以前の記事のコメント欄でいただいた情報で、以下のようなものがあります。
アメリカでは年間80万近い18歳未満の児童が行方不明になるが、一番多いのは家出、二番目はなんと離婚・再婚した家族による拉致・誘拐なのだ。これをファミリーアブダクションと言うが、20万人にも昇るから驚きだ。三番目は迷子や事故による行方不明。家族以外の無関係者による誘拐は四番目なのだ。
http://www.tamagoya.ne.jp/mobi/sen5-08/2219_1.php
年間約20万件の家族による子供の誘拐があるのは事実ですが、内容をよく見ると、一般的なイメージとはかなり異なるようですね。
典型的なのは、誘拐されていた時間です。
1999年の家族による子供の誘拐件数ですが、203900件でした。その誘拐時間別内訳は以下の通りです。
時間 | 件数 | 割合 |
---|---|---|
1時間未満 | 6300 | 3% |
1〜6時間 | 33600 | 16% |
7〜24時間未満 | 7500 | 4% |
1〜7日未満 | 46600 | 23% |
1週間〜1ヶ月未満 | 48000 | 24% |
1ヶ月〜6ヶ月未満 | 29700 | 15% |
6ヶ月以上 | 12400 | 6% |
未帰還、所在判明*1 | 12700 | 6% |
不明 | 7100 | 3% |
年齢にもよりますけど、1時間未満の誘拐は日本では誘拐とはなかなか判定されないでしょうね。6時間も微妙です。1日以内に子供が帰ってきた事例で23%、1週間以内では46%、1ヶ月以内で70%です。さらに所在が不明なのは、わずかに3%と、一般的な誘拐とはかなり異なります。
ちなみに対象となっている子どもの年齢は以下の通りです。
年齢 | 件数 | 割合 |
---|---|---|
0-2 | 43400 | 21 |
3-5 | 47100 | 23 |
6-11 | 71000 | 35 |
12-14 | 35200 | 17 |
15-17 | 7200 | 4 |
連れ去りの時期も夏が一番多く、夏季休暇を別居親の所で暮らして、同居親のもとになかなか帰ってこなかった、というケースも多いことが示唆されています。
連れ去り直前に別居親が子供と一緒にいたとわかっているケースが約60%で、面会交流の延長として同居親家庭への帰宅が遅れたケースを誘拐とみなしていることも示唆していると言えます。
連れ去りの際に、脅迫や無理やり、武器を使ったというのもほとんどなく、危険なケースはほとんどないとも言えるでしょう。実際、20万件の誘拐に対し、警察に通報したのは約60%で、残り40%は通報していません。
通報しなかった理由は、家族だけで解決した、とか、警察は役に立たないと思った、の他、子供が傷つけられることはないと知っていた、というのもあります。ここまで来ると、同居親と別居親の間に信頼関係があるとさえ言えそうです。
連れ去った方の親ですが、州外まで連れ去ろうとするケースは20%以下で多くはないものの、連絡を取れないようにする行為は76%の事例で起きています*3。
Reality vs. Stereotype
http://www.missingkids.com/en_US/documents/nismart2_familyabduction.pdf
Although the family abductions described in this study typically had certain disturbing elements such as attempts to prevent contact or alter custodial arrangements permanently, they did not generally involve the most serious sorts of features associated with the types of family abductions likely to be reported in the news. Actual concealment of the child occurred in a minority of episodes. Use of force,
threats to harm the child, and flight from the State were uncommon. In contrast to the image created by the word “abduction,” most of the children abducted by a family member were already in the lawful custody of the perpetrator when the episode started. In addition, nearly half of the family abducted children were returned in 1 week or less, and the majority were returned within 1 month.
報告書でも、「誘拐」の言葉から連想されるような事態とは異なり、ほとんどの場合、連れ去りが起きた時点から子供は「正当な保護下 the lawful custody」にあったと指摘されています。
*1:調査時点で1ヶ月以上経過
*2:http://www.missingkids.com/en_US/documents/nismart2_familyabduction.pdf
*3:これもどの程度かは微妙です。「明日返すから、今日は連絡しなくてもいい」程度の内容も含まれているのではないかと思います。