秘密保護法廃案要求を足蹴にした安倍政権とは違う選択を求めたい

この件ですよ。

韓国大統領の行動のあいまいさ「公益に関わる」

読売新聞 9月9日(火)18時52分配信
 【パリ=三井美奈】産経新聞のソウル支局長がコラムで韓国の朴槿恵(パククネ)大統領の名誉を毀損(きそん)したとして韓国検察に聴取された問題で、ジャーナリストの国際団体「国境なき記者団」(本部・パリ)は8日、韓国当局の対応を批判し、支局長に対する刑事手続きの取り下げを求める声明を発表した。
 声明は「報道機関が政治家の行動に疑問を持つのは当然。国家的惨事(4月の旅客船沈没事故)さなかの大統領の行動のあいまいさは公益に関わる問題だ」と主張。コラムが引用した韓国紙の情報は「インターネット上に載っており、告発対象にもなっていない」と指摘した上で、支局長に対する出国禁止措置も解除するよう求めた。
最終更新:9月9日(火)18時52分

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140909-00050163-yom-int

これ形式的には韓国内の極右団体が告発したのであって青瓦台が告訴したわけではありません。ですので、他のメディアも報道しているという指摘も、池上彰流に「他社を引き合いに出すのは潔くありません」*1ということになります。同じ報道をしたとしても、どのメディアを告発するかはその極右団体の判断でしかなく、別に青瓦台が決めたわけではない、とまあ、形式的にはそうなるわけです。
それに以下のような報道も見ると、他紙の引用だけというわけでもなさそうです。

加藤支局長は18日と20日の2回の調査で、「朝鮮日報の記名コラムと証券街の情報誌を引用した」と主張した。しかし該当コラムに出てこない朴大統領の私生活およびチェ・テミン牧師疑惑関連の表現に対する具体的な根拠を提示できなかった。

http://japanese.joins.com/article/288/189288.html

さらに言えば、大統領に対する侮辱以外に大統領と接触したと噂を流された相手に対する侮辱であることも否定できず、その当人が「加藤支局長を強く処罰してほしい」*2と要請していることは、その噂が否定されたことも踏まえるとないがしろにはできないでしょう。通常の司法手続きに則る限り、起訴されて当然と言える事案ではあります。

しかしながら、権力者が絡む場合は当然とは言いがたいわけです。
司法手続き上の瑕疵が無いとしても、大統領が自身を侮辱した報道機関*3刑事罰を科そうとしている、という形態になる以上、そこには最大限の慎重さが求められます。権力者は一般人とは違う制約がなされるべきということですね。
「私人としての行為」だという言い逃れが平気で通用するどこかの国を真似るべきではありません。権力者は自らを律する誠実さを国民に対して示す必要があります。

また、これが外国の報道機関であるということも重要な点です。
外交上の問題となることを避けることもまた政府の責任ではあり、国内法の筋だけ通せばいいというわけではありません。殺人などの重大な犯罪を見逃すわけにはいかないでしょうが、軽微なものであれば見逃すというのも現実的外交のためには必要な選択でしょう。領有権で争いのある海域での衝突事件に対し、逮捕だ起訴だ筋を通せと騒ぎ立て外交関係を著しく悪化させたどこかの国を真似るべきではありません。
国の責任者は教条的になってはならないのです。

さらに言えば、たとえ形式的には極右団体の告発であり青瓦台とは関係なくとも、極右団体が青瓦台の意を受けて告発したであろうというのは誰が見てもわかります。ただ、それを法的に証明できないだけに過ぎません。日本で排外主義団体が行っているヘイトスピーチが誰の意を汲んでいるか、誰でも知っているのと同じことです。

法的に証明さえされなければ何やっても構わないというのは、少なくとも政治指導者がやるべきことではありません。ただ冠を直したに過ぎないにしても、それが李下であれば責任を取るのが政治指導者のあるべき姿でしょう。
市民の政治活動を締め付ける一方で政治指導者には過剰な信教の自由を認めるどこぞの国の風潮をうらやんではいけません。

さて。
国境なき記者団はかつて秘密保護法を廃案にするよう安倍政権に求めました。

Reporters Without Borders deplores the lower house of the Japanese parliament’s adoption yesterday of a “special intelligence protection bill” that would pose an unprecedented threat to freedom of information, and calls on Prime Minister Shinzo Abe’s government to abandon the proposed law.

http://en.rsf.org/japan-prime-minister-shinzo-abe-urged-to-27-11-2013,45515.html

安倍政権が国境なき記者団の要望に答えたかどうかは周知のとおりです。

朴政権には安倍政権と同じ選択をしないように求めたいものです。

*1:http://www.asahi.com/articles/DA3S11332230.html

*2:http://japanese.joins.com/article/288/189288.html

*3:まあ、産経が報道機関の名に値するかはともかくとして。