またまた修正されていたり

さすがに国際社会との認識のずれに気付く人も出てきたようですね。
何か訂正されていた。
また、修正されていました。
いやまあ、修正すること自体は別にいいんですが、論旨に影響する場合は特に修正箇所を明示すべきだと思うんですよ。

修正箇所1

(2014年9月閲覧)
たったこれだけである。そして全体としては公文書や信頼性のある文書を得られなかったので、この特別報告書は元従軍慰安婦の女性による告白を主な根拠として書いたものである、とハッキリ記されていた。つまり吉田証言の影響なんて殆ど全くといっていいくらい関係なかったのだ。したがって朝日新聞誤報しようが訂正しようが海外メディアにとってはどうでもいいことだったのだ。僕としたことがなんたる大きな勘違いをしていたのだろう。

http://ysugie.com/archives/3315

最初に確認した上記記述は、論旨としては非常にすっきりしています。クマラスワミ報告は主として元慰安婦による告白を根拠としていること、吉田証言の影響はほとんどないこと、吉田証言に関する朝日新聞の訂正など海外メディアにとってどうでもよかったこと、が文脈としてもわかりやすく書かれています。

(2014年11月閲覧)
たったこれだけである。そして全体としては公文書や信頼性のある文書を得られなかったので、この特別報告書は元従軍慰安婦の女性による告白を主な根拠として書いたものである、とハッキリ記されていた。この女性はいずれにしてもこの偽報告書を作るつもりでいた。つまり吉田証言の影響なんて殆どといっていいくらい関係なかったのだ。したがって朝日新聞誤報しようが訂正しようが海外メディアにとってはどうでもいいことだったのだ。僕としたことがなんたる大きな勘違いをしていたのだろう。

http://ysugie.com/archives/3315

次に確認した時には「この女性はいずれにしてもこの偽報告書を作るつもりでいた」という悪意ある一文が挿入されていました。これで文脈が乱れます。

(2015年1月閲覧)
たったこれだけである。そして全体としては公文書や信頼性のある文書を得られなかったので、この特別報告書は元従軍慰安婦の女性による告白を主な根拠として書いたものである、とハッキリ記されていた。この女性はいずれにしてもこの報告書を作るつもりでいた。つまり吉田証言の影響なんて殆どといっていいくらい関係なかったのだ。したがって朝日新聞誤報しようが訂正しようが海外メディアにとってはどうでもいいことだったのだ。僕としたことがなんたる大きな勘違いをしていたのだろう。

http://ysugie.com/archives/3315

で今度は「偽報告書」から「報告書」に変わっています。まあこの点はマシになったと言っていいでしょう。ただし当初の記述から違和感ある一文が挿入されて文脈としては乱れているとは思いますが。

修正箇所2

(2014年9月閲覧)
朝日新聞が捏造に近い誤報をし、それを32年間も訂正せず、世論を大きくミスリードしてきた罪は極めて重いという僕の基本的な認識には変わりはない。河野談話が作成された時期は末期宮沢内閣で、自民党が結党以来初めて政権の座を奪われて下野するという、いわば死に体状態になっていた時であるというのも偶然ではないと思っている。次期首相は社会党の村山である。そのタイミングで慰安婦問題をあおったのも朝日新聞の計算であり、それも気に入らない。

http://ysugie.com/archives/3315

これが最初の記述です。「次期首相は社会党の村山である。」と言うのは明らかな誤りです。吉田証言の報道も1982・1983年頃で、自民政権が退陣する1993年とは大きく離れています。ただし、事実誤認部分が正しいと仮定するなら、文脈としては理解しやすい流れになっています。

(2014年11月閲覧)
朝日新聞が捏造に近い誤報をし、それを32年間も訂正せず、世論を大きくミスリードしてきた罪は極めて重いという僕の基本的な認識には変わりはない。たった2行とはいえ唯一の加害者側証言として引用元の吉田氏の著作は偽報告書に影響を与えているのだ。また河野談話が作成された時期は末期宮沢内閣で、自民党が結党以来初めて政権の座を奪われて下野するという、いわば死に体状態になっていた時であるというのも偶然ではないと思っている。

http://ysugie.com/archives/3315

次に確認した時にはこう変わっています。「次期首相は社会党の村山である。」は削除され、「たった2行とはいえ唯一の加害者側証言として引用元の吉田氏の著作は偽報告書に影響を与えているのだ。」という一文が追加されました。しかし、記事全体の文脈としてはおかしくなっており、「吉田証言の影響なんて殆どといっていいくらい関係なかった」と自分で言っているにもかかわらず、「吉田氏の著作は偽報告書に影響を与えている」という矛盾が生じてさせています。杉江氏自身の内部で論点整理ができていないことをうかがわせます。
また、吉田証言の報道と、自民政権退陣の時期的乖離が解決されていません。

(2015年1月閲覧)
朝日新聞が捏造に近い誤報をし、それを32年間も訂正せず、世論を大きくミスリードしてきた罪は極めて重いという僕の基本的な認識には変わりはない。たった2行とはいえ唯一の加害者側証言として引用元の吉田氏の著作は報告書に影響を与えているのだ。

http://ysugie.com/archives/3315

最新の記述では、吉田証言の報道と自民政権退陣の時期的乖離を解決するためか、その部分をばっさりカットしています。
引用部分だけを見れば文脈もまあ理解可能ですが、記事全体では、「吉田証言の影響なんて殆どといっていいくらい関係なかった」と「吉田氏の著作は報告書に影響を与えている」という矛盾が解決されていません。

そもそも杉江氏の記事の要点は「朝日新聞誤報=日本の名誉を国際社会で傷つけた原因」は間違いだという指摘のはず

杉江氏自身、最後にこう書いています。

ただ巷で一部の人が最近さわいでいる「朝日新聞誤報=日本の名誉を国際社会で傷つけた原因」というまことしやかな説だけは、大きな勘違いであることを今日ハッキリと確認したのであった。

http://ysugie.com/archives/3315

そして対応する冒頭ではこう書いています。

僕はてっきり従軍慰安婦問題で日本の国際的評価を悪くしている、国連のクマラスワミ報告書なるものが、例の朝日新聞の吉田証言をめぐる誤報をもとに作成されたと今まで思い込んでいた。読売新聞や産経新聞、おまけに管官房長官安倍総理までそれっぽいことを言っているので、そう感じてしまうのも無理はない。

http://ysugie.com/archives/3315

朝日新聞が報じた吉田証言をもとにクマラスワミ報告書が作成された、と思っていたが、それは間違いであった。なぜならば、吉田証言はクマラスワミ報告にほとんど影響を与えていないからだ、とそういう記事構成になっているわけです。
だとすると、今も残るこの記述は、全体的な記事の流れに矛盾します。

(2015年1月閲覧)
朝日新聞が捏造に近い誤報をし、それを32年間も訂正せず、世論を大きくミスリードしてきた罪は極めて重いという僕の基本的な認識には変わりはない。たった2行とはいえ唯一の加害者側証言として引用元の吉田氏の著作は報告書に影響を与えているのだ。

http://ysugie.com/archives/3315

この引用部分どおり「吉田氏の著作は報告書に影響を与えている」と杉江氏が認識しているのなら、「「朝日新聞誤報=日本の名誉を国際社会で傷つけた原因」というまことしやかな説だけは、大きな勘違いである」とは言えないはずです。
しかし、記事タイトルが「クマラスワミ報告書の全文を読んでみたら、大きな勘違いに気づいた」ではその結論を訂正も出来ないのかもしれませんね。

残念な点

僕はてっきり従軍慰安婦問題で日本の国際的評価を悪くしている、国連のクマラスワミ報告書なるものが、例の朝日新聞の吉田証言をめぐる誤報をもとに作成されたと今まで思い込んでいた。読売新聞や産経新聞、おまけに管官房長官安倍総理までそれっぽいことを言っているので、そう感じてしまうのも無理はない。

http://ysugie.com/archives/3315

最初にこういう認識があり、調べてみて「吉田証言の影響なんて殆どといっていいくらい関係なかった」と知り、

ただ巷で一部の人が最近さわいでいる「朝日新聞誤報=日本の名誉を国際社会で傷つけた原因」というまことしやかな説だけは、大きな勘違いであることを今日ハッキリと確認したのであった。

http://ysugie.com/archives/3315

という結論を下す過程は、知的に誠実であったと私は思います。なればこそ、かの記事を評価したわけですし。
ですが、杉江氏が訂正を繰り返す過程で論旨がぐちゃぐちゃになっていくのは、見ていて残念です。

調べてみて事実に行き着いたのであれば、その事実に対して誠実であってほしいものです。