やや丁寧な回答

id:sakidatsumono
大筋では納得するが、そんなに会う権利で養育費の吊り上げが出来るんだったら、なんでこんなに養育費を踏み倒す父親が多いのさ。 2012/04/04

id:shea
これはこれで問題だが、アメリカの話抜きなら、養育費不払いが罷り通る方が離婚家庭子供の生活をクリティカルに滅茶苦茶にしてると思うけど。 2012/04/04

ごもっともな意見です。

別居親のタイプ

別居親(父親であることが多い)には養育費と面会の状況によって4種類ありえます。

- 養育費を払う 養育費を払わない
面会を望む A1 B1
面会を望まない C1 D1

A1:養育費も払うし、面会も望む
B1:養育費は払わないが、面会は望む
C1:養育費は払うが、面会を望まない
D1:養育費も払わないし、面会も望まない

このうち、C1の別居親は比率としてはほとんど存在しないでしょう。あるとすれば同居親からの干渉や抗議が面倒だから許容範囲の金額で黙らせている場合でしょうか。
B1の別居親はそれなりにいるでしょうが、この場合同居親には面会を拒むという選択肢や養育費請求の訴えを起こすなどの選択肢があります。
子どもが自分の意思でB1の別居親に会いに行くような場合は難しいでしょうが、低年齢児の場合なら面会を拒否することは容易にできますので、B1の別居親が本当に面会を望んでいるなら養育費の要求に応じざるを得ません。*1その意味で、B1の別居親は、容易にA1の別居親かD1の別居親に転じえます。

比率的に多いのは、A1の別居親とD1の別居親で以前はD1の別居親が多かったでしょうが、夫婦共同での育児参加が増えてきている現状を鑑みてA1の別居親も増えてきていると考えられます。

D1の別居親はそもそも面会を望んでいないので、同居親が面会を条件に養育費を要求しても払わないことが多いでしょうね。

しかしながらハーグ条約で問題になっているのはD1ではなくA1の別居親です。

D1の別居親に養育費を払わせるための問題と、A1の別居親に面会を認めるための問題は別々に解決できる問題です。
D1の別居親の存在を理由にAの別居親に面会を認めないのは間違っています。
もちろん、A1の別居親の存在を理由にD1の別居親の養育費を免除するのも間違っていますが、そんなことは私は主張していませんので。

別居親の比率的には、以下のような順番になると思います。

C1<B1<<A1<D1

C1・B1はA1・D1に比べてかなり少ないと思われます。

同居親のタイプ

同居親(母親であることが多い)にも養育費と面会の状況によって4種類ありえます。

- 養育費を望む 養育費を望まない
面会させたい A2 B2
面会させたくない C2 D2

A2:養育費も望むし、面会もさせたい
B2:養育費は望まないが、面会はさせたい
C2:養育費は望むが、面会はさせたくない
D2:養育費も望まないし、面会もさせたくない

こちらの場合、B2の同居親は比率として少ないでしょうね。あるとすれば別居親の経済状態を知った上で辞退している場合でしょうか。
A2の同居親はまず理想的な同居親と言えますが、比率的に多数派とは思えません。離婚後も、友人的な付き合いのできるくらい成熟した大人ならこのように振舞えるでしょうが。
なお、このA2の同居親ですが、面会を積極的に望む同居親のみを指し、判決や養育費のための渋々面会を認めるような同居親は含みません。

C2の同居親とD2の同居親は、共に面会をさせたくないという点で一致していますが、これが比率として圧倒的に多いと思われます。離婚に至った過程にもよるでしょうが、一般的に喧嘩別れした場合、二度と顔を見たくない、相手を出来るだけ苦しめたい、的な発想に囚われることが多いと言えます。
とにかく、相手と全く接触したくないと思えば、D2の同居親、お金だけは取り上げたいと望めば、C2の同居親となります。

同居親の比率としては、以下のような順番になるでしょう。

B2<<A2<D2<C2

B2はA2・C2・D2に比べてかなり少ないと思われます。

別居親と同居親のタイプ別離婚後の相性

↓同居親 別居親→ A1 B1 C1 D1
A2 ×
B2
C2 ×
D2 ×

◎:養育費・面会ともに条件一致(養育費望まれないが払う場合含む)
△:養育費・面会いずれか不一致(養育費望まれないが払う場合除く)
×:養育費・面会いずれも不一致(養育費望まれないが払う場合除く)

データ的に理想的な別居親は「C1:養育費は払うが、面会を望まない」というありえないタイプ
同居親は「B2:養育費は望まないが、面会はさせたい」というこれまたありえないタイプ

こういったありえない・少ないタイプを除くとこうなります。

↓同居親 別居親→ A1 D1
A2 ×
C2
D2 ×

A1・A2の組み合わせは、父母双方及び子どもにとっても良好な結果になりますが、この中では低比率と言えます。
D1・D2の組み合わせは、父母双方にとっては良い結果でしょうが、子どもにとっては片親を生き別れになる悪い結果です。この中では比較的多い方と言えます(下記の仮定で28%、約7万組)。
それ以外の組み合わせは、何らかのトラブルを抱えることになります。

仮に、
A1:D1=3:7
A2:C2:D2=2:4:4
だとすると、離婚後良好な関係を築けるA1・A2は全体の6%、子どものみ不幸なD1・D2は全体の28%、それ以外の66%は父母・子どもともにトラブルを抱え続けることになります。
両親の離婚を経験する子どもは、年間約25万人ですから、15万人の子どもが離婚後のトラブルを抱えることになります。

↓同居親 別居親→ A1 D1
A2 6% 14%
C2 12% 28%
D2 12% 28%

(上記仮定に基づく存在比率)
子どもの福祉を真面目に考える場合、A1・A2の組み合わせ以外の場合(約23万人)について個別に対応を考えていくべきでしょう。

面会交流と養育費の法的な強制力の差異

面会交流ばかり取り上げられ、養育費の問題がないがしろにされていると言った主張もあります*2が、個人的には逆だと感じています。どちらかと言えば、養育費問題に対する支援の方が充実しているように思えます。
本来、面会交流と養育費は別々の事案であってバーターにするべきではない、というのが司法上の考え方ですが、事実上バーターとして交渉されています。
しかしながら問題はその強制力の違いです。

養育費については裁判所での判決なり調停調書なりで額が決定されれば法的な強制力を持ちます。もし別居親が養育費を支払わなくなった場合、同居親は裁判所に訴えて強制執行することができます。これは裁判所命令で会社の給料から差し押さえることのできる強力な手段です。弱点は、別居親が自営業や家族会社などの場合です。もちろん、無職でお金を持っていない場合も執行できません。経営主体が拒否すれば強制執行できませんが、一般的なサラリーマンであれば強制執行を逃れることはまず不可能です*3

これに対して面会交流については判決や調書で合意された内容が実行されなくても、同居親にはほとんど影響ありません。一番強力な法的手段は間接強制ですが、これは面会させない場合、一回につきいくら払えという裁判所命令に過ぎません。払わない・払えないと主張されたら、養育費のように差し押さえることはできません。理由はもちろん、片親家庭から金銭を取り上げたら、子どもの生活に影響が出るからです。
さらに言えば、同居親が面会交流を拒否する理由が、子どもが会いたがっていないから、というものであった場合、別居親にはそれを嘘だと証明する手段がありません。

このため、親権親がその気になれば容易に悪用できる制度になっています。これは上記の比率仮定を援用すれば、A1・C2の組み合わせにあたる12%、年間約3万人の別居親が新たにこういった同居親の悪意に晒されることになります。

一方、養育費を望んでも払ってもらえない状況は、D1・A2及びD1・C2の組み合わせにあたる42%、年間約10万人の同居親が養育費の不払いに新たに苦しむことになります。

これらはいずれも問題ですが、法的強制力を行使できる養育費問題と法的強制力がほぼ皆無の面会交流については別々に考える問題で、どちらかの存在を持って一方を否定するのは間違っています。

さらにこの他に養育費も払うし面会も望む別居親に対して、一切の関係を絶とうとする同居親のA1・D2の組み合わせが12%、年間約3万組の別居親と子どもの引き離しが生じていることになります。

*1:ただし、この辺は個々の夫婦の関係性・性格にもよります。別居親が同居親を精神的に支配しているような関係であった場合、同居親が強く出ることはできないでしょう。

*2:吉田容子弁護士の言 http://www.single-mama.com/media/20100625mainichi-souron.html

*3:転職して勤務先を明かさない、という手を使われると、執行が難しくなります。