2020年1月10日というのがどういう時期かというと、武漢で発生した原因不明肺炎について中国当局がWHOに報告(2019年12月31日)してから10日目、原因が新型コロナウイルスであることを突き止めて(2020年1月7日)から3日目、そして当時判明していた患者が最後に確認されて(2020年1月3日)から7日目、という時期です。そして、この頃PCR検査で新型コロナウイルスの判定ができるようになりました。
新規感染者が確認されない日が7日続いていたわけですが、PCR検査を広範囲にかけることによって海鮮市場とは関係のない患者が見つかり始めるのは6日後の1月16日以降です。
ちなみにCOVID-19に罹り2月に亡くなる李文亮医師は1月10日に咳の症状を示し始めますが、この時点では感染が確認されていません。
1月10日時点で知られている患者数はわずか41人で、多くは海鮮市場と関連のある人たちでした。
さて、米国や台湾がWHOは「新型コロナウイルスのヒトからヒトへの感染の懸念に初動で対応しなかった」*1などと非難しているようですが、2020年1月10日の時点でWHOは次のようなアドバイスを出しています。
https://www.who.int/news-room/articles-detail/who-advice-for-international-travel-and-trade-in-relation-to-the-outbreak-of-pneumonia-caused-by-a-new-coronavirus-in-china/International travellers: practice usual precautions
While the cause of the pneumonia seems to be a novel coronavirus, transmission potential and modes of transmission remain unclear. Therefore, it would be prudent to reduce the general risk of acute respiratory infections while travelling in or from affected areas (currently Wuhan City) by:
・avoiding close contact with people suffering from acute respiratory infections;
・frequent hand-washing, especially after direct contact with ill people or their environment;
・avoiding close contact with live or dead farm or wild animals;
・travellers with symptoms of acute respiratory infection should practice cough etiquette (maintain distance, cover coughs and sneezes with disposable tissues or clothing, and wash hands).
感染経路は不明なので感染地域(武漢)に入域する場合は、急性呼吸器感染症患者との密接な接触を避けるように、症状のある人は咳エチケット(cough etiquette)を心掛けるように、というアドバイスです。
一般的な予防策(usual precautions)ではありますが、ヒト・ヒト感染の可能性を考慮したアドバイスであることも確かですね。
中国当局もWHOもヒト・ヒト感染の可能性を否定したりはしていません。明確な証拠も無しにヒト・ヒト感染するなどとは言えないのは当たり前の話で、その点について米国や台湾の非難は、科学的な批判ではなく極めて政治的な非難という他ありません。