「中韓は素晴らしい! それに比べて日本は」なんて報道が日本で主流になった時代なんてあったっけ?

こういうブコメ(前半のみ)。

uturi ネット 社会 報道 今まで「中韓は素晴らしい! それに比べて日本は」だったから、その反動だと思うがね。サムスン国営企業みたいなもんだから勝つのは難しいし、軍事費については、日本人の戦争アレルギーが酷すぎるのも原因では。 2013/12/20

http://b.hatena.ne.jp/entry/bylines.news.yahoo.co.jp/dragoner/20131219-00030803/

少なくとも自分の記憶にある範囲では「中韓は素晴らしい! それに比べて日本は」と言った論調の報道なんて見かけたことはほとんどないんですけどね。余裕があれば全国紙の縮刷版でも繰ってみようと思いますが、まあとりあえずは今の認識で。

韓国について言えば、80年代後半の民主化以前の軍事政権時代は韓国に対して批判的な報道の方が多かったようですし、せいぜいソウル五輪(1988年)以降にそういった批判が減ったくらいでしょう。民主化後間もなく従軍慰安婦問題が出てきて(1990年代)、マスコミの論調も日本政府批判になっていますが、それって別に「中韓は素晴らしい!」という論調でもなく、被害者が韓国人であるという程度の位置づけに過ぎません。韓流がもてはやされてきたのも「冬のソナタ」あたりが起点で2005年頃以降でそれも当初は主婦層あたりで人気を博して徐々に拡大し「これは売れる」と踏んだメディアが後乗りしたという流れでしょう。ドラマ人気の中から、日韓の男女・家族文化の違いが語られるようになって、その延長で“韓国男性”「は素晴らしい! それに比べて日本は」的な論調は聴いた記憶がありますが、それって明らかに女性向けのワイドショー的な話ですから目くじら立てるような話でもありません。それにこういうのって欧米人男性に対しても類似する論調はいくらでもありましたよね。
政治レベルの話では、金大中李明博が大統領になった時くらいは好意的に注目されていたと思いますが、それってただ単に日本にゆかりがあるから程度の話だったと記憶しています。
なので「反動」が起こるような振れがそもそも無いと言っていいと考えています。

中国の場合、日本政府は70年代まで中共をほぼ一貫して敵国扱いでした。対するマスコミが中共に対する好意的な論調を取ったことはあったと思いますが、中共の核開発や文革などの混乱を経た後は中共に好意的な論調はかなり低迷していますよね。70年代までの中共に好意的な論調にしても、それこそベトナム戦争でのアメリカに対する反発がベトナム中共に対するシンパシーを生じさせたと言えるでしょう。1980年代になってようやく中国の情報が多く入るようになりますが、歴史・文化に対する好意的な論調はあっても政治的に好意的な論調はそう目立つものはなかったと思います。南京事件に対する日本政治家や右翼の態度が非難され、その反動として中国側が評価されたことはあったかも知れませんが、それも主流とは言えないでしょう。
中国に対する好意的な論調が増えてくるのは、経済発展が進み始めた1990年代以降で、これは市場魅力として好意的な論調だったと言えます。要は儲けるチャンスだと煽る記事ですね。なので、「中韓は素晴らしい! それに比べて日本は」といった論調とはちょっと違います。経済記事で中国の市場としての魅力減退を訴えるものはまあ、この頃の反動と言えば反動かも知れませんが、多分ブコメ主の意図しているものではないでしょう。

全体として戦後、「中韓は素晴らしい! それに比べて日本は」と言った論調が日本で主流になったことなど一度もなく、せいぜいカンフー・ブームや韓流ブーム程度に過ぎないのが実態のように思えます。これに対する「反動」が現状の露骨な排外差別肯定の論調ならば、それこそ日本の民度の問題でしょう。