「病院か自宅かによって生存期間に違いがあるか」の記事について少し気になった件。

論文を読んでないので、記事だけの感想。
「自宅で最期を迎えたがん患者は、病院で最期を迎えた患者と比べ、生存期間にほとんど差がないか、自宅のほうがやや長い傾向があるとする研究結果」とあるので、主旨としてはどちらがいいというものではないと思います。ちなみに緩和ケア段階での話で、抗がん剤治療などの是非とは関係ありません。

(ログイン後読める部分からの引用)
 対象の医療機関での初回診察時に余命が「2週間未満」と見込まれたグループでみると、診察から死亡するまでの期間が、自宅の人では13日だったのに対し、病院の人では9日。「2カ月未満」ではそれぞれ36日と29日で、どちらのグループも自宅のほうが長かった。一方、比較的状態がよい「2カ月以上」では差が認められなかったという。

http://www.asahi.com/articles/ASJ415G7DJ41UJHB01J.html

さすがに2000人規模のこの研究が入院か在宅かを無作為に割り付けるような介入研究であるとはちょっと思えませんので、多分観察研究だと思うんですが、だとすると入院治療か在宅治療かを医師が判断する際に患者の状態が考慮されるはずです。
例えば、がん以外に重い肺炎などをわずらっている患者さんを在宅治療とする選択はとりにくいように思います。がんそのものの進行は同程度であっても、入院か在宅かを判断する上で考慮される要因が生存時間にも影響しているのであれば、うまく調整して解析しない限り結論出すには慎重にならざるを得ません。

まあ、論文本体では考慮されているとは思いますが、上記引用した結果は多分調整していない結果のような気がしますので。


(追記2016/4/10)
もう一点、「初回診察時に余命」のデータをどのように集めたのかも重要ですね。初回診察したその時点に記載したデータを集めたのか、それとも既に亡くなった患者に対して初回診察時にどのように余命を診断したかを確認したのか、で結果が結構変わります。
もちろん、前者の集め方の方が理想ですが、後者の方がデータは集めやすいんですよね。