無期懲役囚の仮釈放状況

死刑廃止関連の話題では、死刑を廃止するなら仮釈放なしの無期懲役終身刑)を導入すべきとか、仮釈放の条件を厳格化すべきとかいう意見を見かけることが多いんですが、仮釈放の現状をどの程度理解しているのか、いまいち疑問なんですよね。

簡単な統計情報は公表されていますので、まずe-STAT*1で「政府統計全体から探す」を選んで「法務省」から「矯正統計調査」を開けば、この辺の情報が出てきます。
現状だと年次では2015年データが最新です。

被収容者関連で「15-00-05 年末在所受刑者の刑名・刑期」という統計表がExcelで提供されていますので、これを見れば、年末時点での無期懲役での受刑者数が5年分、男女別でわかります。

年 
2011年 1712 100 1812
2012年 1725 101 1826
2013年 1740 103 1843
2014年 1740 102 1842
2015年 1736 99 1835

まあ、大体1800人くらいですね。
次に「15-00-69 無期刑仮釈放者の執行した刑の態様別 受刑在所期間」という統計表を見ると2015年に仮釈放された無期懲役囚の数がわかります。
2015年の出所者数は11人(男9人、女2人)です。うち9人は既に20年以上刑務所にいて、1人は19年超20年以下、残る1人が短く7年超8年以下という状況です。“無期懲役が7年で出てくるなど許せん!”と思う人もいるんでしょうけど、19年超20年以下と7年超8年以下の2人は、一度仮釈放になった後に仮釈放が取り消されて再度刑に服している人です。
前回の仮釈放以前の期間はこの統計上では含まれていないと思われますし、仮釈放取消の理由も重大な再犯ではなかったと思われます。

ともあれ、無期懲役受刑者1800人中、仮釈放となるのはせいぜい10人程度でそれも受刑期間20年がざらという状況ですから、これ以上厳格化する必要性があるのかどうか、疑問です。
仮釈放の可能性すら存在しない終身刑の導入を求める考え方についても、判決時点での被告の性状だけで終身刑を確定し、受刑期間における改心や更生を全く評価しないという考え方が果たして正しいのかどうか、これもはなはだ疑問です。

いやまあ、日本では“犯罪者は改心するなどありえないから未来永劫許さない、全員殺せ”という考え方が主流なのはわかってますし、今後も変わることもないんでしょうけどね。
それでも一応、私は死刑に反対だということは言っておきます。