6月9日の2回目協議時点で韓国側は妥協案を出しているのに、21日に一転したかのように報じるのは誤報だよなぁ

別にテレ朝だけではなくほとんどが同様に報じているようですが。

反対が一転「世界遺産登録に協力」韓国側の思惑は…

テレビ朝日系(ANN) 6月22日(月)11時49分配信
 これまで軍艦島などの世界遺産の登録に反対していた韓国側が一転して協力することになった背景には、どのような思惑があったのでしょうか。
 (大野公二記者報告)
 実は、韓国側は投票に持ち込めば5分5分以上で勝てると考えていました。先週まで尹炳世(ユン・ビョンセ)外相がドイツ、クロアチア、マレーシアと外相会談を行った結果、「負の歴史もきちんと説明すべき」という韓国側の説明が徐々に受け入れられていました。しかし、その一方で、このまま投票まで行けば、「世界遺産の場でイコモスの決定を覆すような政治的な動きをした」と関係各国から厳しい意見が出る恐れも感じていたということです。22日朝に聞いた複数の韓国政府関係者や日韓外交筋の話をまとめると、韓国はまず、「投票で世界遺産登録を阻止する」という短期的な戦いに勝っても、長期的に見れば関係国からの批判など韓国の国益を損なう恐れがあると判断しました。そのうえで、「負の歴史の記載」という日本側の譲歩を勝ち取ったと国内的にもいえる今の状況で矛を収めることが賢明だと考え、21日の合意に至ったとみられます。.最終更新:6月22日(月)11時49分

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20150622-00000017-ann-int

しかし、10日ほど前にはこんな報道が既にありました。

韓国妥協案、日本受けず協議継続…世界遺産登録

2015年06月10日 07時24分Tweet
 【ソウル=宮崎健雄】「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録をめぐり、日韓両政府は9日、ソウルで2回目の協議を行った。
 韓国側は文書で妥協案を提出したが、日本側は受け入れなかった。韓国側の申し入れで3回目の協議が行われる見込みだ。
 日本側出席者によると、韓国側は今回、「(日本が登録申請した)資産で、徴用工が働いていた事実を日本に認めてほしい」と述べ、具体的な妥協案を提示した。提案内容は明らかになっていないが、資産に強制労働を説明する展示を加えるよう求めた模様だ。国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の諮問機関(イコモス)は先月、「各施設の歴史全体を理解できるような計画」を日本に勧告しており、韓国外交省の当局者は協議を前に日本記者団に、「歴史全体」には強制労働の歴史も含まれるとの立場を示していた。
 協議で日本側は、申請対象は産業化を成し遂げた1850年代から1910年で、強制労働があった40年代は含まれていないと改めて説明した。一方、「徴用工に触れないとはひと言も言っていない。イコモスの勧告には真剣に対応する」と述べ、委員国との議論を踏まえて一定の譲歩をする可能性を示唆した。
 韓国は前回協議で、強制労働があった7資産の登録を外すよう主張したが、今回は言及しなかったという。

http://www.yomiuri.co.jp/world/20150610-OYT1T50021.html

6月9日の協議で韓国側は「資産に強制労働を説明する展示を加えるよう求めた」わけで、別に21日になってから一転したわけじゃありません。

さらにその一週間前にはハンギョレが「韓国が日本の登録の動きに対応する幅は狭くない。7産業施設の登載自体を反対できるし、でなければ28日に開かれるユネスコ世界遺産委員会の決定文に強制動員を明示させたり、関連施設に記念碑を設置するなどの妥協もできる。歴史の真実を守りながらも、日本人の文化遺産であることを尊重するという点では、後者の方案がより適切な対応といえる。」と掲載していますから、韓国国内の動きとして「負の歴史の記載」を求める動きはあったわけです。

[寄稿]韓国に残る日本軍遺跡と登録文化財

ハンギョレ新聞 6月2日(火)16時46分配信
シン・ジュベク延世大学HK研究教授
 明治産業革命遺産を世界文化遺産として登録する問題を巡り、韓中日3国の間で激しい外交折衝が続いている
 日本は西洋を除き初めて近代産業社会を遂げた自らの歴史を証明する貴重な資産として、23施設を遺産に申請した。これに対し韓国は、そのうち7施設に約5万7000人の韓国人が強制的に動員された事実を知り、日本の動きを牽制してきた。
 5月23日に開かれた東京会談でも互いの意見の差を縮めることができなかった。日本は23施設が「韓国併合以前に産業化に成功した点を示すことで、他の時代に作られもの」であることを主張した。時期が異なるという日本の反論に対し韓国は、強制動員に関連した歴史的事実を必ず反映しなければならないという立場を明らかにした。
 韓国が日本の登録の動きに対応する幅は狭くない。7産業施設の登載自体を反対できるし、でなければ28日に開かれるユネスコ世界遺産委員会の決定文に強制動員を明示させたり、関連施設に記念碑を設置するなどの妥協もできる。歴史の真実を守りながらも、日本人の文化遺産であることを尊重するという点では、後者の方案がより適切な対応といえる。
 一方で文化遺産登録に関連し考えてみるべきことがある。韓国が問題視している産業施設は「負の遺産」に該当する。韓国にも日本の侵略戦争や植民地支配に関連した否定的な遺産が非常に多い。私たちはよく、否定的遺産に関連した記念物として韓国銀行本館のような都心に残っている建築物を想起する。これよりはるかに多い遺産が、日本軍関連施設と施設地である事実を知る人はあまり多くない。日本軍関連遺産を確認できる代表例がソウル・龍山(ヨンサン)の米軍基地だ。龍山米軍基地にある日本軍施設は、軍事的次元を越え、朝鮮半島での植民と冷戦、戦争と分断を圧縮的に物語る。
 これと似たメッセージを投げかける日本軍関連遺跡は全国に散在する。光州、大邱、大田、釜山、蔚山といった広域市ばかりか済州島や南西海岸沿いに数多くの施設が残っている。だが、ほとんど放置されたり管理名目で一般人の接近自体を阻んでいる場合が多い。
 その上、韓国軍や米軍が使用しているので保存状態が良好な施設もある。洞窟をブドウ貯蔵庫として活用したり、加徳島のように施設地を観光資源化して安定的に管理している場合もある。だが、それらの場所は文化財という観点で接近してこなかった。地域住民の生活の痕跡が埋まる歴史と文化遺産という側面も見過ごされている。体系的で詳細な調査を基に歴史化しないまま、経済的にだけ接近してきた。
 実用的な接近は日本軍軍事遺跡と地方史教育の連係を難しくさせる。歴史性が除去されることにより反省的な省察も難しくする。また、こうした接近を通じることなく、反日議論だけにとらわれぬ、平和と共存を考える芽を芽生えさせることはできない。
 滅失と損傷の恐れがある日本軍施設のうち、地方の歴史と文化的背景になるものは登録文化財でとして管理すべきだ。日本軍施設は、朝鮮半島と東アジアを侵略して支配した日本の姿を確認できる具体的素材であるためだ。これは否定的な性格の遺産であっても世界遺産として登録できるというユネスコの趣旨とも一致する。こうした接近をすることにより、日本には資格要件を備えるよう求め、自分たちの「負の遺産」を登録文化財とするのに躊躇するという矛盾した態度を克服することができる。 また、民族史と地域史を地方の文化財を通じて具体的に考えることができる。
シン・ジュベク延世大学HK研究教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150602-00020867-hankyoreh-kr

こういう流れを全く無視して「反対が一転「世界遺産登録に協力」韓国側の思惑は…」などと報じる日本メディアのやり方は、報道の名に値するものではないですね。