窪田順生氏による捏造行為、あるいは窪田氏にとっての「正義」について

こういうカジュアルな歴史修正主義による捏造が、頻々と出てくる社会というのは健全とは言いがたいですね。まあ、首相や政権与党が歴史修正主義に侵された右翼政党なので仕方ないとも言えますが。

安保反対デモは「12万人」……なぜ警察発表の「4倍」なのか

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 南京事件なんか分かりやすい。事件当時や終戦直後は欧米メディアも中国も犠牲者を2万とか4万とか言っていた。しかし、広島や長崎の原爆の被ばく者数が年を追うごとに増えていくのを見るや、張り合うように20万人、30万人と跳ねあがっていった。「日本の戦争犯罪を糾弾する」という大義のために数字を盛るのは、「正義」なのだ。
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150901-00000016-zdn_mkt-soci

この手の捏造論者にとって、都合の悪い数字を過小評価するためには事実なんかどうでもいいんでしょうね。
窪田説によれば、南京事件の犠牲者数は「事件当時や終戦直後」は「2万とか4万とか」だったが、「広島や長崎の原爆の被ばく者数が年を追うごとに増えていくのを見るや、張り合うように20万人、30万人と跳ねあがっ」たということになってます。もちろんデマです。
そもそも日本軍占領下で被害実態の調査ができなかった戦時中はともかく、被害調査が出来るようになった日本敗戦以降、1945年12月という終戦直後の早い時期に犠牲者数43万人という数値が出ています。

年代 ソース 犠牲者数表記
1945年 改造日報 43万人
1947年 南京軍事法廷判決 30万人以上
1948年 東京裁判判決 20万人以上
1976年 蒋介石秘録 30万〜40万人
1985年 南京大虐殺記念館 30万人
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140619/1403194180

ちなみに広島で1945年末までに亡くなった被害者数は推定14万人±1万人、長崎については7万人±1万人とされています*1が、この推定値は1976年に出されたもので、1945年末当時の認識ではありません。したがって、中国側が「広島や長崎の原爆の被ばく者数が年を追うごとに増えていくのを見」て、1945年末の43万人という犠牲者数を算定したことは論理的にありえません。
つまり、窪田説はデマであり、窪田氏はこの程度の初歩的な知識と論理すら理解できない程度の論者だということです。

あるいは、事実に関係なく、南京事件の犠牲者数を過小評価することは窪田氏にとっての「正義」なのかも知れませんけどね。

窪田記事の本題に照らせば、デモ参加者数を過小評価することは窪田氏にとっての「正義」ということにもなるでしょうね。