“「強制性」がなかったことを否定できない”というのが共通認識ならいいんですけどね

少しは認識を改められればいいんですけどね。

いくつか指摘しておきます。

指摘1

慰安婦制度」は、たとえ官憲による強制がなかったとしても、不本意ながら涙を流している元慰安婦の方が存在していることは、「強制性」がなかったことを否定はできません。このことはアンチ慰安婦問題の方々も、概ね共通認識だと理解しています。

http://naokis.doorblog.jp/archives/ianfu_issue.html

まず、この理解は甘いといわざるを得ません。せめてこれが共通認識であれば何ぼかマシです。
2012年5月に自民党竹本直一古屋圭司衆院議員と山谷えり子塚田一郎参院議員の四人がニュージャージー州パリセイズパーク市に行って、慰安婦像を撤去するよう市長に圧力をかけたことがありますが、その時に彼等4人が主張した内容というのが、以下のように報道されています。

“Their purpose was to have us pretty much remove it,” he said on Wednesday as he stood in front of the library. “Regardless of whatever else they said their main goal was, to come here to think we would be intimidated to take it away, and we are not.” Rotundo said during a three-hour meeting last Sunday with town officials, the four Japanese legislators disputed the number of comfort women and claimed that they willingly served the soldiers.

http://www.northjersey.com/news/immigration/051012_Palisades_Park_ceremony_remembers_comfort_women.html
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20120512/1336846498

「they willingly served the soldiers」ですよ。「不本意ながら涙を流している元慰安婦の方が存在していること」すらこれら4人の自民党議員は認めていないわけで、それがアメリカで報道されているわけです。ネット上での多くの「アンチ慰安婦問題の方々」も「不本意ながら涙を流している元慰安婦の方が存在していること」を理解していたら、売春婦だの嘘つきだのと言った暴言は吐かないでしょう。

指摘2

「日本軍による強制」と「強制性」。8月5日の朝日新聞では前者を誤報であったことを認めて取り下げましたが、後者は「広い意味での強制性があった」と9月12日の紙面でも繰り返し述べています。日本国内ではこれを「朝日新聞の論理のすり替え」と憤る声が大きいですが、果たしてそうなのか?ということが疑問に感じるようになりました。
国連で人権問題が重要なアジェンダになったこと、国連では性的奴隷は「軍による強制」という狭い範囲ではなく広い意味での「強制性」と捉えていることなどを考慮すると、どうも朝日新聞の主張は国連アジェンダと一致しているように見えてきました。

http://naokis.doorblog.jp/archives/ianfu_issue.html

「どうも朝日新聞の主張は国連アジェンダと一致しているように見えてきました」というのは、少しは歪んだ認識を訂正できてきたのかと思えますが、「日本軍による強制」と「強制性」という表現はちょっとおかしいですね。後者の表現はまるで日本軍が全く関与していないかのように読めます。厳密に言うなら、「朝鮮半島における日本軍による直接的な強制連行」と「日本軍管理下での強制性」と言った方が良いでしょう。
それでもまあ、「どうも朝日新聞の主張は国連アジェンダと一致しているように見えてきました」というのは一歩前進として評価したいです。

指摘3

「民間業者がやったことだから、日本軍・日本政府の責任はない」という声があります。私もそう思います。「民間業者の中には韓国人もいたのではないか。韓国人も非難されるべきではないか?」という声もあります。私もそう思います。しかし、英語圏では「日本軍による強制」が論点になっていない以上、日本人がこの主張を繰り返すことは徒労に終わるだけでなく、開き直りと取られかねません。

http://naokis.doorblog.jp/archives/ianfu_issue.html

日本軍と全く関係の無いところで民間業者が売春強要したわけじゃなく、日本軍の要請により日本軍管理下での売春婦を民間業者に集めさせたわけですから、「日本軍・日本政府の責任はない」ということ自体ありえないわけですが、とりあえず、指摘1、指摘2をクリアしてもらいたいところです。
さらに言えば、当時の売春婦自体、詐欺や誘拐で集められることがあり性奴隷的な立場にあったことは周知の事実であり、それを防止する実効的な対策なしに日本軍管理下で漫然と慰安婦制度を運用したこと自体、軍政府が主導した性奴隷であるとしか言いようがありませんが、指摘1、指摘2が理解できなければ、これも理解できないでしょうから、とりあえずは置いておきます。

指摘4

もし、田淵さんに非があるとすれば、日本人が性的奴隷の意味を理解していないのに、性的奴隷という言葉を多用し、結果的に反感を招いている点です。もし、日本人の理解不足を知らなかったのであれば、説明を心がけてはいかがでしょうか?

http://naokis.doorblog.jp/archives/ianfu_issue.html

「もし、田淵さんに非があるとすれば」という留保があるものの、「日本人の理解不足」などと勝手に日本人を代表されるのもどうかと思いますし、そういった説明自体、何度もされてきたのに否認論者が受け入れなかったわけですから、さすがに説明責任を相手に押し付けすぎだと思います。