おそらく安倍政権による根回し

安倍政権のプロパガンダ機関産経新聞に所属する在米工作員・古森氏による勝利宣言記事。

「韓国軍慰安所」 山口レポートが米に広げた波紋

週刊文春 4月2日(木)18時1分配信
?TBSワシントン支局長・山口敬之氏による本誌前号の調査報道「韓国軍にベトナム人慰安婦がいた!」が、ワシントンのアメリカ政府当局者やアジア専門家たちの間で波紋を広げている。
?3月26日の国務省記者会見で「米国立公文書館の文書がベトナム駐留の韓国軍が売春宿を運営していたことを証したという日本からの報道を知っているか」という質問が出た。ラトケ報道官は「知っている」と答えた。「この事例は人身売買だが、調査する意図はないか」「この問題で韓国政府と協議するか」などという関連質問も出た。報道官は確かな答えは与えなかったが、「韓国軍の慰安婦問題」が米側の国政の場で知られる結果となったのは確かだ。
?さらに、本誌報道は同26日、ワシントンのアジア関連ニュースレターの「ネルソン・リポート」でもほぼ全文の英訳が掲載された。同リポートは民主党リベラル派の活動家、クリス・ネルソン氏がアジアのニュースや評論を流すネット・サービスで、米側のアジア問題関係者らが購読し、投稿する。歴史問題では中韓両国の主張を優先して、日本を糾弾することが多い。
?そんな「ネルソン・リポート」が山口氏の調査報道を全文掲載したのは、その重みゆえだろう。ネルソン氏はこの報道が事実ならば「韓国側の偽善や二重基準が証される」と述べたが、同時に「この報道で日韓の歴史戦争はより醜くなる」とも記している。
?これに対して翌27日、慰安婦問題での長年の日本叩きで知られるコネチカット大学のアレクシス・ダデン教授が同リポートに「韓国も同じことをしていたという主張は日本の悪事を帳消しにはしない」という意見を寄せてきた。同教授は同リポートが本誌報道を紹介することがそもそもおかしいとも示唆していた。
?ダデン女史は安倍首相を「悪漢」とののしり、菅官房長官の言辞を「ペテン」と呼ぶほどの反日だ。今年1月には米紙「ニューヨーク・タイムズ」に「尖閣諸島竹島北方領土も国際的には日本の領土ではなく、安倍政権がその領有権を主張するのは危険な膨張主義」とまで書いている。そんな人物をたじたじとさせただけでも山口氏の調査報道の意義は大きいといえよう。
週刊文春2015年4月9日号『THIS WEEK 国際』より>
古森 義久(在米ジャーナリスト)

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150402-00004979-sbunshun-int

さて、ベトナム戦争中に韓国軍がベトナムで売春宿を管理していたとされる記事が週刊文春に載ったのは2015年3月26日発売の「4月2日号」です。その同日にネルソン・レポートに英訳記事が載ったわけですから、山口敬之氏が元々ネルソン・レポートへの掲載を志向していたのか、少なくとも文春掲載と同時に掲載されるように準備していたのは間違いありません。
まあ、ネルソン・レポートでの掲載記事を確認できないのですが、時系列的に古森氏の「本誌報道は同26日、ワシントンのアジア関連ニュースレターの「ネルソン・リポート」でもほぼ全文の英訳が掲載された」という記載が正しいのかには疑問が残ります。少なくとも同日付であることを考慮すれば、「本誌報道」の「ほぼ全文の英訳」ではないでしょうね。

そして「3月26日の国務省記者会見で「米国立公文書館の文書がベトナム駐留の韓国軍が売春宿を運営していたことを証したという日本からの報道を知っているか」という質問が出た」というのも同じ3月26日です。
しかし、これはさすがにおかしいでしょう。3月26日に発売された週刊文春の記事を3月26日中に米国務省の報道官が知っているとは思えません。実際国務省の記者会見では「a few questions about this report out of Japan which is based on U.S. archival documents」と言っていて「日本からの報道」とは言っていません。ここで質問された「this report」とは「ネルソン・リポート」のことでしょう。
というわけで、実際に「ネルソン・リポート」にはどのように記載されているのかを知りたいところですね。

ちなみに、3月26日の記者会見での言及ですが、古森氏が書いているような「ワシントンのアメリカ政府当局者やアジア専門家たちの間で波紋を広げている」と言った流れではありません。
結構無理やりねじ込んだ質問で、それも質問している当人が「I’ve been asked to ask a few questions about this report 」と他人から頼まれて質問していると言及する有様で、報道官から「I think it would not be this building that’s in a position to speak to those documents.」と返される始末でした。
それが工作員・古森氏の手にかかるとこう改ざんされてしまうわけですね。

「この事例は人身売買だが、調査する意図はないか」「この問題で韓国政府と協議するか」などという関連質問も出た。報道官は確かな答えは与えなかったが、「韓国軍の慰安婦問題」が米側の国政の場で知られる結果となったのは確かだ。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150402-00004979-sbunshun-int

記者会見に参加する記者に頼んで無理やり話題をねじ込み、それが全く相手にされなくても「米側の国政の場で知られる結果となったのは確かだ」とか書かれるわけですからね。

ところで文春記事を見る限り、明確に人身売買と言えるのは「貧困のために家族に売られてきた少女」という件しかありません。「この事例は人身売買だが、調査する意図はないか」という古森記事の表現も実際には「In terms of the issue that the report talks about, do you see it as an instance of human trafficking? Do you see a need to investigate it at all?」という疑問文で、「この事例は人身売買だが」などという断言調ではありません。質問に対する報道官の回答は、こんな適当な内容です。

MR. RATHKE: Well, we’re aware of the article. We don’t have any specific comment on the article. I think our policy on the trafficking of women for sexual purposes remains well-known, and so I don’t have anything to add to that.

http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2015/03/239810.htm

3月26日発売の週刊文春の記事が、英訳され3月26日にネルソン・レポートに掲載され、米国務省報道官が3月26日の記者会見で記事に関する質問を受ける、という状況

普通に考えれば、時系列的にありえませんね。
事前に根回しがあって、山口敬之氏の記事が、文春とネルソン・レポートに同時掲載されるように調整され、同日に米国務省記者会見で質問される調整した以外にありえないでしょう。産経新聞や古森氏単独で、こういった周到な根回しができるわけもなく、日本の在外公館が関与してるんだろうな、と当然予測できるところです。ODA予算を流用して慰安婦問題を否認する歴史修正主義訴訟での弁護士費用を工面したり、慰安婦碑を設置した自治体に大使や自民党議員を送り込んで撤去するよう圧力をかけたり、とまあこんなことばかりやっていますから、今回の件も裏で官邸が動いていると考えるのは既に陰謀論とは言えなくなってきてしまいました。

ホント、この国の政府は国民として恥でしかありませんね。