離婚後共同親権に肯定的ないくつかの記事について

離婚後の共同親権は制度改定だけでは不十分(10/8(火) 18:08配信 ニューズウィーク日本版)

冷泉彰彦氏のコラム。ハーグ条約の理解にナショナリズム的な偏見が垣間見えます*1が、「制度への社会的な理解が必要」という点については同意できます。
法律の文言を共同親権に変えただけでは意味がありませんからね。
再婚相手に関する記載も大筋として同意できますが、「社会として「血の繋がりがない」場合に、愛情が注げないことへの「許容」がまだ残っているように見られます」という表現には違和感を覚えます。
むしろ、継父・継母が“継子に愛情を注げないこと”は許容しつつ、年少者に対する年長者としての配慮をこそ求めるべきだと思います。
一緒に生活してきた実子と実父・実母の関係は実子の年齢に等しい年月を通じて形成されてきたもので、再婚してから構築される関係でそれを超えるのは容易ではありません。愛情・愛着は共に過ごした年月を積み重ねることで形成されていくものですから、継父・継母が“継子に愛情を注げないこと”は特に再婚初期においては当然として、社会としてはそのような継父・継母と継子が適切な愛着関係を育てていけるようにサポートするべきです。冷泉記事には、そのような視点が欠けているように思いました。
ただ、全体としてはまずまず良記事だと思います。

DV被害、追い出し離婚…、共同親権を望む母親たちの声(明智カイト | 『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事 10/8(火) 16:00)

離婚後共同親権反対派が“同居親=DV被害者”といった誘導をしきりに行っているため、DV被害を受けて追い出された別居親の存在が長く知られてこなかった*2ので、こうして記事化されるのは非常に良いことだと思います。

私も以前取り上げたのですが、その時は反対派のEoH-GS氏は「どうでもいい」*3とか言われてへこみましたよ。

明智氏の記事自体は一方当事者の証言のみに寄っている印象があり*4、その点は若干詰めが甘い気はします。それでも、DV被害者は必ずしも同居親であるわけではないことを周知した意味で良記事だと思います。

*1:「国際結婚が破綻した場合に、日本で離婚裁判を行うと単独親権という判決が出ることから、欧米圏出身の配偶者の場合は、そもそも日本での裁判に応じないという実情があります。その結果として、外国人の側の親は自分の国における離婚裁判を強硬に主張して、日本人の親に不利な結果を引き出す傾向があります」と言う部分とか。そもそも、元の居住国で裁判せよというのはハーグ条約の基本的な考え方であって、外国人親の都合であるかのような書き方は誤解と偏見を招き、不適切です。

*2:離婚後親子交流の問題をちょっとでもまともに調べれば知ることはできますし、論理的に考えてもいて当然の存在ではあるんですがね。

*3:http://scopedog.hatenablog.com/entry/20161031/1478019853

*4:ただ、反対派の方が一方当事者の証言を全面的に事実扱いしていることが多い印象ですけどね。