現日本政府にとってはともかく、日本市民にとっては朝鮮半島統一は歓迎すべきだと思うんだけどね

この反吐が出そうな記事の件。
泥沼が続く日韓  最悪のシナリオは朝鮮半島の南北統一〈週刊朝日〉(9/20(金) 10:06配信 AERA dot.)

ナチスドイツに侵略されたフランスやポーランドベネルクス三国などが東西ドイツ統一に懸念を示すというならまだ理解は出来ます。

しかし、もともと朝鮮半島は日本に侵略され植民地とされた挙句、戦後は分断を強いられたわけで、そのような分断国家に対して、侵略した日本で南北統一を「最悪のシナリオ」とか主張するのはどれだけ恥知らずなんですかね。

記事中では「日韓関係に詳しい大使経験者」*1と称する嫌韓バカがこんなことを言っています。

 日韓関係に詳しい大使経験者も、こう分析する。
「韓国内では、文在寅(ムンジェイン)政権への不満分子も多く、政権は盤石ではない。韓国のWTO提訴は、国内の不満を反日感情へと誘導するためのポーズでしょうね」
 日本にとって脅威となるのは、文在寅大統領が朝鮮半島の南北統一を実現するとの構想を打ち出している点だという。朝鮮半島の統一政府となれば、独裁体制が確立している金正恩(キムジョンウン)政権が保守と革新で分裂する韓国をのみ込む可能性があると、大使経験者は指摘する。在韓米軍が撤退することになれば、脅威はさらに増す。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190919-00000098-sasahi-kr&fbclid=IwAR2MGl_ahPoqiazwX8jGFUq1y8YOWH_VpG2nOo-B6-s0GGxGtV6UA1crY60

まず今回の韓国の反日感情は、安倍政権が徴用工判決に対する報復として貿易戦争を仕掛けたことに起因します。そもそも韓国市民の大半は別に日本による戦時強制動員問題に興味を持っているわけじゃありません。日本による植民地支配による被害であるという認識はあっても、それだけで日本に対する反感などを持っていない市民が大半です。日本市民の大半が原爆被害を米国による残虐行為だと認識していても、それだけで米国に対する反感を持ったりはしないのと同じです。

しかし、貿易戦争という理不尽な攻撃を仕掛けられたことによって攻撃された側の韓国市民は反日感情を抱いたわけです。「韓国のWTO提訴は、国内の不満を反日感情へと誘導するためのポーズ」だとかいうのは、自分たちが何を招いたのかすら理解していないアホのたわ言です。

そもそも「朝鮮半島の南北統一を実現するとの構想」なんて別に文政権じゃなくても、金泳三政権時代の1994年から民族共同体統一方案(민족공동체통일방안)*2という形でありますよ。「日韓関係に詳しい大使経験者」のくせにそんなことも知らないんですかね?
朝鮮半島の統一政府となれば、独裁体制が確立している金正恩(キムジョンウン)政権が保守と革新で分裂する韓国をのみ込む可能性がある」というのも脳みそが光速で逃避でもしない限り、信じたりはしない与太話です。
東西ドイツの統合で主体となったは西ドイツですが、当時のドイツはキリスト教民主・社会同盟と社会民主党で分裂してましたよね。

その馬鹿げた話に森永卓郎氏も乗っかるという体たらく。

 森永氏も言う。
「韓国という友好的な隣国が消滅し、朝鮮半島全体が『北朝鮮化』する可能性はあります。現在のソウルは、平和に見えても、核シェルターをいくつも構築しており、『戦時下』にあるんです。日本だっていつ、(朝鮮半島の統一政府と)緊張状態になるかわかりませんよ」
 最悪の近未来にならぬよう……。(本誌・永井貴子)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190919-00000098-sasahi-kr&fbclid=IwAR2MGl_ahPoqiazwX8jGFUq1y8YOWH_VpG2nOo-B6-s0GGxGtV6UA1crY60

ちなみに、文大統領にしても2019年8月15日の演説で「遅くとも2045年の光復100周年には平和と統一で一つになった国(One Korea)へと世界の中でそびえ立てるよう、その基盤をしっかりと整えていくことを約束する」と言った程度で、文政権の認識でさえ、現時点では統一朝鮮の基盤すら整っていないということを意味しています。

そもそも日本側の論者がことごとく、統一朝鮮は日本と軍事的に対立すると信じたがっているのがホントに救いがたいです。外交は何のためにあると思ってるんでしょうかね?

で、現状で朝鮮半島の将来は大きく二つのパターンしかありません。

一つは大きな混乱を伴わない平和的な統一。もう一つは、戦争や国家崩壊などの大きな混乱と犠牲を伴う軍事的な統一です。強いて言えばもう一つ、延々と対立と緊張を長引かせ分断の恒久化と拉致問題解決の放棄を伴う先延ばし がありますけどね。

平和的な統一以外の将来が日本にメリットをもたらしたりはしません。まあ、戦争や対立を煽って利益を得る安倍政権・自民党公明党・その他宗教カルトや極右団体やそれに乗っかるメディアにとっては別ですが。いや結構メリットを得る人が多いのかな?
嫌韓を煽られて、韓国・朝鮮を罵倒してストレス解消できる日本の一般市民にもメリットかも知れませんね。日本国内の政治的抑圧や経済的停滞によって蓄積したストレスを外国や弱い人間にぶつけて発散する行為に自己嫌悪を感じないくらい麻痺していることが前提になりますが。

平和的な朝鮮半島統一が実現した場合の日本にとってのメリットをいくつか

北朝鮮が米国などから攻撃されないという保障を平和条約などの形式で確立した上で、韓国と北朝鮮による南北連合が成立した場合、さらに統一国家が成立した場合に日本にどんなメリットがあるかをザクっと考えてみます。言うまでもなく実現には様々な困難がありますが、その辺はここでは考えないことにします。

1.北東アジアにおける戦争勃発の火種が一つ減る

現在、北東アジア地域で最も軍事的に不安定な地域は、朝鮮半島台湾海峡ですが、そのうちの一つが減ります。戦争したい人や韓国人・朝鮮人が犠牲になったら嬉しいと感じる人非人には残念でしょうが、そうでない人たちにはメリットですよね。
軍事的脅威の低下は、軍縮の機運を醸成します(軍官僚は抵抗するでしょうけど)。韓国は強大な陸軍を保持する必要が無くなり、北朝鮮は核保有を維持する必要が無くなります。日本も現在の防衛費を維持する必要がなくなりますし、中国やロシアも少なくとも朝鮮半島方面に備えた軍備については現状を維持する必要が無くなります。

2.環日本海経済圏の成熟による利益を享受できる

南北朝鮮が統合した場合、釜山から欧州までの鉄道でつながり、朝鮮半島、中国、ロシア、日本が日本海を内海とした経済圏で結びつくことができます。北朝鮮地域に対するインフラ需要の他、経済発展に伴い、中国、ロシアの関連地域にも需要の拡大が見込まれますよね。当然、日本の日本海側にも波及した効果が見込まれます。

3.拉致被害者の生存者や家族が自由に会えるようになる

南北連合の段階では会える場所は板門店など限定されるかも知れませんが、韓国と北朝鮮にいる南北離散家族と同様に会うこと自体の制約は相当程度緩和されるでしょうね。さらに統一国家が成立すれば、場所の制約もなくなり、自由往来が可能になるでしょう。



*1:あの嫌韓ネトウヨの武藤氏がまず思い浮かぶんですけどね・・・。

*2:http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/03/12/073000