インフルエンザ用のWHOのパンデミック・フェーズの定義に従えば、現時点でのパンデミック宣言は妥当だと思う

というより、これに文句言っている人たちの多くが、パンデミック宣言を天気予報か何かみたいに事前に宣言するものだと思ってそうなんですよね。

例えば、瀕死だけどまだ意識のある患者の容態を見て、“なぜまだ死亡宣告をしない”とか“なぜ昏睡状態だと言わない”とか文句言うようなものです。容態からみて、このままだと意識を失い、いずれ死にそうだと予想できたとしても、まだ意識があるうちにそんな宣言はしないのは当たり前。そうならないように努力すべきと言うのが本来の対応で、実際WHOは“パンデミックが迫っている”等の表現を用いて、各国に準備や対応を呼び掛けていました。


全世界12万人感染…WHO今になって“パンデミック”宣言(3/12(木) 15:35配信 WoW!Korea)
この記事も「今になって」と批判的なトーンで報じています。

新型コロナは昨年の12月末、中国で初めて報告されてから、ものすごいスピードで拡散していった。
しかしWHOは今年の1月30日になってやっと新型コロナに対し“国際的公衆保健の非常事態”を宣言し、後手に回った対応をしたとして非難をあびていた。
またWHOは先月28日にはグローバル危険レベルを最高段階である“かなり高い”に上げながらも、パンデミック宣言についてだけは留保的な立場をみせていた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200312-00253530-wow-kr

しかし、1月20日時点で確認された感染者数は 282人(うち、278人が中国)に過ぎず、PHEIC宣言を見送った1月23日時点でも確認感染者数は581人(うち、574人が中国)でしたから、この時点では地域的な流行であって、PHEICでないという判断も妥当な範囲ですし、パンデミックでないことも明らかです。
1月30日時点での確認感染者数は 7818人(うち、7736人が中国)*1となり、中国国外への感染が広がっている事態を踏まえて、PHEICを宣言しましたが、それでも中国国外での感染者数は 100人足らずでしたから、この時点においてもパンデミックでないことは明らかです。

2月28日に至って確認感染者数は83652人(うち、78961人が中国)に達し、WHO定義の地域区分の複数で(WPRO以外で)最大数百人規模の確認感染者が生じ、ここでようやくパンデミックかどうか悩む事態に至るわけです。
ちなみにWHO定義の地域区分では、中国・日本・韓国・オーストラリアなどは WPRO(Western Pacific Region) として一つの地域にまとめられています*2。そのため、韓国で数千人の感染者が確認されても、それは中国を含む一地域内での流行という扱いになります。
2月28日時点で重要だったのは、感染者650人となったイタリアを含むEURO (European Region)や感染者245人となったイランを含むEMRO (Eastern Mediterranean Region)で感染が広がっていたことですが、それでもこの時点では数百人規模で、community level outbreaks と言えるかというと微妙なところで、パンデミックではないという判断はなお妥当だったとも言えます。

イタリアでの感染拡大が明らかにcommunity level outbreaks となり、それがEUROの複数の国で生じたことから、ようやくパンデミックであるといえる状況になったというのは、別におかしくなく妥当な範囲でしょう。

NHKの「WHO「新型コロナウイルスはパンデミックといえる」 (2020年3月12日 11時45分新型コロナウイルス )」でも言及されていますが、WHOはインフルエンザ以外にパンデミックの定義を明確に確定しているわけではありません。

ですから、今回のCOVID-19に対してパンデミックか否かを判断するにあたっては、インフルエンザでの定義を参考にしていることは自明でしょう。
そのインフルエンザでのパンデミックの定義も6段階で示した古い基準と4段階の新しい基準があります。

Phase 1~6 で示したパンデミックに至るまでのフェーズの定義

Phase 1 no viruses circulating among animals have been reported to cause infections in humans.

In Phase 2 an animal influenza virus circulating among domesticated or wild animals is known to have caused infection in humans, and is therefore considered a potential pandemic threat.

In Phase 3, an animal or human-animal influenza reassortant virus has caused sporadic cases or small clusters of disease in people, but has not resulted in human-to-human transmission sufficient to sustain community-level outbreaks. Limited human-to-human transmission may occur under some circumstances, for example, when there is close contact between an infected person and an unprotected caregiver. However, limited transmission under such restricted circumstances does not indicate that the virus has gained the level of transmissibility among humans necessary to cause a pandemic.

Phase 4 is characterized by verified human-to-human transmission of an animal or human-animal influenza reassortant virus able to cause “community-level outbreaks.” The ability to cause sustained disease outbreaks in a community marks a significant upwards shift in the risk for a pandemic. Any country that suspects or has verified such an event should urgently consult with WHO so that the situation can be jointly assessed and a decision made by the affected country if implementation of a rapid pandemic containment operation is warranted. Phase 4 indicates a significant increase in risk of a pandemic but does not necessarily mean that a pandemic is a forgone conclusion.

Phase 5 is characterized by human-to-human spread of the virus into at least two countries in one WHO region. While most countries will not be affected at this stage, the declaration of Phase 5 is a strong signal that a pandemic is imminent and that the time to finalize the organization, communication, and implementation of the planned mitigation measures is short.

Phase 6, the pandemic phase, is characterized by community level outbreaks in at least one other country in a different WHO region in addition to the criteria defined in Phase 5. Designation of this phase will indicate that a global pandemic is under way.

https://www.who.int/csr/disease/swineflu/phase/en/

4段階で示したパンデミックに至るまでのフェーズの定義(2013)

Interpandemic phase: This is the period between influenza pandemics.

Alert phase: This is the phase when influenza caused by a new subtype has been identified in humans.5 Increased vigilance and careful risk assessment, at local, national and global levels, are characteristic of this phase. If the risk assessments indicate that the new virus is not developing into a pandemic strain, a de-escalation of activities towards those in the interpandemic phase may occur.

Pandemic phase: This is the period of global spread of human influenza caused by a new subtype. Movement between the interpandemic, alert and pandemic phases may occur quickly or gradually as indicated by the global risk assessment, principally based on virological, epidemiological and clinical data.

Transition phase: As the assessed global risk reduces, de-escalation of global actions may occur, and reduction in response activities or movement towards recovery actions by countries may be appropriate, according to their own risk assessments.

https://www.who.int/influenza/preparedness/pandemic/GIP_PandemicInfluenzaRiskManagementInterimGuidance_Jun2013.pdf?ua=1

旧基準は感染地域の拡大状況などを条件とした比較的明確に判断できる基準ですが、2013年の新基準は「ウイルスの毒性や加盟国の医療体制、経済状態なども加味し、死者が続出するなど危険性が高いと判断すれば「パンデミック」とする」という総合的な判断によるものになっています。

比較的わかりやすい旧基準に照らせば、COVID-19がパンデミックになったのはどう考えても3月に入ってからですし、新基準に照らしても「死者が続出するなど危険性が高い」状況が各国に広がったのはやはり3月になってから(特にイタリアでの死者数の急増)ですので、パンデミックと判断したのが今だというのはそれなりに妥当だと言えます。

まあ、少なくとも“一カ月前にパンデミックと宣言すべきだった”という主張は無茶苦茶で、いったいどんな定義を想定して主張しているのか説明してもらいたいところですね。

この件で容易に中国陰謀論に飛びつく連中は、パニック時に中国人迫害に加わらないよう厳に自分を戒めてほしいと思います。



9年前の世間の認識はそれなりに正しかったのかもしれない

今の安倍政権のCOVID-19対応の体たらく振りを見ていると、9年前の調査で示された世間の認識は正しかったのかも知れませんねぇ。
この調査のことですが。

自民党政権ならば、震災や原発事故への対応は適切にできたか?--東洋経済1000人意識調査

2011/06/10 9:00

「そうは思わない」が最も多い答え。東日本大震災福島原発の事故対応について、菅政権への批判が強まっている。「自民党政権ならば、より適切に対応できたと思いますか」と聞いたところ、「そうは思わない」の回答が約6割を占めた。一方で「わからない」も約2割あった。
f:id:scopedog:20200311235124p:plain

https://toyokeizai.net/articles/-/7457



橋下徹氏がひどい歪曲で安倍政権を擁護している件

この件。
橋下徹「新型コロナで政府の初動が遅れた本当の理由」(3/11(水) 11:16配信 プレジデントオンライン)

安倍政権のCOVID-19(2019型コロナウイルス肺炎)対応不備の一つである指定感染症への指定遅れですが、橋下氏はこの責任を厚生科学審議会に押し付け安倍政権の責任を否定し、逆に安倍政権の措置を賛美する方向の記事を書いています。

「■新型コロナウイルス肺炎「騒動」の出発点は専門家の判断ミス」とある節タイトル部分の記載がほとんど全編デタラメというひどいものです。

1月20日習近平が乗り出してから武漢の状況が世界に発信された?

新型コロナウイルス肺炎「騒動」の出発点は専門家の判断ミス

 昨年末に、中国の武漢市で怪しい感染症が広まっているという噂が発生したが中国当局はこれを必死にもみ消していた。
 そして今年に入って、その騒動がどんどん大きくなり、1月20日、ついに習近平国家主席が乗り出した。ここで、武漢市が新型コロナウイルス肺炎で大変なことになっていることが世界的に発信された。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200311-00033424-president-pol

まず、2019年12月時点での中国当局の対応が優れたものではなかったという指摘ならば否定はしませんが、「中国当局はこれを必死にもみ消していた」というと、12月31日に中国当局がWHOに原因不明の肺炎について報告していることから、橋下説は控えめに言っても誇張でしょう。

On 31 December 2019, WHO was informed of a cluster of cases of pneumonia of unknown cause detected in Wuhan City, Hubei Province of China.

https://www.who.int/westernpacific/emergencies/covid-19

橋下記事では「武漢市が新型コロナウイルス肺炎で大変なことになっていることが世界的に発信された」のは2020年1月20日以降だと読めますが、これは誤りで、実際には2019年12月31日の時点で中国当局は原因不明の肺炎(この時点では原因不明)についてWHOに報告しています。また、それを受けて、台湾は武漢からの帰国者に対して肺炎症状の申告と10日間の健康観察を求める措置をとっています*1
ですから、12月31日以降1月20日までに日本が何も対応を取らなかったとすれば、それは中国が隠蔽したからではなく、既に世界に発信されていた情報を日本が見落としたからにすぎません(実際には日本の厚労省も1月6日に注意喚起を出しています)。

指定感染症に指定するか判断するのは厚生科学審議会の権限?

続けて橋下氏はこう言っています。

 日本において感染症に対して政治行政が積極的に対応するためには、まずはその感染症が「法律上に位置づけられる感染症」であることが必要である。
 当時、日本において新型コロナウイルス肺炎は法律上の感染症ではなかった。そこで法律上の感染症に指定する作業(指定感染症への指定)が必要になるのだが、それは厚生労働省に置かれた厚生科学審議会の専門家が判断することになっていた。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200311-00033424-president-pol

そもそも新感染症に指定しておけばよかったという話*2もありますが、橋下氏は都合が悪いのかそれを無視しています。
まあ、それはおくとして、問題は「法律上の感染症に指定する作業(指定感染症への指定)」を「厚生科学審議会の専門家が判断すること」だと言っている点です。おそらく感染症法7条3項の「政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、あらかじめ、厚生科学審議会の意見を聴かなければならない。」という条文に依拠した主張だと思いますが、そのまま条文読めばわかる通り、厚生科学審議会は意見を言うだけであって、判断する権限は持っていません。

厚労省設置法8条にも、厚生科学審議会のつかさどる事務は、あくまでも“公衆衛生に関する重要事項に関し、厚生労働大臣又は関係行政機関に意見を述べること”だと書かれていて指定するかどうかの判断は求めていません。

厚生科学審議会がWHOがまだ非常事態宣言を出していないという理由で新型コロナウイルス肺炎の指定感染症指定を見送っていた?

橋下氏はこうも言っています。

 この専門家会議は、新型コロナウイルス肺炎を指定感染症に指定するのは時期尚早として、指定を見送っていた。その主たる理由は、WHO(世界保健機関)がまだ非常事態宣言を出していないから、というものであった。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200311-00033424-president-pol

“厚生科学審議会がCOVID-19の指定感染症指定に反対した”という証拠を橋下氏は提示していませんので、真偽を判定しにくいのですが「WHO(世界保健機関)がまだ非常事態宣言を出していないから」という理由を挙げているのを見ると、ほぼ間違いなくウソですね。

例えば、MERS(中東呼吸器症候群)も2014年7月16日の政令で指定感染症に指定されています*3が、MERSに関してWHOは、PHEIC(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)を宣言していません。それどころか、MERSは日本国内で確認されてもいません。それでも、MERSは指定感染症に指定されています。
今回のCOVID-19に対してだけ日本国内で感染者が確認された(2020年1月16日)にもかかわらず、WHOが非常事態宣言を出していないという理由で厚生科学審議会が指定感染症指定に反対したというのは、常識的に考えてありえないと思います。

橋下氏がガセを掴んだのか、自ら尾ひれをつけたのかいずれかだと思われます。

WHOは「大騒ぎするな。中国への渡航制限や、中国からの入国制限をやるべきではない」と言い続けた?

さらに橋下氏はこう続けます。

 WHOも国際的な専門家集団とされているが、彼ら彼女らは、「大騒ぎするな。中国への渡航制限や、中国からの入国制限をやるべきではない」と言い続けていた。
 (略)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200311-00033424-president-pol

しかし、WHOはPHEICの宣言を見送った1月23日の時点でも、“中国国内においては緊急事態である”と明言しています。

I’m not declaring a Public Health Emergency of International Concern today. As it was yesterday, the Emergency Committee was divided over whether the outbreak of novel coronavirus represents a PHEIC or not. Make no mistake, this is though an emergency in China. But it has not yet become a global health emergency. It may yet become one.

https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/transcripts/ihr-emergency-committee-for-pneumonia-due-to-the-novel-coronavirus-2019-ncov-press-briefing-transcript-23012020.pdf?sfvrsn=c1fd337e_2

また、広範な渡航制限や入国制限(broader restrictions on travel or trade)は推奨しないが、封じ込めの一環としての“exit screening at airports”は推奨しています。

For the moment, WHO does not recommend any broader restrictions on travel or trade. We recommend exit screening at airports as part of a comprehensive set of containment measures.

https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/transcripts/ihr-emergency-committee-for-pneumonia-due-to-the-novel-coronavirus-2019-ncov-press-briefing-transcript-23012020.pdf?sfvrsn=c1fd337e_2

ちなみに1月20日時点で確認された感染者数は、282人(うち日本1、韓国1、タイ2)*4で、1月22日時点では581人(うち日本1、韓国1、タイ4、米国1)*5でした。
その時点で、WHOは新型コロナウイルスの危険性については以下のように説明しています(1月23日時点)。

We know that this virus causes severe disease, and that it can kill, although for most people it causes milder symptoms. We know that, among those infected, one quarter of patients have experienced severe disease. We know that most of those who have died had underlying health conditions such as hypertension, diabetes, or cardiovascular disease that weakened their immune systems.

https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/transcripts/ihr-emergency-committee-for-pneumonia-due-to-the-novel-coronavirus-2019-ncov-press-briefing-transcript-23012020.pdf?sfvrsn=c1fd337e_2

これで「大騒ぎするな。」と言っているように聞こえるのなら、どうかしています。
ちなみにWHOはもともと渡航制限や入国制限には消極的で、2009年の新型インフルエンザの際も同様の対応をとっています*6。WHOがそういう方針であることは世界保健規則を見ても明らかです。

橋下氏による安倍政権賛美

そして、橋下氏は日本政府のCOVID-19対応の不備の責任を中国やWHO、厚生科学審議会の専門家に転嫁したうえで、満を持して安倍政権賛美を始めます。

 このように新型コロナウイルス肺炎を指定感染症に指定しない専門家会議は頼りにならないので、安倍政権は、1月28日に政治判断(閣議決定)によって、指定感染症に指定した。法律上の建前は厚生科学審議会という専門家会議の意見を聴かなければならないことになっていたが、安倍政権は頼りにならないこの専門家会議の議論をすっ飛ばし、形式的に専門家の間で書面を回覧する持ち回り決議という方法で手続きを進めたのである。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200311-00033424-president-pol

2014年にMERSを指定感染症に指定した際も別に厚生科学審議会が開かれたわけではないので*7、その時と同じように対応しただけで、COVID-19に対して、特別な対応をしたわけでもないと思われます。
橋下氏は、安倍首相を賛美するために、安倍首相が英断を下したかのように話を盛っているとしか言いようがありません。

 こうして安倍政権は、政治判断による閣議決定によって、新型コロナウイルス肺炎を指定感染症に指定したわけで、ここでは厚生科学審議会という専門家会議は事実上まったく機能していなかった。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200311-00033424-president-pol

そもそも、厚労相が厚生科学審議会の意見をいつ求めたのかすら全く不明で、橋下氏も明らかにしておらず空想に満ちた安倍賛歌としか評しようがありません。
また、閣議決定が政治判断なのは当たり前です。

 このように新型コロナウイルス肺炎が指定感染症に指定されたことによって、ここから日本政府は、様々な行動をとることができるようになったのである。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200311-00033424-president-pol

別記事でも何度か指摘しましたが、指定感染症、新感染症への指定は厚労省の権限であり、政府の一存でできることです。日本政府が行動をとる必要があると認識しているなら、厚生科学審議会の意見に関わりなく、政令を公布すればよかっただけです。

 2月1日からは、中国武漢市からの入国制限が始まり、感染症法・検疫法の適用も始まった。すべては政治判断による指定感染症への指定から始まったのであり(厳密に言えば入国制限は、感染症を理由とする規定ではなく公安を理由とする規定を使うウルトラCをやったので指定感染症の指定とは関係ないのだが)、当時、専門家たちは、新型コロナウイルス肺炎に対してここまでの危機意識をほとんど持っていなかったのである。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200311-00033424-president-pol

感染症法・検疫法の適用」が「指定感染症への指定から始まった」のは当たり前の話で賛美するようなことでもなく、むしろ指定が遅かったという批判がされるべきですが、橋下氏はその責任を中国、WHO、厚生科学審議会の専門家を押し付けて、安倍政権を免罪しています。

さらに言えば、検疫法上の停留や隔離に関する規定への適用は、1月28日の政令ではなく2月13日の政令によってであり、さらに2週間ほど遅れています。

橋下氏が「ウルトラC」と絶賛している入管法5条1項14号の適用は、検疫と関係なく拒絶できる条文で絶賛するようなことではなく、むしろ批判すべきでしょうが、ファシズムの傾向の強い橋下氏にとっては絶賛の理由になっているようです。
なお、「1月31日の閣議決定」で「本邦への上陸の申請日前14 日以内に中華人民共和国湖北省における滞在歴がある外国人及び同省において発行された同国旅券を所持する外国人」の入国を拒否し、2月12日の閣議了解湖北省のほかに浙江省を追加、2月16日の閣議了解でウエステルダム号の乗客・乗員を追加、その後、韓国の大邱及び慶尚北道清道郡を追加し、さらに3月6日の閣議了解で、韓国の慶尚北道慶山市,安東市,永川市,漆谷郡,義城郡,星州郡及び軍威郡とイランのコム州,テヘラン州を追加、3月10日の閣議了解で、イランのアルボルズ州,イスファハン州,ガズヴィーン州,ゴレスタン州,セムナーン州,マーザンダラン州,マルキャズィ州及びロレスタン州とイタリアのヴェネト州エミリア=ロマーニャ州ピエモンテ州マルケ州及びロンバルディア州サンマリノ全域を追加しています。

日本政府は防疫上の理由だと主張するでしょうけど乱用と言っていい状況です。
例えば、ウエステルダム号の乗客・乗員は今もって上陸拒否の対象とされていますが、2月16日の決定から既に3週間以上経過している以上、既に防疫上の正当性があるとは思えません。

また、橋下氏は「当時、専門家たちは、新型コロナウイルス肺炎に対してここまでの危機意識をほとんど持っていなかった」と決めつけていますが、国立感染症研究所は1月17日の時点で感染症法15条の適用を前提とした調査を開始しています*8。橋下氏が責任を押し付けている厚生科学審議会のメンバーには国立感染症研究所の前所長も含まれていますが、彼らが危機意識を持っていなかったとか、普通に考えてありえませんね。

橋下氏は「この専門家会議は、新型コロナウイルス肺炎を指定感染症に指定するのは時期尚早として、指定を見送っていた」と言っていますが、具体的にいつ、厚生科学審議会の誰が、指定感染症への指定に反対したのか明確にすべきでしょうね。



リアルメーターもギャラップも大統領支持率は上昇しているという結果

[리얼미터 3월 1주차 주간동향] 文 대통령, 긍정 47.9% vs 부정 48.7%, 民 41.7%, 통합 31.2%
데일리 오피니언 제391호(2020년 3월 1주) - 부동산 정책 평가와 집값 전망, 코로나19

COVID-19(2019年コロナウイルス肺炎)の感染者数が7000人もの規模になったことで政権支持率が下がるかと思いきや、上昇傾向を示しています。まあ、否定的評価の方がやや高い状況なのは変わりませんが。
感染拡大の原因は新興宗教団体だとみなす傾向が強く、政府の防疫対応に責を求めるような動きにはつながっていないようです。

    リアルメーター ギャラップ
支持  47.9% 44%
不支持 48.7% 48%


韓国保健相、「ピークは過ぎたと期待」 新型コロナ対策の成果に自信(3/10(火) 11:50配信 CNN.co.jp)

まだ油断はできないでしょうが、新規感染者数が減少傾向にあるのも確かなようです。

3月4日→5日:438人増加*1
3月5日→6日:518人増加*2
3月6日→7日:483人増加*3
3月7日→8日:367人増加*4
3月8日→9日:248人増加*5
3月9日→10日:131人増加*6
3月10日→11日:242人増加*7


そのうえで韓国政府は、できる限り早い段階で患者を発見するためにも検査は重要であると指摘しています。

韓国は国民が無料で簡単に検査を受けられる態勢の確立に力を入れてきた。1日に約1万5000回の検査が可能で、これまで全土で19万6000回の検査を無料で実施。北部の都市、高陽(コヤン)では、車に乗ったまま検査を受けられるドライブスルー方式の施設まで設置された。
「早い段階で患者を発見することが非常に重要だ。この非常に感染力の強いウイルスへの対応によって、我々は単純な教訓を学んだ。これはいったん始まれば、たちまち拡散して広範に広がる」「検査能力の引き上げは非常に重要だ。そうすれば、ウイルスを持つ人物を特定し、ウイルスを封じ込められる」(朴保健相)
当局は症状が軽い患者のための施設も手配した。朴保健相によると、患者のうち入院が必要なのは約10%のみで、残りは自分でウイルスに対抗できる免疫力を持っているという。
韓国疾病対策センターによると、同国では全症例のうち約4分の3が大邱(テグ)市で確認されており、63%は新興宗教の「新天地イエス教会」に関連している。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200310-35150549-cnn-int

「早い段階で患者を発見することが非常に重要だ」というのは、まあその通りだと思います。



WANが露骨に離婚後共同親権に反対している件

この件。
まだ署名できます【2月28日】1万人 署名提出記者会見:STOP共同親権 DV・虐待被害者の安全を守って 共同親権法制化は 慎重な議論を (2020.02.27 Thu)

まあ、WANのメンバーを見れば、さもありなんとは思いますけどね。

理事長 上野千鶴子
副理事長 伊田久美子(法人担当)、古久保さくら(サイト担当)
理事 赤澤千鶴・池田啓子・伊藤静香・岡野八代・小川真知子・渋谷典子・千田有紀・寺町みどり・虎岩朋加・中塚圭子・中西豊子・萩原なつ子・星野智恵子・牟田和恵・八木峰・養父知美・和田享子(あいうえお順)

https://wan.or.jp/article/show/313

上野千鶴子氏とか国際離婚時の連れ去りを禁止するハーグ拉致条約の締結にも反対していましたから、“離婚後の親権は母親が独占すべし”というガッチガチの思考回路なんだろうなぁ、と。
他の先進国のほとんどが離婚後共同親権を認めているにもかかわらず、日本だけは“離婚後共同親権を認めればDV・虐待被害者を守れない”と信じる思考回路はちょっと理解できません。
また、DV・虐待被害者を守るのであれば、DV・虐待対策の整備を求めるべきであって、整備されないことを前提に離婚後共同親権に反対するのは筋違いです。

そもそも、夫からDVを受けた挙句に家から追い出され子どもと引き離された女性もいるのに、そのような女性を救済する仕組みが一切存在しない現状を放置すること自体がフェミニズムの名に値しないでしょう。

日本民法は離婚後共同親権を認めていない以上、離婚すれば両親の一方は必ず親権を失うわけですが、親権を失ったことをもって、まるでDV加害者・虐待加害者であるかのような言説があふれている現状は、極めて差別的と言わざるを得ません。

それにしても、他の先進国が離婚後共同親権を認めている事実や国連子どもの権利委員会から共同親権を認める法改正を求められている事実に背を向けて強制的な離婚後単独親権に固執するというのは、どうにもガラパゴスな感じですねぇ。



新型インフルエンザ等対策特別措置法は新型コロナにも使えたけど、政府が使わなかったから使えない、というだけの話

安倍総理「新型コロナは『新型コロナ』だと正体がわかっている」」という増田に対して、以下の増田が反論しているんですが。

増田Aの反論
増田Bの反論

そもそもの事実として、日本政府は2003年のSARSに対して新感染症に指定しています。
時系列順に言うと、こんな感じ。

2002年11月16日、中国で重症非定型性肺炎が集団発生
2003年3月15日、WHOが症例の定義を発表し、SARS命名
2003年4月3日、日本政府、SARS感染症法上の新感染症に指定。
2003年4月16日、SARSの原因が当時知られていなかった新型コロナウイルスであることを特定。
2003年7月5日、SARS終息宣言。
2003年7月14日、日本政府、SARSを指定感染症とする政令を公布。
2003年10月16日、SARSを一類感染症とする改正感染症法公布(11月5日施行)
2006年12月8日、SARSを二類感染症とする改正感染症法公布(2007年4月1日、6月1日施行)

SARSに対して日本政府はまず新感染症として扱い、SARSが終息した後になって指定感染症に変更し、その3か月後に法改正で一類感染症とし、さらに2006年になって二類感染症へと変更しています*1 (これはSARSが一類から二類にランク落ちしたのではなく、一類が分割されて一類と二類になったという法改正。例えば、2003年時点で二類感染症であったコレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフスは2006年の改正でそのまま三類に移行している*2)。

なぜ、日本政府が今回の新型コロナウイルスに対して同様の対応を取れなかったのかというと、単に日本政府がそのようにしなかったからというだけ。

多分、“今回の新型コロナウイルス感染症は既にウイルスが特定されているから新感染症に指定できない”という反論があるでしょうが、SARSの時は新感染症の指定こそウイルス特定前でしたが、ウイルス特定後は2003年7月5日の終息宣言までずっと新感染症扱いのままでしたから、理由になりません。

増田Aは、感染症法の条文を上げて今回の新型コロナウイルス感染症感染症法上の新感染症にはならないと主張しています。

第六条 この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症をいう。
(抜粋)
9 この法律において「新感染症」とは、人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=410AC0000000114#30

増田Aは、「広く知られている通り、新型コロナウイルスは罹患しても重篤になる確率が低い」し、「「病状や治療の結果が明らかに異なる」に該当しない」から新感染症ではないと主張していますが、間違いです。

条文にいう「当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤」というのは、重症化する確率ではなく発症・進行した場合の病状のことですから、重症化し死亡することのある今回の新型コロナウイルス感染症にも当てはまります。
また、SARSも含めて治療法は確立していませんから、治療法の確立している「既に知られている感染性の疾病」とは「治療の結果が明らかに異なる」とも言えます。
そして言うまでもなく「当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある」と認められます。

増田Aは、「まぁ咳が出て重篤な場合は肺炎で、対症療法をするコロナウイルスって、一般的に言われる「風邪」ですからね。」と言っていますが、個人の感想としてはそれでも良いと思いますけど、現実にはWHOが国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言している疾患ですから、政治の世界ではそれに相当する対応を求められるのは当たり前の話です。


増田Bは2002年の感染症法制定時の国会での議論を根拠に、今回の新型コロナウイルス感染症が新感染症ではないと主張しています。

上記の通り原因が分かっていない、一類感染症相当の重篤感染症が「新感染症」と定義される。
COVID-19は原因も分かっており、重篤度も一類感染症ほどでないので「指定感染症」となる

https://anond.hatelabo.jp/20200302225601

これも間違いで、SARSの時は原因ウイルスが特定された後も新感染症として扱っていました。「重篤度も一類感染症ほどでない」というのも増田Bが引用している直後の発言を見れば間違いだとわかります。

○小林(秀)政府委員 そもそも一類を分けるときには、感染力とか重篤度とかそういうもので一類をグルーピングしておりますが、それとあわせて、一類のほかの病気との比較でもって考えるものでありまして、重篤度が一番だとか感染力が一番だとかという判断をしているわけではございません。
 それは、総合的に判断をして一類を決めていると同じように、総合的に判断をして新感染症と定めるということになるわけでございます。

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=114204237X01419980527&spkNum=298&single

つまり、重篤度だけではなく感染力も含めて総合的に判断して新感染症か否かを決めるわけで、重篤度が低くても感染力が高ければ、一類相当として新感染症とされることもありうると政府側は回答しています。

なお、このやり取りは2003年5月27日のもので、この時点では後の法改正で一類に分割される感染症も、一類としてまとめて扱われていました*3SARSも当初は一類で分類され、一類と二類を分割する2006年の法改正で二類になったという経緯があります。ですから、新感染症は一類相当という2003年の認識を踏まえると、現時点で一類相当および二類相当であれば新感染症になりうるわけです。

したがって、新型コロナウイルス感染症を仮に二類のSARS相当だとみなしたとしても、2003年での議論を踏まえれば新感染症として判断することは可能ですし、おかしなことでもありません。

早い話、指定感染症に指定した1月28日の政令の時点で想定したよりも感染力が強力であるため新感染症として取り扱う必要があると政府が判断すれば、そのように対応することは出来る法律になっています。
安倍政権がそれをやらないのは、1月28日の時点で判断ミスを犯したことを認めたくないからで、法の不備ということにして判断ミスの責任を逃れようとしているだけのことでしょう。

あと、感染症法も新型インフルエンザ特措法も、それぞれ議論はあります。

新型インフルエンザ等対策特別措置法案に反対する会長声明
特別寄稿 感染症新法の問題点と今後のあり方について

それらの批判とは別個の問題として、法律的には対応できるという話です。



関連:あほか - 誰かの妄想・はてなブログ版

調べてみたら台湾の対応がめちゃくちゃ早かった

台湾が中国からの入国を早期に禁止した点(1月22日)が注目されがちですが、台湾衛生福利部の発表を見ると2019年12月31日に最初の通知を出しています。

因應中國大陸武漢發生肺炎疫情,疾管署持續落實邊境檢疫及執行武漢入境班機之登機檢疫 (資料來源:疾病管制署建檔日期:108-12-31更新時間:109-01-02)

この時点では詳細不明ながら武漢で肺炎が流行していることはわかっており、それを踏まえて、武漢からの入国者は少なくとも10日間、自身の健康状態に留意し、発熱・呼吸器症状が出た場合には感染症専門の電話で報告し渡航歴を医師に伝えるように、との通知を出しています。台湾版CDC(衛生福利部疾病管制署)が積極的に動いている印象です。
日本の厚労省武漢での肺炎を報じたのが2020年1月6日ですから、それより一週間も早く発表し、入国者自身に10日間の健康観察を求めるというのは極めて早いと言えます。

武漢發生肺炎疫情:

武漢直航入境的旅客請注意以下事項:

留意自身健康狀況至少10天
身體不適請撥打1922防疫專線戴上口罩儘速就醫
就醫時告知醫師相關旅遊史

https://www.mohw.gov.tw/cp-4250-50810-1.html

台湾当局は1月3日にも追加情報を発して、検疫措置の維持や入国時の症状申告要請、12月31日に出した10日間の自己観察要請の継続を求めています。
關注中國大陸武漢市不明原因肺炎疫情 持續維持現有登機檢疫等防檢疫機制(資料來源:疾病管制署建檔日期:109-01-03更新時間:109-01-03)


ところで韓国中央日報は2月25日にこう報じています。

防疫対策が支持率に大きな影響…蔡英文氏急騰、安倍氏急落

2/25(火) 12:00配信
(抜粋)
これは蔡総統が初当選し就任した2016年5月(69.9%)に続き2番目に高い支持率だ。今回の調査で蔡政権の防疫対策について回答者の75.3%が100点満点中「80点以上」の高い評価を下した。
先月22日、台湾政府は新型コロナウイルスの発祥地、中国武漢からの旅行者入国を禁止した。その後事態が更に悪化すると6日から中国人の入国を全面禁止した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200225-00000030-cnippou-kr

以前の記事での台湾に関する記載はそれを前提に書いたのですが、台湾当局のサイトを見るとどうも間違っていたようです。

因應中國大陸武漢肺炎疫情,指揮中心持續統籌各部會資源人力,全力守護國內防疫安全(資料來源:疾病管制署建檔日期:109-01-22更新時間:109-01-22)」にある通り、1月22日時点では、既にそれまでに強化した検疫措置を継続する旨の提示と再喚起を行っていますが、ここで入国禁止にしたというわけではなさそうです。

翌1月23日(武漢封鎖の開始日)に警戒レベルを上げていますが(「因應武漢肺炎疫情,中央流行疫情指揮中心疫情等級提升至第二級,春節期間各項防疫工作不放鬆,共同維護國民健康」)、湖北省の中国人入国を全面禁止にしたのは1月25日になってからです。

因應中國大陸新型冠狀病毒肺炎疫情,中央流行疫情指揮中心訂定陸籍人士來臺限制

資料來源:疾病管制署建檔日期:109-01-26更新時間:109-01-30
鑒於中國大陸新型冠狀病毒肺炎疫情之病例數持續增加,中央流行疫情指揮中心昨(25)日召集各部會研議中國大陸人士來臺之相關限制,並做成下列決議:

全面禁止湖北省陸人來台。
湖北省以外,觀光旅遊、社會交流、專業交流、醫美健檢交流暫緩受理,已經發入臺許可證者推遲來臺。但防疫交流、人道就醫、社會交流之團聚或隨行團聚、專業交流之駐點服務、投資經營管理(含陪同人員),經審查後獲准來臺者,須配合自主健康管理14天。
陸生即日起至2月9日暫緩來臺。
商務活動交流,除履約活動、跨國企業內部調動(含陪同人員)外,暫緩受理;已經發入臺許可證者推遲來臺。獲准來臺者,須配合自主健康管理14天。
陸配回臺(含湖北省),限制居住,自主健康管理14天。
小三通部分:全面暫緩陸人以小三通事由(含社會交流、藝文商務交流、就學、旅行)至金馬澎離島;已發入臺許可證者推遲來臺。
如有相關疑問,請洽免付費防疫專線1922(或0800-001922)。​

https://www.mohw.gov.tw/cp-4636-51211-1.html

ただ、この時点でもなお、湖北省に行っていた台湾人の帰国入国は14日間の自主的健康管理のみ課して認めています。

その後、2月4日に過去14日間以内に中国本土、香港、マカオに寄港したクルーズ船の受け入れを停止し(嚴守邊境,14天內曾停靠中港澳之郵輪不得靠岸)、2月6日に入国条件を厳格化しています。

有關自中港澳地區入境之規定,中央流行疫情指揮中心補充說明如下:
一、國人:
 自2月6日起,有中港澳旅遊史者,需居家檢疫14天。
 申請獲准至港澳入境者,需自主健康管理14天。
二、中國大陸人士:暫緩入境。
三、港澳人士:自2月7日起,入境後需居家檢疫14天。
四、外國人:自2月7日起,14天內曾經入境或居住於中國、香港、澳門的外籍人士,暫緩入境。
五、上述措施將視未來疫情狀況調整更新。

https://www.mohw.gov.tw/cp-4635-51367-1.html


こうしてみると、台湾当局も別に武漢での感染症拡大を受けていきなり強力な入国制限を行ったわけではなく、武漢で原因不明の肺炎が出ていることを軽視せず、まずは入国者個人に10日間の自主的健康管理を求めることから始め、事態が深刻化するにつれて、それに対応する措置の強化を行ってきたと言えそうです。武漢からの直行便に対する検疫措置は2019年12月31日から開始し、1月22日までに38便4625人の乗員・乗客を検疫し、新型コロナウイルス起因ではないものも含めて重度の肺炎患者をピックアップして対応しています。
1月25日に湖北省武漢からの入国を禁止した時、その26日前までの入国者に対する検疫も行っていたため、既に感染者が入国している可能性をかなり減らすことができていたことになります。

日本も1月6日の時点で武漢からの帰国者に対して自己申告を求める措置をとってはいますが、台湾のように10日間の自主的健康観察や感染症専門の相談窓口を示したりはしていません。

日本では、これまで上記肺炎と関連する患者の発生の報告はありませんが、武漢市から帰国される方におかれましては、咳や発熱等の症状がある場合には、マスクを着用するなどし、医療機関を受診していただきますよう、御協力をお願いします。なお、受診に当たっては、武漢市の滞在歴があることを申告願います。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08767.html

「咳や発熱等の症状がある場合」には病院に行けと言っているだけで、感染症として情報を集約するつもりも無ければ、感染症専門の医療機関を指定するでもありません。

台湾でも感染者数は増加しており、3月1日現在で40人となっています*1。中国からではなく、日本や中東を旅行した人から感染が広がっているものの今のところは追跡できているようです。このまま感染を封じ込められるか、それとも日本のように市中感染が広がるかはわかりませんが、少なくとも台湾当局が日本当局よりすばやく対応したことだけは確かと言えます。




ちなみに、日本の厚労省の対応はこんな感じ。

(12)厚生労働省
・1月6日、自治体、医師会、検疫所に対し、中華人民共和国湖北省武漢市における非定型肺炎の集団発生に係る注意喚起を実施
・1月17日、自治体、医師会、検疫所、航空会社に対し、新型コロナウイルスに関連した肺炎患者の発生に係る注意喚起を実施
・1月22日、航空会社等に対し、新型コロナウイルスに関連した感染症について、協力を依頼
・1月23日、自治体に対し、新型コロナウイルスに関する検査対応について、協力を依頼
・1月23日、自治体に対し、新型コロナウイルスに関連した肺炎患者の発生に係る協力を依頼
・1月23日、検疫所に対し、新型コロナウイルスに関連した感染症の発生に係る検疫対応について依頼
・1月23日、航空会社等に対し、新型コロナウイルスに関連した感染症の発生に係る協力を依頼
・1月24日、出入国在留管理庁に対し、新型コロナウイルスに関連した感染症の周知等の徹底について協力を依頼
・1月28日、新型コロナウイルス感染症を指定感染症及び検疫感染症と定める政令閣議決定

https://www.cas.go.jp/jp/influenza/corona_taiou2.pdf