
元兵補の積立て貯金返還要求

フィリピン
従軍慰安婦の調査

パラオ
元挺身隊員の遺骨返還要求

九つの国や地域から合わせて26件に上っています。
日本のアジアに対する戦後処理はこれまで北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国を除いて全て解決済みとされてきました。
アジアの人々は今、日本に何を訴えようとしているのでしょうか。


ご覧のように太平洋戦争の舞台となったアジアの各地で実に様々な動きが起きていますけれども、その中でも最も最近クローズアップされているのが従軍慰安婦の問題です。
日本政府も国が関与して朝鮮半島を初め中国や台湾、フィリピンなどで慰安婦が集められていたという事実を先月になってようやく認めて補償を求める動きも広がってきています。

韓国

(佐藤俊行)
日本と韓国の関係が真に友好的な関係になるのを阻害する要因の一つが従軍慰安婦問題です。
去年12月、三人の従軍慰安婦が東京で初めて訴訟を起こし、この問題が公のものとなりました。
韓国の関係者が怒るのは、最初、資料がないとして軍の関与を否定した日本政府が、新しい資料が出るたびに態度を変えたためです。
現在、日本政府は国の関与を認めてはいますが、動員にあたって強制を裏付ける資料は見つからなかったという立場を取っています。
韓国政府は先月、日本の資料と慰安婦の証言を基に中間報告を発表しましたが、動員は朝鮮総督府による強制的なものだったと、日本政府の主張に真っ向から反論しています。慰安婦問題は反文明的な蛮行だった、と公式文書には珍しい感情的な表現も目立ちました。

(韓国政府外務省アジア局 キム・ソクウ局長*1
慰安婦は強制的か、それに近い形で集められました。
調査結果をうけて日本政府に誠意ある対応を求めます。

フィリピン

(山田建)
フィリピンでも慰安婦の存在が明らかになり、市民団体が独自の調査を始めました。
(1992年6月10日の日本大使館前のデモの様子が流れる)

6月、日本大使館前で行われた集会では、元慰安婦への謝罪と補償を訴えました。
フィリピン政府はこれまでの調査で、強制的に慰安婦にされたケースは見当たらない、として外交問題にはしない方針です。
しかし、市民団体は今後の独自調査の結果次第では日本政府に補償を求める集団訴訟を起こすことも検討しています。

なお、フィリピンのデモで掲げられているプラカードは、慰安婦問題だけでなく、ジャパゆきや日本人のセックス・ツアーの問題をも取り上げています。ガブリエラはフィリピンの各種女性団体の統合組織*2で、当時、慰安婦問題を含めた女性の権利問題に取り組んでいました。

*1:韓国政府外務部亜洲局長 金錫友。挺身隊問題実務対策班長。

*2:http://repo.lib.hosei.ac.jp/bitstream/10114/3787/1/kyoyo79_nakasima_na.pdf