期待通りの展開

そりゃ「裏合意」を守るつもりはないだろうね、という。

韓国閣僚、国連委員会で慰安婦を「性奴隷」 日本は抗議

2/23(金) 11:26配信 朝日新聞デジタル
 国連の女子差別撤廃委員会で22日、韓国政府代表団の鄭鉉栢(チョンヒョンベク)・女性家族相が旧日本軍の慰安婦について「性奴隷」との表現を使ったため、日本政府は同日、韓国側に抗議した。
 鄭氏は韓国の人権状況に関する審査で、慰安婦問題に関する委員からの質問に答え、「慰安婦または性奴隷」との表現を使った。日本政府は「『性奴隷』といった表現は事実に反する」との立場をとっている。
 河野太郎外相は23日午前の閣議後会見で、「(2015年の)日韓合意で韓国側と確認していたにもかかわらず(「性奴隷」を)使用したことは、受け入れられず極めて遺憾」と述べた。
 外務省によると、スイス・ジュネーブで22日開かれた委員会では、鄭氏は慰安婦研究所の設立計画があると委員に説明し、「慰安婦や性奴隷について資料を集めている」「性奴隷の女性たちのつらい経験を記憶する」などと少なくとも計3回、「性奴隷」という言葉を使ったという。
 政府は日韓合意で「性奴隷」という言葉は事実に反するので使用すべきではないと韓国側と確認していた、としている。河野氏は会見で「日韓合意を着実に履行してもらいたいというのが我が国の立場だ」と語った。(ジュネーブ=松尾一郎)
朝日新聞社

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180223-00000036-asahi-pol

日本側の希望で非公開にした裏合意中の「性奴隷表現使うな」ですが、非公開の“合意”を政権が代わっても守ってくれると思ってたならおめでたい知能としか言いようがありませんね。国民や国際社会に隠さなければならないと日本政府が思うほど、後ろめたい要求であったわけで、そんな“裏合意”を反故にして文政権が「性奴隷」表現を使ったとしても、日本の発狂に国際社会が同調してくれたりはしないでしょう。
実際、私が「前途多難な安倍政権」で示したように、海外報道では“性奴隷”表現が一般的です。
JapanTimesに至っては、“性奴隷表現を使うな”と恫喝する安倍政権に対して以下のように言い返しています。

It is the policy of The Japan Times that “sex slaves” is acceptable for referring to the women who were forced to provide sex for Japanese troops before and during World War II.

http://www.japantimes.co.jp/news/2016/01/18/national/politics-diplomacy/japans-foreign-minister-challenges-use-of-sex-slaves-term-for-comfort-women/
http://scopedog.hatenablog.com/entry/20160130/1454172308

さて、2018年1月に文政権が日韓政府間合意について破棄も再交渉もしないと公式に宣言しましたが、これはこれでほぼ予想の範囲でしたし、私としては期待した結果でもありました*1
一方で“裏合意”部分については、以下のような意見を2018年1月1日に書きました。

で、裏合意が存在するのならば、それは「民主的に選ばれた日韓両首脳の下」での非民主的な合意に他なりませんし、「国際社会からも高く評価された」というのも裏合意を隠した上での錯誤による評価でしかありませんね。
韓国政府としては、裏合意部分については堂々と破棄を宣言できるでしょうし、宣言も履行もしないという選択肢もあります。
個人的に韓国政府に期待したいのは、裏合意部分について堂々と反故にして、海外での慰安婦碑設置を支援したり、公式に「性奴隷」表現を使うようにしたり、ソウルの少女像の適切な解決案として移転・撤去以外の案を日本側に示したりすることですね。
そして、日本側の反応を見てればいいのに、と。

http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/01/01/233000

今回「公式に「性奴隷」表現を使うようにしたり」という期待に応えてくれたわけで、当然私としては歓迎です。それに対する日本政府の反応もわかりやすいもので、外相が抗議すると言う笑える展開。

 河野太郎外相は23日午前の閣議後会見で、「(2015年の)日韓合意で韓国側と確認していたにもかかわらず(「性奴隷」を)使用したことは、受け入れられず極めて遺憾」と述べた。
 外務省によると、スイス・ジュネーブで22日開かれた委員会では、鄭氏は慰安婦研究所の設立計画があると委員に説明し、「慰安婦や性奴隷について資料を集めている」「性奴隷の女性たちのつらい経験を記憶する」などと少なくとも計3回、「性奴隷」という言葉を使ったという。
 政府は日韓合意で「性奴隷」という言葉は事実に反するので使用すべきではないと韓国側と確認していた、としている。河野氏は会見で「日韓合意を着実に履行してもらいたいというのが我が国の立場だ」と語った。(ジュネーブ=松尾一郎)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180223-00000036-asahi-pol

もう完全に“「性奴隷」表現使うな”という裏合意をしました、と日本政府が認めた形になりましたね。韓国TFの公表結果を否定しないと形で事実上認めてはいましたが*2、今回は“裏合意”の個別の内容について合意したと認めちゃってます。慰安婦問題に関して野党やメディアが正常に機能しているなら、なぜ“裏合意”としたのかと政権追及できる話ですが、今の日本では無理でしょうねぇ。

文政権としては事実上“裏合意”を反故というか正当性を認めないというか、そういう対応をとったと基本的には言っていいでしょうね。鄭女家相のスタンドプレーでない限りは。
ただ厳密に言うと、“裏合意”中でも韓国政府(朴政権)は「性奴隷」表現を使わないと合意したわけじゃないんですよね。

 一、日本側は(略)(3)韓国政府は今後、「性奴隷」という単語を使用しないよう希望する-と指摘した。
 一、これに対し、韓国側は(略)(3)問題の公式名称は「日本軍慰安婦被害者問題」のみであることを改めて確認する-と応じた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180223-00000036-asahi-pol

これが「性奴隷」表現に関する“裏合意”の内容です。「性奴隷」表現を使うなと求める日本政府に対して、韓国政府は承諾も同意もせず「問題の公式名称は「日本軍慰安婦被害者問題」のみであること」を確認しただけです。韓国政府として「性奴隷」表現は使わないなどとは約束していませんね。公式名称以外を使ってはならないなんて不文律は存在しませんし、実際日本政府もソウルの日本大使館前の「少女像」を慰安婦像と呼んだりして、2018年2月2日には「慰安婦像という呼称に統一せよ」という馬鹿げた外務省指示を出してもいます*3。韓国政府が呼称を変更したとしても、日本政府が文句を言う筋合いもありません。

簡単に言うと、
日本政府「“性奴隷”と呼ぶなっていったじゃないかぁ!」
韓国政府「別に呼ばないと約束してないんだけど?」
っていう展開です。

そして韓国外交部の反論は「公式名称は「日本軍慰安婦被害者問題」のみ」だというつつ、「性奴隷」表現は使わないなどという合意は存在しないかのように「政府は慰安婦被害者の名誉と尊厳を回復し、問題を歴史的な教訓として残すため努力している」として、「女性家族部長官の発言はこうした脈絡から行われたと理解している」と回答しています。

閣僚が「性奴隷」発言 公式名称は「日本軍慰安婦被害者」=韓国外交部

2/23(金) 16:32配信 聯合ニュース
【ソウル聯合ニュース】スイス・ジュネーブで22日に開かれた国連の女性差別撤廃委員会で、韓国の鄭鉉栢(チョン・ヒョンベク)女性家族部長官が旧日本軍の慰安婦問題に言及し「性奴隷」の言葉を使ったことに日本側が抗議したことについて、韓国外交部の当局者は「政府は慰安婦被害者の名誉と尊厳を回復し、問題を歴史的な教訓として残すため努力している」として、「女性家族部長官の発言はこうした脈絡から行われたと理解している」と述べた。
 また、今後、「性奴隷」との表現が韓国政府の公式名称になるかを記者に問われると、「この問題に関する政府の公式名称は『日本軍慰安婦被害者』であり、国内の関連法でも同様の名称を使用している」と説明した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180223-00000049-yonh-kr

この辺、上手いなぁと思います。
韓国政府「韓国政府は日韓合意を履行していますけど何か?」
っていう感じですね。

「「『性奴隷』といった表現は事実に反する」との立場」なんか日本以外で通用しない

 鄭氏は韓国の人権状況に関する審査で、慰安婦問題に関する委員からの質問に答え、「慰安婦または性奴隷」との表現を使った。日本政府は「『性奴隷』といった表現は事実に反する」との立場をとっている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180223-00000036-asahi-pol

「日本政府は」と書いてはいますが、“朝日新聞”としてはどうなんですかねぇ*4

韓国政府が慰安婦問題に言及する際に「性奴隷」表現を使っても発狂するのは日本政府だけで、それ以外の国はなぜ日本が発狂しているのかも理解しないでしょうね。
むしろ、日本が発狂すればするほど、韓国は日韓合意を破棄も再交渉もしないと言っているのに日本は何を怒っているのか?と疑問に思うでしょうし、あまりに発狂具合が度を過ぎれば、“日本疲れ”を起こすでしょう。
河野外相は順調にその下準備をしているようですので、私としては少し様子見したいところですね。

補足

ああ、あと「性奴隷」表現が、「(3)韓国政府は,今般日本政府の表明した措置が着実に実施されるとの前提で,日本政府と共に,今後,国連等国際社会において,本問題について互いに非難・批判することは控える。」*5に違反するという指摘もあるようですが、「性奴隷」表現は単なる事実の指摘にすぎず、その単語自体が日本批判の意味を持ったりはしません。念のため。




韓国閣僚の「性奴隷」発言 「受け入れがたい」と外務省抗議 国連委員会で

2/23(金) 8:24配信 産経新聞
 【ジュネーブ=三井美奈】国連の女子差別撤廃委員会で22日、韓国の鄭鉉栢(チョンヒョンベク)女性家族相が慰安婦問題で「性奴隷」という表現を使ったことについて、日本の外務省は同日、「受け入れがたく、非常に遺憾」だとする声明を発表した。
 委員会は国連欧州本部で行われ、韓国の女性政策を審査した。政府代表の鄭氏は答弁で、政府が仮称「慰安婦研究所」を今年8月にも設立する計画だと明かし、「慰安婦や『性奴隷』について、資料を集めている」と述べた。
 外務省の声明は、慰安婦問題は2015年の日韓合意で決着済みだとして、「『性奴隷』の表現は事実に反する。使うべきではない」と主張。合意が「国連や国際社会で互いに批判をしない」と定めていることを指摘し、韓国政府に誠実な履行を求めた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180223-00000517-san-int

河野太郎外相「極めて遺憾」 国連女子差別撤廃委で韓国代表団「性奴隷」

2/23(金) 10:38配信 産経新聞
 河野太郎外相は23日午前の閣議後会見で、国連の女子差別撤廃委員会で、韓国の鄭鉉栢(チョン・ヒョンベク)女性家族相が慰安婦問題で「性奴隷」という表現を使ったことを「日本として受け入れられず極めて遺憾だ」と批判した。
 また、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相が26日からの国連人権理事会で、慰安婦問題に言及する意向を示していることについて、「(日韓首脳会談で)文在寅(ムン・ジェイン)大統領から安倍晋三首相にこの合意について(「再交渉は求めない」という)言及があった」と指摘した。
 その上で「日本は誠意を持って(合意を)履行している。韓国も同様のことをやってくれると期待している」と強調した。
 一方、世界貿易機関WTO)の紛争処理小委員会が韓国による日本の水産物輸入規制を「不当」と認めて是正を勧告する報告書を公表したことについて、「日本の主張がしっかり受け入れられた」と歓迎。「勧告に基づき、韓国はすみやかな対応をとっていただきたい」とも述べた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180223-00000532-san-pol

*1:http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/02/18/100000

*2:http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/01/01/233000

*3:https://mainichi.jp/articles/20170203/k00/00m/030/030000c

*4:朝日記事中に「鄭氏は韓国の人権状況に関する審査で、慰安婦問題に関する委員からの質問に答え、「慰安婦または性奴隷」との表現を使った」という表現があるのですが、これ鄭鉉栢女性家族相の発言が英語だったとすると多分、“comfort women or sex slave”という発言だったと思うんですが、この場合の“or”なら、「または」ではなく「すなわち」という意味ではないかなぁ、というちょっとした感想。

*5:http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page4_001664.html