領海内で他国の漁船が操業してたら領海主張している国としては取り締まって当たり前なんだが

この件。
「日本漁船が中国領海内で違法操業」中国、尖閣問題で逆抗議 ベトナムにも反発(5/11(月) 19:45配信毎日新聞)
尖閣追跡で中国報道官「騒ぎ起こすな」 日本に責任転嫁(5/11(月) 23:23配信 産経新聞)
中国船、尖閣周辺の領海侵入継続 3日連続、今年10日目(5/10(日) 11:52配信共同通信)

これ、経緯としては、まず尖閣諸島(釣魚群島・釣魚台列嶼)の領海内で日本漁船が操業し、それを取り締まる形で中国海警局の公船が、領海内に進入・日本漁船の追尾を行い、日本の海上保安庁の巡視船が日本漁船を護衛する形をとっている、というものです。

中国は尖閣(釣魚)の領有権を主張しているわけですから、その領海内で日本漁船が操業することを傍観するわけにはいきません。
それは日本も同様で、尖閣(釣魚)領海内で中国漁船が操業していたら、当然追い出しにかかるわけです。

現状で中国が取っている対応は、領有権紛争のある当事国として当然の対応に過ぎません。

もっとも、その当然のことも“尖閣(釣魚)領有権に関する日本政府の主張は100%正しい”と思い込んでいる人たちには理解不能でしょうけど。

日本政府の公式見解通り、“尖閣(釣魚)は日本固有の領土であり、領有権紛争は存在しない”という認識に疑いを持たない人たちから見れば、“中国、許すまじ”的な感情になるのも当然です。あるいは、“中国の挑発は安倍政権を助けている”みたいにも見えるかも知れませんね。

相手国はどのような主張をしており、相手国からはどう見えるか、という基本的な考察に欠けている意見ばかり見かけるのも、もう正直うんざりですね。

個人的には、わざわざこの時期に、好んで尖閣(釣魚)領海内で操業しようという日本漁船の思惑の方が気になります。実際、示威目的で尖閣(釣魚)領海内に行きたがる右翼活動家は少なくありませんからね。
さらに言うなら、一般的にもめごとを避けたがる海上保安庁等の日本当局が、当該日本漁船が尖閣(釣魚)領海内まで行くの黙過したのにも何らかの思惑があるのかもなぁ、とか思ってます。


さて、中国側の主張を踏まえて考察すると次の展開はおそらく、中国漁船が尖閣(釣魚)領海内で操業し、それを取り締まろうとする日本の巡視船を中国海警船が妨害して、中国漁船をエスコートするような事件が近いうちに起きるんじゃないのかな、と推測できます。
で、“中国漁船は海上民兵だ”とか“領海侵犯だ。撃沈すべき”とか言い出すバカが量産されるのであろうと。

日中両政府外交当局の会見

2020年5月11日 中国外交部発言人 記者会見

  法新社记者:两艘中国海警船上周在钓鱼岛海域驱逐一艘日本渔船,日方已就此向中方提出交涉。你对此有何评论?中方是否已向日方进行解释或道歉?

  赵立坚:据了解,近日,中国海警在钓鱼岛海域例行巡航时,发现一艘日本渔船在中国领海内非法作业。中国海警船依法对其实施跟踪监控,要求其立即停止有关活动,退出相关海域,并坚决应对了日本海保厅船只在现场的非法干扰。中方已通过外交渠道就此向日方提出严正交涉,敦促日方立即停止侵权行为。

  我要强调的是,钓鱼岛及其附属岛屿是中国固有领土,在钓鱼岛海域开展巡航执法是中方固有权利。我们要求日方恪守四点原则共识精神,避免在钓鱼岛问题上制造新的事端,以实际行动维护东海局势稳定。

https://www.fmprc.gov.cn/web/wjdt_674879/fyrbt_674889/t1777931.shtml

2020年5月12日 日本外務省 外相記者会見

中国公船による尖閣諸島周辺での日本漁船追尾

テレビ朝日 大石記者】尖閣諸島周辺の領海に,中国の公船が3日連続で侵入しましたが,中国による度重なるこうした行為の受け止めと,あと,中国外務省の副報道局長が「日本側による違法な干渉だ」などと主張したようですが,これも含めて受け止めをお願いします。

【茂木外務大臣】ご指摘の事案については,東京と北京の双方におきまして,局長,公使レベルで中国側に対して累次にわたり厳重に抗議をし,日本漁船の接近,追尾を直ちに止め,速やかに我が国の領海から退去するよう強く求めたところであります。
 新型コロナ,この問題で様々な国の協調,連携が必要と,こういう状況でありまして,中国側にはこの問題についても前向きな対応を強く求めたいと,こんなふうに思っています。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_000956.html#topic6

中国側が言及している「四点原则」とは多分、これ。

日中関係の改善に向けた話合い

平成26年11月7日
 日中関係の改善に向け,これまで両国政府間で静かな話し合いを続けてきたが,今般,以下の諸点につき意見の一致をみた。

1 双方は,日中間の四つの基本文書の諸原則と精神を遵守し,日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。
2 双方は,歴史を直視し,未来に向かうという精神に従い,両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。
3 双方は,尖閣諸島東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し,対話と協議を通じて,情勢の悪化を防ぐとともに,危機管理メカニズムを構築し,不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。
4 双方は,様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して,政治・外交・安保対話を徐々に再開し,政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/c_m1/cn/page4_000789.html

上記の3について、「異なる見解を有していると認識し,対話と協議を通じて,情勢の悪化を防ぐ」という観点からすると、日本政府は日本漁船が尖閣(釣魚)領海内で操業しないように自粛を求めるべきでしょうね。もちろん、それは中国漁船に対しても言えることですが。

大仁田厚氏の主張

こんなことを言っていたようです。

大仁田厚「許してはいけない」「領土は国民の財産」尖閣周辺への中国船侵入に抗議

2020年5月11日 16時36分 デイリースポーツ
 プロレスラーで元参議院議員大仁田厚が11日、自身のツイッターを更新。ハッシュタグ「#尖閣周辺への中国船侵入に抗議します」を付けて思いを述べた。
 「以前から思っていたことだが中国の領海侵犯は許してはいけない問題だ 南シナ海の問題もそうだし 香港!台湾にも中国は政治的圧力を強めているのだ! もし日本の漁船が中国の領海を侵犯したら? 拿捕されたり攻撃を受けるだろう 領土は国民の財産なのだ」とつづった。

https://news.livedoor.com/article/detail/18244050/

大仁田氏の言う「もし日本の漁船が中国の領海を侵犯したら?」というのが、中国にとってはまさに今起きていることなわけなんですよね。
「拿捕されたり攻撃を受けるだろう」とも言ってますが、いきなりそんなレベルのことをせず、漁船を領海外に退去させようとしているのが現状です。

自分たちの視点でしか考えられない。
相手側の視点を想像することもできない。

何とも情けない社会になったものですねぇ。