防衛関連部分の改憲案に関して

以前言った通り、基本的に9条含めて改憲しなければ困るということはない、というのが私のスタンスです。防衛部分を含めて、全般的に改憲の必要性はありません。
少なくとも、具体的に法案を示した上で、「憲法上、この法案を通せないから改憲せざるを得ない」という真摯な改憲主張を見たことがありません。

現実的な防衛問題にしても、現行憲法と防衛関連法規で対応できています。改憲論者は、改憲の必要性を具体的に示すべきでしょう。

と言っても、何ら具体的な必要性を示すことなく、徒に隣国との紛争を煽り針小棒大に危機を煽って、改憲しないから危機になったかのような空気の蔓延に成功してしまった現状では、第2線を準備せざるを得ません。しかも、こういったことは共産党社民党のような護憲政党が公式に語るわけにもいきませんので*1、関係のない私が無責任に話したのが、前回の記事です。

この記事を書いた成果は、真っ当な意見がついたことです。私にとっては重要な成果でした。

提示された対案

1.内閣は、国民からの志願者によって構成される国防軍を設置することができる

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20121212/1355332402

davsさんが挙げたのは以下のような文言です。

内閣は、法律の定めるところにより、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を設置することができる。
2 国民は国防軍への参加及び国防軍の活動への協力を強制されない。

http://d.hatena.ne.jp/davs/20121215/1355567128

2項で徴用も含めて禁止している点はなるほどと思いました。

3.国防軍は、内閣総理大臣が宣言する緊急事態を除いて、憲法が明文で認めている場合に限って出動することができる

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20121212/1355332402

これについては「内閣総理大臣が宣言する緊急事態を除いて、」はいらないとの指摘を受けていますが、緊急事態条項についての対案を私が作っていませんので、明確な反論は出来ませんけど、災害時や武力侵攻を受けた場合などの緊急事態宣言自体は私としては許容範囲なので、緊急事態条項の記載にもよりますが、指摘部分についてはあった方が良いと思っています。

4.国防軍は、国会の議決があれば出動を中止せねばならない

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20121212/1355332402

については、以下の意見。

4に関連して、例えば「草案」のいう「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持」する活動を行うためには、各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要、ぐらいハードルを高くする必要があるだろう。

http://d.hatena.ne.jp/davs/20121215/1355567128

確かに時間的余裕がある場合の出動に関しては、このくらいの制約を設けるべきかもしれません。


5.国防軍は全ての人の基本的人権を守ることを目的とし、その目的を達成するため、良心に従い、内閣総理大臣の指揮・命令に服さねばならない

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20121212/1355332402

これについては、以下の案。

国防軍に属する軍人は、任務を遂行するにあたって、この憲法国際法を遵守しなければならない。
2 国防軍に属する軍人は、この憲法国際法に反する命令を拒まなければならず、かかる行為を理由として処罰されない。

また、旧軍の憲兵が、国民の思想弾圧まで行ったことを考えれば、次のような条文も必要だろう。

 国防軍に属する軍人は、文民に対して、司法警察権を行使できない。

http://d.hatena.ne.jp/davs/20121215/1355567128

なるほどとも思いますが、個人的に「良心」のくだりを残したいのと、「目的」を明確化させたいとは思います。

適当な返し

さて、私以上に無責任にコメントで適当なことを言ってくる人がいたので、どうしようもないなと思いつつ、少しだけ返しておきます。


繰り返しますが私のスタンスは基本的に改憲不要で、どうしても改憲したいならば、少なくともこの条件は譲れない、という主旨で前回記事を書いています。ですので、

ましっそよ
というか憲法で規定することじゃねえな。防衛基本法でやれよ。

というのは、まるっきり無意味な主張です。だったら改憲反対と主張してもらえれば、それでいいわけです。自民案は憲法で規定して構わないというなら、それはなぜかを書かなければ意味がありません。

読解力のない人

AとG
国防軍って「東に独裁政権があれば新政権を樹立し」、「西にテロ組織があれば殲滅する」そういう組織なんですか?なんだか正義のヒーローって感じですね。

fab
・某国で反日デモが起こり国民が事実上軟禁状態に!人権を守るために進軍しよう
・某国でチベ。ト人が人権侵害されている!憲法に則り進軍しよう
ってのと同レベルです。

先の記事で提示した案から、どこをどう解釈すればこうなるのか意味不明ですが、デマを平然と流す人たちのコメントなのでさもありなん、という感じです。
マジレスすると、私案の「3」で緊急事態を除き、「憲法が明文で認めている場合に限って出動することができる」*2と制限しているので、上記事態を緊急事態とする超解釈が首相によって為され国会がそれを黙認しない限り、出動はできません。「5」で「全ての人の基本的人権を守ることを目的とし」ていますが、首相の命令に服す義務を同時に課していますので、首相の命令なしでの出動はできません。
表現上の問題とかなら対話する余地もあるんですが、のっけから超解釈での挑発なので何とも。
この程度の読解力すら持たない「AとG」氏や「fab」氏は、さすがにまともに相手にする価値がありませんね。コメント欄で適当に吠えててください。


人権を守らない軍隊は民主主義国家の軍隊としての存在意義がない

5.国防軍は全ての人の基本的人権を守ることを目的とし、その目的を達成するため、良心に従い、内閣総理大臣の指揮・命令に服さねばならない

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20121212/1355332402

ある種の人たちにはこの文が気に入らないらしいのですが、平和主義を標榜する民主主義国家の軍隊が全ての人の基本的人権を守ることを目的とするのは当たり前のことです。自国民だけ守ればいいとか考えるのは論外です。現行日本国憲法はもちろん、自民党改憲案ですら、他国民のことは知らん、的なことは書いていません。

日本国憲法前文
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html

自民改憲案前文
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に願い、他国とともにその実現のため、協力し合う。国際社会において、価値観の多様性を認めつつ、圧政や人権侵害を根絶させるため、不断の努力を行う。

http://www.dan.co.jp/~dankogai/blog/constitution-jimin.html


fab氏が言う「・某国で反日デモが起こり国民が事実上軟禁状態に!人権を守るために進軍しよう」「・某国でチベ。ト人が人権侵害されている!憲法に則り進軍しよう」ってのと同レベルなのは、どう見ても自民改憲案の方ですが、彼はおそらく自民改憲案を読んでもいないでしょうから別にいいとして。

軍隊保有を禁じている現行憲法でも問題だらけの自民改憲案でも、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」や「国際社会において、価値観の多様性を認めつつ、圧政や人権侵害を根絶」などの文言を記載されているわけです。
なのに、国防軍日本国籍保有者しか守らないとするわけにいかないのは当たり前です。

では民主主義国家の軍隊の存在意義は何かと言えば、基本的人権を侵害された人を守るために必要最小限の武力行使を行うことです。言うまでもなく、行政や司法、警察力で対応できるならそれが優先されますし、他国内など自国の軍隊で対応するのが不適当な場合は、首相は出動命令を出すべきでなく国会も容認すべきでないわけです。

別に現行憲法のままでも、少なくともイラク戦争のような大義なき戦争で自衛隊員にイラク人を殺害させ、自衛隊員の屍をイラクのちに晒さずに済んでいますので、充分に機能しているわけです。
それでも改憲が避けられないのなら、防衛関係についてせめて歯止めをかけておく必要があると考え、前回の記事になったわけです。

別にコメントしてくるのも構わないんですけど、以下のどの立ち位置か明確にしないと対話する意味もありませんよ。

・自民案全面支持
改憲不要
・その他

バカのコメント

ましっそよ
全ての基本的人権を蹂躙するのが戦争。

AとG
軍隊ってのは人権を守るためのものではないと思いましたが・・・
つうか、外国籍を持つ方々の安全を確保する義務ってのは、その人達の本国にあるはずでしねぇ。

fab
>人権を守らないような軍隊は、少なくとも民主主義国家の軍隊としては存在意義がありませんね。
民主主義国家の軍は国防、国益、国民の安全、国民への利益が存在意義でしょう。
国防軍なら国防、国民の安全が主となるでしょうが、軸となるものは変わりませんよね?
人道主義と混同してませんか?


めんどくさいので特に説明しません。

*1:それこそ改憲派が喜んで飛びつき、自らは一切譲歩しないまま、護憲派にさらなる譲歩を迫るでしょう。ブクマでその典型的な事例が見受けられました。

*2:http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20121212/1355332402